サッカーとフットサルをつなぐキーワード「再現性」。2019夏、バーモントカップから考える
2019年09月18日
育成/環境今夏も6〜9月にかけて様々なカテゴリーで、いろんな形式の大会が行われた。そこで、今月の特集は「ジュニアサッカー取材備忘録」と題し、それぞれの大会で気づいたことを書き綴りたい。テーマを一つに絞り込むと、他に存在するジュニア年代で大切なことを伝えられない場合もあるので、今月はコラム形式で多様な記事を配信させていただきたいと思う。
【取材大会】
6月 2019コパ・ベルマーレU-11
8月 JFAバーモントカップ
(第29回全日本U-12フットサル選手権大会)
8〜9月 U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2019
コラム第三弾は、8月に東京で開催された「JFAバーモントカップ」(第29回全日本U-12フットサル選手権大会)を取材して感じたことについて書きたい。テーマは「再現性」。フットサルの良さをサッカーに生かす一つの観点だと思うので、ぜひご一読いただけたら幸いだ。
取材・文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部
フットサルにあってサッカーにないものとは何か
ベスト4に残ったのは、ブリンカールFC、マルバ千葉FC、北海道コンサドーレ札幌U-12、マルバ茨城FCだった。顔ぶれを見ると「フットサルの良さをサッカーにも生かそう」と、普段からフットサルを練習に取り入れているクラブが勝ち残った。優勝はブリンカールFC、2位は北海道コンサドーレ札幌U-12。愛知県代表のブリンカールFCは、1月の「JFA 第24回全日本U-15フットサル選手権大会」にも優勝しているので、2つのカテゴリーを制したことになる。
個人的には、これらの結果が育成にとってポジティブな変化だと捉えている。
それはサッカーもフットサルもフットボールという同じ枠組みなのに、サッカー側の人は「なぜかフットサルを軽視しがちだから」だ。この大会を取材していて、いろんな監督の口からよく出てくるのは「うちはサッカークラブなので、とりあえず大会直前に(5対5の)ミニゲームを増やしました」という言葉。そういうチームの試合を見ているとゲームの組み立てに引き出しが少なく、時間と共に次のプレーイメージがないまま前線にボールを蹴り込む、もしくは個々がドリブル頼りにプレーをする事象が繰り返される。
どのチームも、最初は「つなぐ」意思を見せる。しかし、JFAバーモントカップ(以下、バーモント)はコートが小さい。さらに試合時間が短いので、体力任せにボールを追い回すとなんとか目の前の未熟さをごまかせることも多いことから、力技でなんとか解決しようとするクラブもたくさんいる。そうすると、だんだん前線に蹴っておけという「とりあえず」の対処に終始し始める。ただそれは、相手にボールと一緒に主導権を渡している行為なので、勝つことも、自分たちのサッカーを試すことも放棄することと同じである。毎年そういうプレーを見ていて、「この大会を何に生かしたいのだろうか」といつも違和感を抱いていた。
そもそもフットサルはサッカーとルールが違うのだから、事前にそのくらいのことは子どもに教えるべき。そして、その違いに対処するために「どんなプレーで解決するのか」を準備するくらいのことはできるはず。そこに目を向けたら最低限フットサルとサッカーとを比較し、それぞれの長所と短所を探すくらいのことはできる。そうすれば具体的なトレーニングができるのではないだろうか。きっと「とりあえずミニゲームを増やしました」というクラブは、フットサルを見つめる機会を失っているが、サッカーを再確認する機会も失っている。そういう意味も込めて、今大会の結果がポジティブな変化だと言った。
もちろん、私はジュニアサッカーを中心に取材活動しているライターなので「サッカー目線」での書き方をしている。だから、フットサル目線でのことは細かくわからないが、フットサルを中心に取材活動されているライターからすると物足りなさを感じるだろう。来年は、そういう人たちの意見もぜひ聞いてみたいと思う。いずれにしろ、世界の育成で起こっている共通点としては、誰もが「小さい頃からフットサルをやっている」ことはすでに認識されていることだ。
でも、現状「それがなぜなのか」までは、個々が考えられてはいないように思う。なので、今回のコラムは、私がフットサルも少しだけ足を踏み入れ、サッカーと比較する中から出てきた一つの考えを紹介したい。それは今夏のバーモントで、たまたま個人的に望んでいたサッカーチーム優位からフットサルチーム優位という結果に時代が変化したからこそ、あらためてサッカー指導者がフットサルに目を向けてくれると思ったからだ。
ぜひ自身のサッカー観を再確認する材料にしてもらえたらと願っている。
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