「指導者が焦ってはいけない」。バルサ、バイエルンが敗退! 敗将の言葉から考える11人制サッカーへの適応
2019年09月01日
読んで学ぶ/観て学ぶ取材・文・写真●中村僚
「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019」の大会3日目。順位を決めるトーナメント戦に入り、負けを取り返すことができない戦いは、各チームに自然と熱を持たせる。イエローカードが提示される場面も増え、いくつかの試合では退場者も出た。トーナメントは準々決勝まで行われ、ベスト4が出揃った。
注目だったFCバルセロナとバイエルン・ミュンヘンは、それぞれベスト16でトヨタ・タイランドに、準々決勝でナイジェリア選抜に、いずれも1-0で敗れた。タイランド、ナイジェリア、ともに相手の弱みを突き自分たちの強みを生かすサッカーを展開。体格やスピードの差が出た場面もあったが、それ以上に、緻密に練られた戦術とタスクを遂行した選手たちがもたらした勝利だった。
大会最終日は準決勝、3位決定戦、決勝が予定されており、準決勝は、広州富力足球倶楽部vsタイランド、ナイジェリアvsJFA大阪トレセンU-12のカード。また、急遽バルセロナvsバイエルンのフレンドリーマッチが行われることも決まった。
子どもたちが“慣れる”まで指導者が焦ってはいけない
ドイツやスペインでも、国や地域に具体的な人数はよって違うものの、基本的に子どもの年代では11人以下の少人数制で試合を行なっている。ドイツは5人、7人、9人と増えていく。今回来日しているバイエルンは07年生まれのU-13チームで(年代は生まれ年で数える)普段は9人制のサッカーをしている。
いかにバイエルンといえども、人数もピッチ面積も増えた11人制に慣れるには少し時間がかかる。この大会でも、特にインテンシティが高くなったりビハインドの状況になったりした時は、ボールに意識が集中しすぎて適切な距離感を保てていないように見えた。また、ゴールキックの際にはGKが長いボールを蹴れないため、ショートパスから始めたりCBの選手が代わりに蹴ったりしていた。
少人数から11人制への順応についてソンウェーバー・ラファエル監督に聞くと、勝敗にこだわりすぎないことの大事さを語ってくれた。
「勝つことだけにこだわっておらず、選手たちが11人制サッカーに慣れて成長するためにアプローチをしている。例えば試合のビデオを撮影して、試合後に映像を交えながら説明したりね。今日で言えば、ゴールキーパーの選手がひとつ下の年代の選手で、まだ少しパワーが足りずにロングキックが十分に蹴れない。でもいきなり50mのキックを蹴ることはできないし、それを指導者側が焦ってはいけない。時間をかけて慣れていくしかない」
一方、バルセロナのアルベルト・プッチ・アルカイデ監督が解いたのは「深さと幅をとれる距離感」だ。
「ピッチの深さと幅に慣れなければいけない。ショートパスと、深さをとるロングパスの両方を使いながら、深さと幅を取る必要がある。11人制になれば7人制よりピッチは大きくなるので、どれくらいのパスで深さと幅をとれるのか、距離感を養わなければいけない」
大会2日目に栃木の金澤監督が語っていたように、人数が変わろうともサッカーがサッカーであることに変わりはない。11人制になったからといって、極端にサッカーの内容が変わるようなことがあってはならないだろう。両監督が強調していたことはあくまで「慣れ」であり、それはフィロソフィーや原理原則の延長のように思える。つまるところ大事なのは、少人数制のサッカーでも11人につながるような指導をすること、指導者側が目先の勝利だけでなくその先のステップを見据えられるかどうか、ということではないだろうか。これまでにも各所で語られてきたことだが、敗戦に直面しても冷静に語る二人の監督から、その大事さを改めて感じることができた。
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・U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019
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