冨安健洋、堂安律―― 。森保ジャパンを突き動かす20歳はいかにして育まれたのか
2019年01月31日
コラム世界を見据えた堂安のサイドバック起用
早いうちからアジアの洗礼を浴びた2人は、2013年に発足したU15日本代表でも中核と位置付けられた。同代表はミャンマーやマレーシア遠征などを経て、同年9月のAFC・U16選手権2014予選(マレーシア)に参戦。これを順当に勝ち上がって2014年9月のアジア最終予選に当たる本戦(タイ)に向かった。指揮を執った吉武博文監督は4-1-2-1-2のゼロトップに近い布陣を採り、冨安をセンターバック(CB)に据えて最終ラインを統率する一方、堂安を左サイドバックに置くという斬新なアプローチを見せた。
「2014年ブラジルW杯で優勝したドイツ代表キャプテンだったフィリップ・ラームもサイドバックとボランチの両方をこなせますけど、僕は2つのポジションを同じ役割だと捉えています。左足のキック力、運動量、キャプテンシーのある堂安にもラーム同様の能力があった。世界基準を踏まえて『スペースアタッカー』としての能力を伸ばすべきだと考えました。
日本人には左利きの優れた左サイドバックは少ない。堂安にとって、そして日本にとって、将来世界をあっと驚かすには試金石だと私は思ったんです。当時の彼はスペースに出てシュートを打つ部分は非凡なものがあった。ただ、今後、ハイプレッシャーの状況下で俯瞰的なスペース感覚をさらに伸ばすことが必要だと考えました。U16は伸び盛りの時期ですし、そこであえて刺激を与える環境を用意して、成長を促すことが重要なんです」
吉武監督の狙い通り、堂安は最終予選初戦・香港戦で先制点を決めている。しかし、日本はグループ3戦目のオーストラリア戦を2-4で大敗し、世界切符のかかる準々決勝で宿敵・韓国とぶつかった。が、大一番で彼らはイ・スンウ(エラス・ヴェローナ)に2ゴールを奪われて完敗。5大会連続のU17ワールドカップ出場を逃すことになった。
「1点目は右サイドを崩されて、中央で折り返しのパスを受けたイ・スンウに決められた形。左サイドバックの律がカバーしてシュートブロックに行きましたが、届きませんでした。2点目も同じ彼にハーフウェーライン手前からドリブルで独走され、冨安が抜かれ、律も行ったけど追いつけなかった。イ・スンウの個の力に屈したあの負けは相当ショックだったと思います」と木村コーチはしみじみ語る。
しかしながら、吉武監督は「負けたことはいいことじゃないし、悔しいけど、この試合を続けていたら必ず勝てるようになる。自分の課題を追求してほしい」と声をかけていた。彼らの未来をポジティブに捉えることができたから、前向きになれたのだろう。
「例えば冨安なら、あの時はラインコントロールに挑戦していて、真摯にやり続けてくれた。あの経験から『世界には上には上がいる』と感じ、さらなる攻撃参加で守備の優位性を保つことが大事だと理解したでしょう。同時に、予測力と判断力を上げる必要性も痛感したと思います。
自分自身の伸びしろに壁を設けるのではなく、伸びようとする気持ちを際限なく持ち続けられれば、必ず何かをつかめる。私が指導した冨安や堂安、94ジャパンの南野拓実(ザルツブルク)や中島翔哉(ポルティモネンセ)はそういう選手。そういう姿勢が大切なんです」と吉武監督が強調するように、大型DFが挫折から学び、自らの進むべき道を真剣に考えるきっかけを得たのは事実だろう。
堂安にしても守備を含めて課題を感じたはず。やはり「環境」と「刺激」という吉武監督が重視する条件は、若いタレントの成長に必要不可欠な要素と言っていい。
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