熱中症、ゴールを移動する際の転倒、育成年代での過剰な指導…。“子どもの安全”を守るには、まず「大人が知ること」

2017年07月06日

インタビュー
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2004年、愛媛県今治市内で次のような事故が起こりました。小6男児(当時)が小学校のグラウンドでFKの練習をしていた際、そのボールがゴール後方の塀を越え、オートバイを運転していた高齢者がボールを避けようとして転倒。事故から約1年半後に死亡したという事故です。遺族側は男児の両親を相手に訴えを起こし、二審では、両親に対して約1180万円の損害賠償が命じられました。しかし、2015年4月、最高裁では二審の判決を破棄し、遺族側の請求を退けたのです。この最高裁での判決は大きな反響を呼び、子どものスポーツにおける安全性という観点から、波紋を投げかけました。本稿では前回(起こってからでは遅い『スポーツ事故』の問題。指導者・保護者が心得ておくべきこと)に引き続き、スポーツ事故に詳しい望月浩一郎弁護士にお話を伺いました。今回のテーマは、「保護者や指導者が心得ておくべきこと」です。

(取材・文●三谷悠 写真●ジュニサカ編集部)


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指導者の“無知と無理”によって引き起こされる事故

 まずはスポーツの現場における事故を防ぐために、指導者ができることを聞いた。

「子どものスポーツ事故は、指導者の“無知と無理”によって引き起こされるケースが目立ちます。たとえば熱中症。その多くは暑さに加えて、指導者が練習中に水を飲ませないなどの原因が挙げられますが、いまのような梅雨の時期は特に危険です。先日も熱中症による重症患者が出たという報道がありましたが、暑さに慣れていないことが原因です。指導者には、子どもに対してのより厳重な体調管理が求められるのです。

 Jリーグでは多くのチームが練習の前後に体重を計ります。練習後に減った体重は、要するに体から水分が抜けたことを示しています。水分の補給は体重の減少にかかわりなく必要ですが、体重が1.5kg以上減っている場合は脱水症状の兆候といえるので注意が必要です。

 学校の部活動やクラブチームの活動で、ここまで綿密な体調管理を行っているところは少ないと思いますが、子どもを本当に守ろうと思えば、それぐらい徹底しないといけません。

 ただし、『事故が起こらないように安全に注意しなさい』と闇雲に言ったところで、あまり意味はありません。競技に応じて、どういった事故が起こるのかを想定し、予防策を考える必要があります。

 たとえば、サッカーを遊びとして取り入れるとき、正式なサッカーボールではなく、少し空気の抜けたゴム製の柔らかいボールが使用されることがあります。意外に思われるかもしれませんが、そちらの方がかえって危険だということはあまり知られていません。空気の抜けたゴム製の柔らかいボールは力が加わると変形しやすいため、顔に当たったときに骨に沿って形が変わります。さらに、ボールが当たって離れるときに吸い上げる力が発生するため、眼球の損傷がより起こりやすい状況になるのです。

 こうしたことを多くの指導者が知りません。実際に上記のような事故が現実として起こっています。目の負傷を防ぐためには、空気がしっかりと入った硬いボールを使用したほうがよいのです」

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