補欠問題、団子サッカー、8人制サッカー、ドリブルスクール…etc。ジュニアサッカー特有の現象はなぜ起こる?
2019年08月26日
育成/環境
【スペイン・マジョルカに移籍した久保建英】
ドリブル特化型チームの是非
――戦術的なプレーをするチームが増えてきたなかで、ドリブルに特化したチームもよく見ます。ドリブル特化型のチームについてはどうお考えですか?
ドリブル練習で、メッシやマラドーナのような選手を育てようとしているチームは危険だと思います。
最近、日本人でいえばレアル・マドリーに移籍した、久保建英選手がフィーチャーされていますよね。彼と対戦したことのある選手がOBにいまして、久保選手の何がすごかったのかを訊いてみたんです。OBの彼は「ミスをしないこと」と言っていました。久保選手は、トラップの技術がすごく高いそうです。
ドリブル練習を足元のボールコントロール技術を上げるためにやっているのであれば良いのですが、「突破のためだけに」ドリブル練習をやっているのなら、選手にとっては、将来すごい副作用になると思います。
――サッカーにおける『基礎』について、らいかーるとさんはどうお考えですか?
ボールをストレスなく自由に扱えること。最初は、オフ(ザ・ボールの動き)は含めていないかもしれません。まずはスキル的な意味で「ボールを自由に扱える」こと。これに尽きます。
なぜかというと、ボール扱いを後回しにすると、ろくなことがないんです。上のカテゴリーに行けば行くほど、技術的なミスによるタイムロスが命取りになります。「止めて蹴る」がある程度できると、練習で「次は判断のあるトレーニングをやりましょう」となったときに、初めてサッカーが成立するのではないでしょうか。
サッカーは、相手陣地に行けば行くほど、『時間とスペース』がなくなっていきます。『時間とスペース』がないなかでも、ボールを自由に扱える選手は素晴らしい選手ですし、そこで相手をはがせる選手は、どのチームでも必要になってくるんですよね。
チームから相手陣地での決定的なプレーを求められたときに、しっかりとボールを扱えないと、それがその選手の足を引っ張ってしまう。
――何才まで「ボールを自由に扱える」ようになるのが理想的ですか?
10歳までにある程度のレベルであれば、あとは試合の中で成長します。
僕は、キャラクター的に戦術のことばかりやっていると思われがちなのですが、ボールフィーリングの練習なども普通にしますよ(笑)。ボールフィーリングをやっていたことで、化けた選手も知っていますから。
子どもたちが本当にうまくなりたいと願っているのであれば、その気持ちに対して指導者は応えてあげなければなりません。そのためには、欧米で語られている“育成の王道”から、多少外れることもやらなければならないと思っています。
――どういうことでしょうか?
日本では「なんでこの選手が伸びたんだろう」というケースがよく見られます。乾貴士選手や香川真司選手のようにサイズのなかった選手が、ドリブルに特化したといえば語弊があるかもしれませんが、そういうチームにいって、欧州で活躍し、日本代表としてW杯でも活躍する選手にまで成長しています。僕らの世界では、何か特化したチームのことを「博打」と呼ぶのですが、サイズがない子がドリブル特化のチームにいく手はありなのではないかと考えています。
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