日本代表の主将・長谷部誠に見る真のキャプテンシー。リーダーに必要な”資質”とは何か?

2015年10月07日

メンタル/教育
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妥協を許さず自信を追い込むストイックさ

 とはいえ、長谷部自身、必ずしも好調ではない時期もあった。2008年1月から所属していたヴォルフスブルクでは、本職でない右サイドバックや右MFで起用されることが多く、代表との役割の違いに戸惑いを覚える場面も少なくなかった。当時のフェリックス・マガト監督に移籍を直訴したことで溝が生まれ、8試合連続ベンチ外となった2012年夏から秋にかけては特に苦しい時期だった。

 サッカー選手は試合に出ていなければ、どうしてもパフォーマンスが落ちる。本人はその現実を受け入れつつも「僕は何をやるにしても自分に正直にやっているんで、ブレることは絶対にないです」と断言。アマチュア選手のいるセカンドチームでプレーするなどできる限りの努力を重ねてコンディションを維持しようとした。

「みなさんが心配するのも分かりますけど、僕もプロを10年以上やってきて試合に出ていないときもあった。試合勘がズレることもあるかもしれないけど、それを経験でカバーしないと。代表で結果を出せなければ選ばれないだけ。そこは自分の中でクリアになっています」と妥協を許さず自身を追い込んだ。

 こうしたストイックさはチームメートにも前向きな影響を与える。本田や長友佑都(ガラタサライ)らが2014年ブラジルワールドカップまでの4年間、貪欲に世界トップを追い求めたのも、長谷部の姿勢から刺激を受けた部分が多少なりともあったはずだ。

 ブラジル大会を控えた昨年1月に右ひざを負傷し、大会直前まで別メニューを強いられても、彼は自分を信じて本番に照準を合わせた。だが、3試合のうち2試合(3戦目のコロンビア戦はフル出場)は途中交代を余儀なくされ、チームも惨敗。

 責任を痛感した長谷部は「これからは若い選手がキャプテンをやるべきだと思う」と身を引く決意を口にした。代表としては今後も戦い続けていく意思は持っていたが、日本代表がもっと強くなるためには若手の台頭が不可欠だと、彼にはよく分かっていたのだろう。
 
 長谷部の言葉を受けて、ニュルンベルクで1シーズンを一緒に戦った清武弘嗣(セレッソ大阪)が「自分が今までサッカーをやってきた中でハセさんは一番のキャプテン。プレーだけじゃなく、周りに目を配れるとか、気持ちの面とか、ホントに素晴らしいと感じた。4年後は自分がキャプテンマークを巻いてピッチに立つことを考えてこれからを過ごしていきたい」と背中を追っていく意欲を公言した。

 長谷部のやってきた仕事がチームメートから大いにリスペクトされていたことが、清武の言葉から色濃くうかがえた。

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