補欠問題、団子サッカー、8人制サッカー、ドリブルスクール…etc。ジュニアサッカー特有の現象はなぜ起こる?

2019年08月26日

育成/環境

ボールを持ってない足を速く動かす

――なるほど。ボールコントロールでいうと、よくリフティング練習などは「必要か、不必要か」なんて議論になったりしますが、リフティングは練習にとりいれてますか? とりいれているようであれば、指導するうえでは、何を気にしていますか?

 リフティングの回数のことはあまり言いません。ボールを触っているときにボールを触っていない足を意識して動かそう!とは伝えています。

 ボールコントロールのことを考えると、理想的なリフティングは、半径2メートルの円くらいから出ないこと。柿谷曜一朗選手が言っていたんだったかな? 無回転でリフティング20回できればそれで十分だと。そのかわり、その円から出るな、と。

 方法として、自分のまわりに円を描いて、その円から出ないようにリフティングをします。そう指示すると、十中八九、円からでないように足を伸ばそうとするんです。

 これはフットボールスタイリストの鬼木祐輔さんも言っていたような記憶があるのですが、「ボールを触る足を伸ばすのではなく、逆足を動かしてボールに近づきましょうと、と。トラップミス、パスミスが起こる原因は、「体をうまく使えていない」ことがほとんどなので、必ず自分の足を出す場所はボールと常に同じような距離にしましょうと。そのためには、ボールがどこかに移動したときにボールに合わせてボールを触らない足を動かして移動する必要があります。

 ボールフィーリングの練習でも「ボールを持ってない足を速く動かしましょう」と、声をかけます。それこそコーンドリブルもゆっくり丁寧にやるのではなく、高速でやってください、と。ボールを自由に扱えるようになるためには、ボールをきれいに動かすだけではなく、体をうまく使わないといけません。体を動かすためには、ボールにふれていない方の足を意識しないといけません。それを速くやるように意識付けします。

 それができるようになったら、2対1など相手がいる練習に発展します。2対1では「ドリブルで抜け、ただし味方を囮に使おう。パスを出すふりをして相手の矢印を変える。ただの1対1ではないぞ」と伝えるようにしています。

 この駆け引きは、もう戦術的な分類になってくるのかもしれませんね。ドリブルで抜く以外に「選択肢があるよ」と相手DFに伝えなければいけない場面がでてきますから。

 駆け引きが必要になってくるので、コーンドリブルの練習では間接視野でもボールを見てはダメと将来的にはなっていきます。試合では、ボールを見る余裕なんてなくなるから、できるだけ早い段階でボールを見ずに扱えるようになりましょう、ということです。

――らいかーるとさんがサッカー指導の現場で何をしているのか、リアリティのあるお話が伺えました。最後になりますが、保護者の方々にサッカーを通して子どもたちとどのように接してほしいかを伺えますか。

 子ども自身がどういうサッカーをしたいか、どういうプレーをしたいのかに耳を傾けてほしいです。例えば、本人が「楽しくサッカーをしたい」と言った場合、GKでもCBでも守備的MFでも、ポジションに関係なく、地味な仕事でも尊重して上げてほしいです。それが子どもたちにとって、一番の励みになります。シュートやドリブルなど、目立つ仕事ばかりがサッカーの花形ではないですから。

 あとは、子どもの嗜好から外れないような道を用意してあげるのが大切です。例えば「うちの子は、ドリブルが出来ないからドリブルスクールに入れよう」とするのではなく、まずは、本人に意志や気持ちを聞いてみてあげてください。あとはあまり期待はしすぎないように。これが一番難しいかもしれませんが。


<プロフィール>
らいかーると

1982年、浦和出身。とあるサッカーチームの監督。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』主宰。海外サッカー、Jリーグ、日本代表戦など幅広い試合を分析する人気ブロガー。2019年5月に初の著書『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』を刊行した。


■らいかーると氏、初の著書
analysis eye

【商品名】アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます
【著者】らいかーると
【発行】小学館
【判型】新書: 224ページ
【価格】864円
【発売】2019/5/31


 

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