“8人制or11人制”人数に捉われない不変的なサッカーの本質とは【小野剛×内藤清志 8人制サッカー対談】
2021年04月19日
育成/環境日本のジュニアサッカーの現場では、本来の11人制のフルコートではなく8人制でプレーすることがほとんどです。ではなぜ日本のサッカー少年・少女たちは、8人制でサッカーをプレーすることになったのでしょうか。4月20日に発売となる『8人制サッカーの教科書』から、FIFAインストラクターであり8人制導入の発起人の一人でもある小野剛氏と、著者である内藤清志氏の対談の模様を一部抜粋して紹介します。
8人制上手を作りたいわけではない
内藤 僕自身、これまで子どもから大人まで様々なカテゴリーで指導をしてきました。その中で、プレーする選手の数には、大きな引っかかりを感じることはありませんでした。でも、今C級やD級の指導者インストラクターをさせていただく立場になってみてわかったのは、40代の指導者が多いためか(8人制サッカーを経験していない世代)、8と11という人数の違いに関する質問が多いことです。
JFAのライセンスでは、8人制サッカーと11人制サッカーの違いや定義を深堀りはされていません。僕たちがサッカー少年だった頃の全日本少年サッカー大会(現在の名称は全日本U-12サッカー選手権大会:以下全少)は11人制でした。僕はそれがあくまで8人になっただけだと思っています。
8人制サッカーを導入された頃のお話を小野剛さんに伺いしながら、僕の経験談であったり研究の話をしていきたいと思っています。まず、8人制を導入するきっかけは何だったのでしょうか?
小野 まず、そういう観点で本を書いてくれることが素晴らしい。こういう本が1冊でも増えることを非常に嬉しく思います。サッカーの指導者は、どうしても「サッカーは11人で」と考えてしまう方が多いでしょう。そこへの興味と情熱だけで子どもに接してしまう。そうではない部分もあるので、まずは「人数は関係ない」という観点を持ってもらいたい。そういった意味でも、この本には非常に期待しています。早速ですが、経緯の前に、「(8人と11人の)違いは何ですか?」という質問に対して、内藤さんはどうお答えしているか伺えますか?
内藤 僕は8人でも、11人でもサッカーをするということには変わらないと答えています。SSGsになることによって、1対1の攻防であったり、ゴール前のせめぎ合いであったりが増える。単純に一人ひとりがボールに関わる回数、プレーする回数も圧倒的に増えます。これがまずサッカーがうまくなるための1つ、大きなプラス要素だと思います。ただ、人数を減らしすぎると、「システム」という考えができなくなるため、3ラインの観点から考えると、7人、8人、9人ぐらいがベターだという思いはあります。このような働きかけをすることが多いです。
小野 そうですね。内藤さんがおっしゃられた1番最初の部分ですよね。(指導者は)サッカーをうまくしたいんだというところですよね。当時「サッカーは11人だろ。8人制でやってどうするんだ」「11人制になったときに戸惑うだろう」と言われました。でも、8人制サッカーの上手な子どもや、8人制サッカーの上手な指導者を作りたくて8人制を導入したわけではありません。あくまでも、サッカーの本質を理解し、より身につける。それを体で理解するために8人制を導入しました。そこを理解してもらうのは本当に苦労しました。サッカーは、自分がいて、ボールがあって、相手がいて、味方がいる。単純ですがこれを理解していると困らない。もし、11人制から8人制になってうまくプレーできないという選手がいたら、それはゲームの理解とか、個人的な戦術の理解度が低いことになります。それだとちょっと困りますよね。
日本代表が世界に出られるようになったのが1995年。U-17日本代表とU-20日本代表が初めて両方、ワールドカップに出場することができた。それからちょっとずつユースのレベルで出られるようになって、ワールドカップでは1998年フランス大会に初出場します。そこで世界との差、一人ひとりの個人能力、パススピードの違いなど、いろいろな形で見せつけられました。やはり日本にいただけではわからないことが出てきて、そこからテクニカルレポートを蓄積していき、世界との差を分析しました。大会ごとに多少内容は異なりましたが、4つの課題は必ず、集合の輪(同じ課題)が重なり合うところがありました。
内藤 その4つの課題とは何ですか?
小野 「球際の攻防」「ゴールに向かうプレー」「ボックス近辺での攻防」「攻守にわたって、チャンスを感じる力/リスクを冒す勇気」といった言葉にまとめました。とくに「ボックス近辺のプレー」は、どの大会にも必ず出てくるんですよ。
そこを改善したければ、シュート練習をもっとすればいいと思われがちですが、練習の根本というのは、やはりゲームの中で得るものです。10本のシュート練習よりも、1本のゲームの中で打つシュートのほうが重要です。パスやコントロールもそうでしょう。ボックス近辺のプレーを向上させるのも、もっと生きたゲームの中でシュートを打つ経験をしなければいけない。
でも、過去に11人制で行われていた頃の全少では、半分以上の子どもたちがシュートを1本も打てずに家路につく。やはりこれじゃいけないだろうと。そこから海外の事例を調べるとともに、少年サッカーのプレーも徹底的にリサーチしていきました。海外のジュニア年代のサッカーは、当たり前のように少人数制でやっていることがわかりましたし、少人数制と11人制だと、プレー回数が圧倒的に違ってくるのも数字になって表れてきました。8人制にするとプレー回数が3倍ぐらい違う。
特にヨーロッパだと「エントリー」といわれるボックス内の侵入、これも11人制になると3分の1程度になってしまいます。実際に生きたゲームの中で、サッカー本来の楽しさであったり、面白さを身につけていってほしい。そのようなところから少人数制サッカーを導入してあげたいと思うようになりました。きっかけはそこからですね。
つづきは『8人制サッカーの教科書』からご覧ください。
【商品名】8人制サッカーの教科書
【発行】株式会社カンゼン
【発売日】2021/04/20
【書籍紹介】
11人制で活躍する選手を育成するには、
指導者が“サッカーの本質”を理解することが重要だ。
ジュニア年代のサッカーコーチに必要な知識を網羅した
これまでになかった「8人制サッカーの教科書」が登場!
そもそも8人制サッカーとは何なのか?
11人制との違いは?
メリット・デメリットは?
U-12年代のサッカー指導者向け書籍の決定版!
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