「できるだけ具体的な指導を…」と意気込みすぎるのは半分正解で半分間違い【サッカー外から学ぶ】
2019年04月18日
育成/環境
その成功体験は本当に“成功”だったのか?
休まず、水分補給もせず、ぶっ通しで練習をすることが科学的に見て効果的でないことが知られるようになった現在に、精神性を鍛えるためだけに理不尽なオーバートレーニングを課すことに意味があるのか? これは特にわかりやすい例だが、指導する際、子どもたちにアドバイスを送る際に、自分たちの時代の正解がいまも正解かと疑う視点が必要だと細谷さんは言う。
「もう一つ、その成功体験は、本当に成功だったのかということもありますよね。仕事の下積み時代もそうなんですけど、すごく理不尽な目に遭って、それでも自分はいまそれなりにできるようになったときに、『あの経験があったから自分はこうなれた』と考えがちです。でも、本当にそうでしょうか? そんな思いをしなくてももっと早く合理的に教わってたどり着ける場所があったかもしれないし、いまの自分があるのはそのときの経験のお陰はなく、単に自分の努力や能力の賜物だったかもしれない。経験が知らず知らずのうちに美化され、成功体験にすり替わっているというのはよくある話です」
自分の過去の経験に支えられるのは一向に構わない。しかし、それが「いまも通用するのか?」、指導方法として具体化したときに「本当にその方法に効果があったのか?」という視点を持つことが、ビジネスにおける経営者や上司、先輩、そしてスポーツの指導者にこれから求められる資質だと細谷さんは言う。
「たぶん優秀な指導者は、ものすごい経験、実績を持っていたとしても、その経験を“いま”や“指導対象”にうまく翻訳して伝えていると思うんですよね。その時点で自分の過去の経験という『具体』から一度『抽象』に思考が行って、経験を俯瞰、客観視できているんです。子どもたちを指導しているなら、自分の理解を超えてきた子どもたちが現れたときにどう対応するか? が重要になってきますよね」
スポーツ指導者は往々にして具体の世界にとらわれてしまう。細谷さんの指摘は、なるほど、現在指摘されている「悪しき指導者」の典型とも言える。経験則が絶対悪なのではなく、経験を抽象化して客観視することで、“いま”や“目の前のその子”にあった指導が行える。そうなって初めて、実績や経験が確かな“裏付け”になり得るのだ。
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