ボリビアとノルウェーから学んだ育成の本質。 日本が掲げる「プレーヤーズ・ファースト」の原型
2019年01月27日
コラム日本サッカー協会(JFA)は「プレーヤーズ・ファースト」を合言葉に、フェアプレーの重要性などを掲げている。そのルーツをたどると、JFAで技術委員長などを歴任した小野剛氏が、南米と北欧で見たグラスルーツの光景があった。今回は、この言葉が持つ本当の意味を考えていきたい。
『サッカーテクニカルレポート 超一流のサッカー分析学』より一部転載
文●小野剛 写真●Getty Images、フットボール批評編集部
「プレーヤーズ・ファースト」を体現するボリビア
アメリカW杯が開催された1994年にイングランドに2度目の留学へ行った私には、ワールドカップの出場国を見るなかでいくつか気になる点がありました。
特に私が興味を引かれたのが、ボリビアとノルウェーでした。
アメリカW杯を目指して戦った日本代表は、〝ドーハの悲劇〞で初出場の夢を断たれました。そんな大会に、ボリビアは11大会ぶり3回目、ノルウェーは12大会ぶり2回目の出場を果たしていました。つまり、両国とも久々のワールドカップ出場だったわけです。
「何か秘密があるに違いない」
そう思いました。
少し調べると、ボリビアの選手の出身チームに偏りがあることに気づきました。
マルコ・エチェベリ、エルウィン・サンチェス、ルイス・クリスタルドといった選手たちは、揃ってタウイチ・アカデミーというクラブで育ったことがわかったのです。
成城大学で一貫指導の素晴らしさを知っていた私は、「絶対に自分の目で確かめたい」と思い、ボリビアを目指しました。
タウイチ・アカデミーは首都ラパスではなく、ボリビア第2の都市サンタクルスにある、選手育成のための学校でした。
埼玉県の名門・武南高に編入し、本田技研を経て、1990年代に全盛期のヴェルディ川崎で活躍した石川康もタウイチ・アカデミーの出身。私が訪れたときは、ボリビアの家にお姉さんが住んでいて、詳しい話を聞かせてくれました。
タウイチ・アカデミーのグラウンドはボコボコでした。原っぱといった感じの場所で、小さな子どもたちがボールを蹴っていました。まさに、サッカーの原風景の様相です。
案内してくれたメニーナが、タウイチの成り立ちを教えてくれました。
ボリビアにはストリートチルドレンが多く、何かに心を燃やさないと酒やドラッグなど非行に走ってしまう。彼らをサッカーに打ち込ませることで健全に育てたい。タウイチ・アカデミーは、そんな理想を掲げてスタートしたそうです。
・薬物、アルコールなどから少年たちを遠ざけ、サッカーを通じて健全に育てる。
・体力、感性、知性を向上させるための環境を整え、子どもたちを育成して社会形成に貢献する。
・子どもたちの才能を開花させるためのトレーニングを行ない、プロへの道筋をつける。
・子ども、スポーツ、平和をテーマに掲げ、大会をとおしてボリビアの子どもと世界をつなげる。
クラブが掲げるビジョンは子どもたちの育成で、サッカーで勝つことは二の次でした。それでも、「タウイチに入れば将来に希望が持てる」という噂が口コミで広まり、入団を希望する者が増え、それに伴って子どもたちに将来に希望を持たせたい、健全で良い街にしたいと望む富裕層からの寄付も集まるようになったと言います。
【ブラジル、アルゼンチンなど5カ国に囲まれるボリビア。代表チームはワールドカップに3度出場している】
カテゴリ別新着記事
セレクション
-
【ユース セレクション】ザスパクサツ群馬(群馬県)2020.09.23
-
【ジュニアユース 体験練習会】SC大阪エルマーノ(大阪府)2020.09.23
-
【ジュニアユース セレクション】府ロクジュニアユース(東京都)2020.09.23
-
【ジュニアユース(女子)セレクション】ザスパクサツ群馬レディース(群馬県)2020.09.18
コラム
大会情報
-
大会4日目フォトギャラリー【U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022】2022.09.02
-
大会3日目フォトギャラリー【U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022】2022.08.31
-
大会2日目フォトギャラリー【U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022】2022.08.31
-
大会1日目フォトギャラリー【U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022】2022.08.29
お知らせ
ADVERTORIAL
![]() | ジュニアサッカー大会『ドリームカップ卒業大会in白子』参加チーム募集中!! |
人気記事ランキング
- 「反抗していたことが馬鹿らしく感じた」。“自由だった”井手口陽介の価値観を変えた母の病気
- 「FUJI FILM SUPER CUP 2023 NEXT GENERATION MATCH」に参加する日本高校サッカー選抜メンバー発表!
- 「2022ナショナルトレセンU-13 後期(中日本)」参加メンバー発表!
- 身長は「遺伝」なのか?子どもの背を伸ばす「2つ」の要素
- 人生最大の挫折――。本田圭佑がガンバユースに昇格できなかった本当の真相【後編】
- 脳に悪影響? 利き手矯正の弊害
- 低学年と高学年の食事量の違いは?/小学校5・6年生向けの夕食レシピ例
- 8人制にインサイドハーフ型の「1-3-1-2-1」はどうか?アトレティコU-11が実践した考えるサッカー
- 日本と世界の少年サッカーの違い。日本の子どもは「コーチに従うだけ」「サッカーに時間を費やしすぎ」
- 「2022ナショナルトレセンU-13 後期(東日本)」参加メンバー発表!