守備において「読み」を凌駕する「セオリー」の威力とは?

2019年05月20日

戦術/スキル

岩政図①
岩政図②

立ち位置で選択肢を消し、「二番目を選ばせる」
     
 そこで私は、相手の目線に立って、相手の判断のセオリーみたいなものを探してみようと考えました。相手がボールを持った時に、一番目に頭に浮かぶ選択肢を見つけ、事前にその一番目の選択肢を立ち位置で消してしまう。そうすれば、相手は二番目の選択肢を選びます。〝選ばせた〟二番目の選択肢には周りの選手も使いながら対応策を用意しました。
  
 こうすれば、読む必要などありません。相手に自分の狙い通りのプレーを選ばせることで自分の能力の無さを補っていったのです。
  
 少し小難しいので一つの場面を挙げて説明します。
  
 私は右のセンターバック。自分の前には相手のフォワードの選手がいて、相手の中盤の選手が中盤でボールを持って前を向いた時のシチュエーションです(図37)。
  
「読み」で対抗しようとする場合はまずフォワードの背後に立ち、そこから相手の動きと出し手の目線や姿勢を見て判断します。そして一瞬で相手と〝ヨーイ、ドン〟と勝負をします。 
 
 しかし、前述したように、私の場合、このやり方ではトップレベルの選手たちには簡単に裏を突かれてしまいます。
  
 そこで、私は、ほんの数メートル程のものですが、相手の立ち位置よりもボールサイド側に立つようにして、縦へのスルーパスをケアする立ち位置を取ります(図38①)。
  
 ボールを持った相手はフリーで前を向けると、ほぼ間違いなく縦へのスルーパスを第一選択肢とするからです。
  
 その立ち位置を事前に取ると、相手は一つ目の選択肢をやめざるを得ず、次の選択肢として足元へのパスを選びます。フォワードも、走りたかったスペースに私が立っているので動きを止めてボールをもらおうとします。その時が私のチャンス。足元に〝入れさせた〟私はここぞとばかりにボールを奪いに行くのです(図38②)。
  
 そして、このケースに対しては左のボランチの選手に説明をしておき、内側から挟みに来てくれるように伝えておきます。私は少し縦側からアプローチすることになるので内側へのコントロールを許してしまう局面もありますが、それも罠で、内側から挟みに来てくれたボランチとパッキングするようにボールを奪い取ります。
   
 このようにして、「読み」ではなく、「セオリー」に則ってプレーするように守備の仕方を変えていきました。
  
※続きは発売中の『FOOTBALL INTELLIGENCE 相手を見てサッカーをする』をご覧ください。


 
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<プロフィール>
岩政大樹(いわまさ・だいき)
1982年1月30日生まれ、山口県出身。東京学芸大から鹿島アントラーズに加入し、2007年からJリーグ3連覇に貢献した。3年連続Jリーグベストイレブンに選出された。2010年南アフリカW杯日本代表。13年に鹿島を退団したあとタイのテロ・サーサナ、ファジアーノ岡山、東京ユナイテッドFCを経て18年に現役を引退。ベストセラーとなった『PITCH LEVEL』(KKベストセラーズ)でサッカー本大賞2018受賞。解説や執筆を行うかたわら、メルマガ、ライブ配信、イベントを行う参加型の『PITCH LEVEL ラボ』を開設するなど、多方面に活躍の場を広げている。
 


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【商品名】FOOTBALL INTELLIGENCE フットボール・インテリジェンス 相手を見てサッカーをする
【著者】岩政大樹
【発行】株式会社カンゼン
【判型】四六判/304ページ
【価格】1,600円+税
【発売】2019年3月18日発売

 
  
 
 


 
 

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