夏にたまった疲労は旬の魚料理で癒そう! 魚介類の栄養はなぜ必要?
2019年09月03日
フィジカル/メディカル
夏にたまった疲れはどうやって食事でケア?
万全な体調管理を続けている成人のアスリートであっても、年々、夏を過ごすのがキツくなっています。だから、当然、子どもにとっては厳しくなっているのは言うまでもありません。昨今の気象を踏まえると、盛夏が過ぎたあたりから子どもたちも疲れのケアをしっかりしておくことがとても重要です。
そして、たまるのは何も肉体的な疲れだけではありません。「神経の疲れ」もあるのです。例えば、スポーツをすることで体力を消耗しますが、これは肉体的な疲れです。暑さが加わると体力の消耗具合は激しくなります。加えて、暑い屋外とエアコンが効いた涼しい屋内の気温差によって「神経的な疲れ」も蓄積されやすくなります。
夏から残暑の時期にかけては、特に自律神経に負担がかかりやすくなっています。なぜなら、室内外の温度差が大きい時期は体温調整や発汗をコントロールするために自律神経がフル稼働し、体温の調節を担っているからです。いわゆる「冷房病」や「夏バテ」と呼ばれるような、だるさや食欲不振を伴う症状も、自律神経機能の低下と密接に関わっていると考えられています。
このような疲れを癒すためには、家庭における食生活はとても大切ですので、バランスの良いメニューを通じて、疲労を回復させていくのが家庭でできるサポートだと思います。
先ほど、五大栄養素である「炭水化物」「タンパク質」「脂質」「ミネラル」「ビタミン」のバランスのとれた食事が大切だとお話しました。もう少し掘り下げると、旬の野菜や果物をなるべく多く取り入れ、胃腸への負担が少ない和食中心の食事が好ましいでしょう。さらに、「脂質」はできるだけ良質なものを選ぶことが望ましいです。
多くの家庭では夕飯の献立にボリュームや子どもの好みを踏まえて「タンパク源」として、魚料理よりも肉料理を選ぶ頻度が高くなっていると思います。もちろん肉も魚も、筋肉や血液などの体の主要な部位を構成するためのタンパク質と、エネルギーの素となる脂質を含むことに違いはありません。しかし、肉と魚を比較すると、栄養面で大きく異なる点があります。それは、含まれる脂質の種類です。
「脂質は不健康のもと」というイメージを抱いている方は少なくないかもしれませんが、脂質にもさまざまな種類があります。
例えば、肉に多く含まれているのは「飽和脂肪酸」です。これはコレステロールを増やしたり、血液をドロドロにしたりする作用があります。肉のタンパク質は育ち盛りの子どもにとって大切ですが、毎日肉ばかりを多く食べすぎてしまうのはちょっと考えものです。その一方で、植物性の脂肪や魚に多く含まれているのが、「不飽和脂肪酸」です。
(参照=農林水産省「脂質やトランス脂肪酸が健康に与える影響」)
(参照=厚生労働省「不飽和脂肪酸-eヘルスネット」)
この不飽和脂肪酸はさらにいくつかの種類に分類されますが、魚には「DHA」(ドコサヘキサエン酸)と「EPA」(エイコサペンタエン酸)と呼ばれる不飽和脂肪酸が多く含まれています。DHAとEPAは、体の中で作ることができない必須脂肪酸で、食べ物から摂取するしか方法がありません。
特にDHAは神経組織の機能促進や脳の働きを高める働きをしています。自律神経の中枢は脳にありますから、神経に疲労が蓄積し、集中力が落ちている時には、積極的に体の中に取り込みたい栄養素だと言えるでしょう。よく「魚を食べると頭がよくなる」と聞きませんか? DHAは子どもの脳の発育にとって重要な働きをしていますから、ある意味で理にかなったことだと言えるのではないでしょうか。
【DHAが豊富に含まれる青魚】
サバ、アジ、イワシ、サンマ…といった青背魚
青背魚に豊富に含まれていますが、その他にもマグロ、サケなどスーパーに売られている身近な魚にも多く含まれています。そして、もう一つ魚介類の良いところは、骨ごと食べられるカルシウムが豊富な魚も多いところです。カルシウムは骨の形成のみならず、興奮した神経の興奮や、ホルモンの分泌に関与しています。厚生労働省では6歳~14歳の推奨摂取量は600mg~1400mgですが、これだけのカルシウムを乳製品だけで摂取するのは困難です。
だから、ちりめんじゃこ、シラス、シシャモ、青魚の水煮缶など、骨ごと食べられる魚も取り入れていくと効率よくカルシウムを摂取できます。ここまでお伝えしたように、魚の栄養素は夏から秋の体にリセットするために必要なものが豊富に含まれています。でも、残念ながら魚が苦手な子は少なくありません。というわけで、次回は魚嫌いを克服するためのコツについて触れていきたいと思います。
>>第二弾は来週9月10日(火)に配信予定
<プロフィール>
川上えり(かわかみ・えり)
管理栄養士。FCジュニオール(大分県中津市)の栄養アドバイザー。海外で活躍するプロサッカー選手の食事などをサポートし、チームの遠征・合宿にも帯同。アスリート向けのレシピ制作、子育てママ向けのコラム執筆など幅広く活動している。
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