ボールが完全に静止していなければ、それはミス。風間八宏監督が語る「止める」の定義
2017年05月08日
コラム風間八宏監督のサッカーは技術が前提になっている。そんな風間監督のサッカー観のなかでも根幹をなすのが「止める」という技術である。『技術解体新書 サッカーの技術を言葉で再定義する』の著者である風間監督の言葉から「止める」の定義を考える。
(文●西部謙司 写真●Getty Images for DAZN)
『技術解体新書 サッカーの技術を言葉で再定義する』より一部転載
ミリメーターで「止める」技術はバルセロナの選手でもできているかわからない
「今日も対面パスの練習を見た記者から、『基礎練習をしている』という話が出たんだけど、我々がやっているのはミリメーターの話であって、バルセロナの選手だってちゃんと出来るかどうかわからないよ」
15メートルほど離れてインサイドキックでパス、それをコントロールしてパスという練習を名古屋グランパスの選手たちが黙々とやっていた。確かに見た目は小学生がやるようなトレーニングである。ただ、風間監督が要求しているのは完璧に止める技術だった。
「止めるというのはボールを静止させることです。ボールが動いていれば、それは『運ぶ』。止めると運ぶの中間はすべてミスです。意識しないでボールが動いているならそれはミス。まずはどうやって止めるのかを私が見せます。それで納得してもらって皆に実行してもらうのですが、すぐできる人はほとんどいません」
単純なグラウンダーのパスを風間さんと同じように止められないというのは不思議に思うかもしれないが、実は止め方が違う。多くの選手はインサイドの「面」で止めることに慣れているのだが、風間さんは「点」で止める。
そして、「点」で止めることを要求している。だから単純なパス練習でも決して簡単ではないのだ。
「親指の下に出っ張っている部分がありますよね。そこでボールの中心より上を触るんです」
ボールには、その運動をオフにするスイッチがある。それはボールの中心より上の一点で、そこに触れるとどんなに速いボールでもピタリと静止する。マジックではなく物理の話だ。足と地面でボールを挟むことを想像していただければいいと思う。足と地面の間にボールが挟まってしまうポイントがある。実際にボールを挟んでしまうと次のプレーがしにくくなるから、ボールのオフスイッチはそれより気持ち下だ。
「昔はね、足でボールを挟めと教えられました。インサイドで地面に屋根をかけるようにして、足と地面の間にボールを挟めば静止すると。ただ、この方法だと自分の体の下でしかボールを扱えない。自分の体の前でも、あるいは動きながらでも、ボールを止めるには面ではなくて点で触るほうが有利です」
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