サッカーとフットサルをつなぐキーワード「再現性」。2019夏、バーモントカップから考える

2019年09月18日

育成/環境

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再現性を考えていくとサッカーに通じていく

「サッカーチーム×フットサルチーム」という図式の、フットサルの試合をずっと観察したことはあるだろうか?

 私はバーモントを取材する時、そんな観点でいつも試合観戦している。それは「サッカーチーム×サッカーチーム」では起こらない現象や違いに気づくことができるからだ。例えば、「サッカーチーム×フットサルチーム」の試合で見られる一つの違いに「ダイレクトプレー」がある。フットサルチームに比べると、サッカーチームはやたらとダイレクトプレーが多い。そして、ダイレクトプレーをしたら何が起こるか。それはミスが起こって、相手にボールが渡ってしまう。ダイレクトプレー後は、かなりの高い確率でこういう現象が生まれる。

 どうしてフットサルでダイレクトプレーをするとミスが高い確率で起こってしまうのか、そして、フットサルチームはそれを理解しているからダイレクトプレーを多用しない。ここに、サッカー指導者にとってはフットサルから学べる観点が潜んでいる。元フットサル日本代表スタッフの経験もある方に、過去こんなことを聞いたことがある。「どうしてダイレクトプレーが少ないんですか?」と。すると、次のように答えた。

「フットサルというスポーツの一つの特性に『再現性を高める』という点が挙げられると思います。そもそもフットサルはコートが小さく、サッカーの人がイメージするダイレクトプレーが成功する確率が高いとは言えません。ワン・ツーで例えるとわかりやすいかもしれません。壁役がボールをスペースにワンタッチで出すと考えた時、フットサルはそのスペースが小さいので難易度が高いんです。ワンタッチでは、強弱や軌道の調整がデリケートです。スペイン人指導者で、ワン・ツーのタイミングでも足の裏でコントロールをしてから素早くパスするほうが成功する確率が上がり、スピードや軌道、あるいはパスを中止する判断も入れられる可能性があり、メリットが高いという人がいるくらいです。

 コートが狭い分、必然的に攻守の入れ替わりも多くなるのがフットサルです。その中で学べるものは、サッカーでは一般的に細やかなボールタッチの技術、プレーに関わる頻度がもたらす判断力の向上だと表現されることが多いと思います。それが少し漠然と伝えられているため、『フットサルはコートが小さいからたくさんボールに触れられる。だから、判断力が上がる』みたいな感じで大まかに解釈されているようです。もちろん、間違っているわけではありません。でも、そうなると『ボールがたくさん触れられる状況を作ったらいい』となり、フットサルの大切なエッセンスが見過ごされてしまいがちです。

 フットサルでは、真剣勝負のハイスピード、ハイプレッシャーの中で状況に即した判断とそれに応じたボールコントロールやキックの技術が磨かれる環境があり、それこそが判断を伴ったプレーの最小単位だと思います。だから、1対1、2対2、3対3と徐々に多くの人数と連結した状況でのプレーの知識や経験を積み重ね、最終的には5人全員で連携する『システム』という共通理解の中でのプレーを学ぶ段階を経るのです。その結果、多様な状況での再現性を高めることを狙うし、それにつながっていくという仕組みだと認識しています。

 ここで重要なのが、『再現性を高める』こと自体を目的にしているわけではないということです。サッカー指導者の方でそこをよく決め打ちパターンの実行だと誤解している方もいれば、その上で「フットサルのトレーニングは細かいよね」とおっしゃる方がいます。正しくは、状況の打開に必要な技術や戦術的発想についてはそれぞれを切り離すことなく細かく掘り下げているということです」

 再現性の高いプレーとは、状況に応じてそれぞれの選手がチームのシステムを理解した上で適切なプレーを実行することだ。そして、適切なプレーとはボール保持者だけを指しているわけではない。周囲にいる選手にも当てはまる。つまり、そこには前提として「ボールを中心とした相互関係」が含まれている。再現性を高める過程で「自分がどうするか」を選択する権利はすべて選手にあり、指導者がああだこうだと口出しすることはではない。だから、パターンではなく、多様性あるプレーが意図的に実現するのではないだろうか。

 例えば、上記とプレー原則に基づいたゲームモデルと何が違うのか。

 私には、そう感じる。この大会を含め、知り合いのフットサル関係者は皆一様に「フットサルのため」だけにとどまらず、「サッカーのため」とも語り、いろいろな質問に答えてくれる。サッカー指導者たちはどうだろうか? 個人的には、今大会の結果をサッカー側の人たちはきちんと見つめ、分析すべきだと思う。

 それはワールドカップが終わるたびにJFAに対して具体的な分析を要求しているくらいなのだから、サッカー指導者は自分たちでもしっかりと分析レポートを書けるのだろう。もちろんモノのたとえで、そこまではしなくても見た人たちは今大会を振り返り、ぜひ来年のバーモントではバージョンアップした姿を披露してほしい。そういう試合内容になっていることを期待し、今回は私なりの一つのフットサルの捉え方を示した。


【9月特集】ジュニアサッカー取材備忘録


 

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