“シュート練習の相手”ではGK育成の意図は見えてこない【5月特集】

2019年05月24日

育成/環境

 
GKの育成に向き合う②
 
フィールドのコーチもGK視点を持つべき

――そこはフィールド中心のコーチにはなかなか見えない世界です。ましてGKの経験があるわけではないので分からないことが多いですよね。GK的な立ち位置で物事を観察したり分析したりしているわけではありませんから。

野口「フィールド中心にサッカーを見ている人たちからすると、GKを含めたボール回しも『今のはワンタッチでいけるじゃん』と思うかもしれませんが、GKからすると『ミスしたらどうするの?』と思っているわけです。『GKは確実を求めている』から」

――ゴールという保険をかけながらプレーしているから判断というか、考え方の基準が違います。チャレンジの基準がフィールドとはまったく違います。

野口「そのとおりだと思います。前に飛び出すのもチャレンジというよりアタックという感覚ですね。自分のなかでは『体のどこかにボールを当てられる』ことがある程度想定できたうえでの飛び出しです。いちかばちかは存在しません。見込みとして『行ける』というチャレンジです。GKの立場としては『行ってみようかな』というチャレンジだったら『行かない』が正解なんです。読みが外れた=失点になるから」

――この間、あるジュニアユースが1対1の練習をしていました。そのときにコーチがDFに叫んでいたのは『足を出さない。ついていくだけ』ということでした。想定としてゴール前の1対1だから抜かれてしまうとシュートを打たれてしまうからが理由なんだと思います。その練習を見ていて「GKと同じ目線だな」と思いました。

野口「DFにも『何がOKで、何がダメなのか』をきちんと伝えないといけないと思います。DFは頑張ってボールを取ることが仕事です。だから、『抜かれる』『打たれる』ことは負けになるわけです。でも、僕たちGKからすると、『股の下を通されるシュート』といった想定外のシュートのほうが対応できないんです。

 だから、『何のために1枚切らせているのか』ということにつながるんです。『DFには、その意味を理解してもらわないと』と。GKとしては『ここからここまでのエリアだったら打たせていい。ここまで切っていれば、ほとんどシュートコースがない。だから、足を出して股を抜かれることだけはダメだ』と、こちらの意図を伝えるように話すとDFも『足を出さずに我慢』してくれます」

――ゴール前ではGKにとって想定外なこと、想定外なプレーを相手にさせてはダメだということですね。

野口「そうです。たとえ、ゆっくりとしたシュートであっても取れないんです。それこそロシアワールドカップのFKで、川島選手が壁の下を通されてシュートを決められたシーンがあったでしょう。あれは、まさにそうです」

――約束のもとでゴールを守っているから、それを破られるなんて想像もしていないわけですよね。

野口「よく『ニアはやられるよな』という選手がいます。でも、GKからすると対応していたDFがニアを消すような切り方をしていたわけです。僕らはどちらもケアしなければいけなくなったら、物理的に反応速度だって遅れますし、対応できる範囲だって狭まります」

――GKは「DF込み」でゴールを守る考え方をしているんですね。ということは、DFもそこは責任をもって対応しないとGKにとっては難しくなります。限りなく小さい確率を作ったうえで他の対応に集中しているから他に気が向いている、と。

野口「例えば、シュート練習。だいたい2箇所くらいからシュートを打ちますよね? でも、フィールド中心に指導しているコーチは『それは取れた』と安易に声をかける場面をよく見かけます。ただ、私たちGKコーチからすると『ひとつのことに集中して対応していないのに、そんな声のかけ方やそもそもの練習メニューを組まれても』という思いはあるんです。

 だったら、『GKに対して修正を施したいからフリーズして練習を止めてくれますか?』と。きっとGKだけのためにフリーズはしないでしょう。それならGKを複数置いて、交代したときやミスしたときに外に出てGKのために問いかけをする時間を作ってほしいです。そういう時間を設けられるトレーニングであれば、『それは取れた』という声かけもやむを得ないと思います」

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