サッカーに「ドリブラー」という“ポジション”はないにも関わらず、なぜドリブルだけを切り取ってしまうのか

2019年07月13日

育成/環境

ジュニア指導歴39年でのべ50万人の子どもを指導してきた池上正氏は、日本の常識=海外の非常識を肌で感じてきた一人でもある。例えば「ドリブル」の概念ひとつをとっても、日本と海外でのとらえ方はまるで異なる。“ドリブルは選択肢の一つ”と片づける海外のシンプルな思考とは? 

著●池上正 写真●ジュニサカ編集部

「蹴る・運ぶ・繋がる」を体系的に学ぶ ジュニアサッカートレーニングより一部転載


 
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「ドイツには『ドリブラー』という概念がない」
     
 日本の常識、それは海外の非常識という例を紹介したいと思います。
  
 日本の少年サッカーの指導風景でよくあるのが、いわゆる“コーンドリブル”をひたすら反復するというものです。それにより、ボールタッチの感覚や技術が身につき、彼らは「ドリブラー」と呼ばれる選手たちになっていきます。
  
 しかし、本来サッカーは一人でプレーするものではありません。一人の個人技に特化した指導が、周りとの関係性をうまく利用しながら進めるサッカーというスポーツにおいて、どれだけ有効なのか疑問を持たざるを得ません。
  
 ある日本人のコーチがドイツ人のコーチにこう質問したことがありました。
  
「ドリブラーについてどう思いますか?」
  
 ところが、通訳の人が「ドリブラー」という単語をドイツ人のコーチにどう伝えていいのかわからずに困ってしまいました。通訳の人が言うには「ドイツには『ドリブラー』という概念がない」というのです。日本人のコーチが言わんとすることを何とか伝えてもらうと、ドイツ人のコーチからこう返ってきました。
  
「ドリブルがうまいのは素晴らしいし、技術として非常に大事なものだ。だが、相手がどう来ようとも最後までドリブルを続けるというのは自分たちには考えられない」
  
 日本の「ドリブラー」たちは、一度ボールを持つと最後までドリブルをしてしまう傾向が強いように感じます。ボールを持つと独りよがりの勝手なプレーをしてしまう選手が多いと思います。
  
 自分がドリブルをしたいからしているだけで、チームのためにドリブルをしているわけではないのです。それは高校生や大学生たちを指導しているときに、彼らの素直な反応を見れば一目瞭然です。
     

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