GKの仕事は「失点をしないこと、ゴールを守ること」。日本と欧州の違いは“アタックの意識”

2017年05月09日

コラム

日本が強くなるために、GKのレベルアップは必要不可欠なことだ。強豪国には、ゴール前にトップレベルのGKが必ずと言っていいほど君臨している。日本のGKが世界のトップを目指すために必要なことは何なのか。現在FC岐阜でGKコーチを務める川原元樹氏の理論を『フットボール批評issue16』から一部抜粋して紹介する。

(文●清水英斗 写真●Getty Images、フットボール批評編集部)

フットボール批評issue16』より一部転載


欧州のキーパーは「ボールにアタックする」

BERLIN, GERMANY - MARCH 31: Andrej Kramaric (L) of Hoffenheim scores his team's first goal with a penalty past goalkeeper Rune Jarstein of Berlin during the Bundesliga match between Hertha BSC and TSG 1899 Hoffenheim at Olympiastadion on March 31, 2017 in Berlin, Germany.  (Photo by Maja Hitij/Bongarts/Getty Images)

――ドイツといえばGK大国として知られています。日本とドイツではGKの常識やベースとなる考え方に、何か違いはありますか?

川原 常識の違いはないですね。大事なものは一緒です。失点をしないこと、ゴールを守ること。それはドイツも日本も一緒です。

――近年は足下の技術の重要性もクローズアップされましたが、やはりいちばんは、その点ですか?

川原 GKがビルドアップに参加するとか、コーナーキックから点を取るとか、いろいろありますが、やはりGKがいちばん喜びを感じるのは、チームを救うセーブ、あるいは無失点に抑えることです。それはドイツでも日本でも、小学生からプロまで一緒ですね。

――違いがあるのは、技術的なところ?

川原 そうですね。GKの技術は少し違うと思います。特に違いを感じるのは、ボールに向かって行くプレーです。以前から日本でも「斜め前に倒れろ」、シュートコースを狭めるために「前に行け」とは言われましたが、それ以上に、ボールに向かって「できるだけ早く、強く触りに行け」、「自分からアクションを起こせ」という指導はなかったと思います。

――具体的にはどういうシーンの違いですか?

川原 たとえば、シュートをキャッチするなら、少しでも前でボールを捕る。セービングでも、ボールに対していちばん早く触りに行く。ひじを曲げた状態で届くボールだったら、ひじを前に伸ばし切り、より前方のポイントで、あるいは斜め前方のポイントで捕りに行く、ということですね。ドイツや欧州では「ボールにアタックする」という表現を使います。

 クロスや1対1も同じです。できるだけ前でボールに触る。たとえば1対1の場面で、日本では間合いを一歩詰めて横向きにダイビングするところを、一歩踏み込んだらそのまま前に倒れてボールに対して一直線でフロントダイビングすれば、もっと早く触ることができます。それが「ボールにアタックする」ということだと思います。

 私の知り合いのオランダのGKコーチは、正面のシュートが来たら、一歩前へ踏み出して捕れ、できるだけ身体全体を伸ばし切って前で捕れ、と。そういう指導をする人もいます。ゴールを守るやり方はいろいろありますが、それくらい「ボールにアタックすること」を欧州では大事にしているわけですね。最初に提唱したのは、おそらくユベントスでジャンルイジ・ブッフォンを指導しているクラウディオ・フィリッピかなと思います。この「アタック」の意識がゴールを守る上で大きな差になります。

――そういえば以前、ドイツで指導する日本人のGKコーチが、「ドイツのGKはボールに触ったら必ず枠の外へはじくけど、日本ではボールに触ったのに、シュートの勢いに負けてゴールに吸い込まれる失点が多い」と言っていました。これはアタックの意識の違いから生じることですか?

川原 それが原因のすべてではないと思いますが、ひとつの可能性ではあるかもしれません。つまりセービングをする際にボールに対して腕や身体を伸ばし切れていない状態、ということだと思います。ひじが曲がっている状態だと力が伝わらず、手先だけの力になってしまいます。でも、腕を伸ばし切れば、上半身や肩からパワーが手につながります。決して日本のGKにパワーがないわけではなく、アタックして早く触る意識がないために、ボールに対して力強くアプローチできずに後ろに逸らしてしまうのではないかと思います。

――なるほど。実際にポーズを取ってみると、よくわかりますね。たしかに、ひじが曲がっている状態では手先の力しか使えません。このような技術は身体に染み付けないと、試合で実践できませんね。

川原 そうですね。でも、意識すれば絶対にできるし、誰でもうまくなる可能性があります。日本人だから、身体が小さいから、細いから、できないということはないですよ。

kawahara

(続きは、フットボール批評issue16でご覧ください)


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【商品名】フットボール批評issue16
【発行】株式会社カンゼン
B5判/160ページ
2017年5月6日発売

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