コラム

フットボールは“判断”のスポーツ。育成年代に必要な「サッカーへの情熱」を引き出す指導法

2018年02月14日

人が決断を下すとき、脳ではなく、感情が左右することが科学的に発見された。だから、サッカーをプレーするには感情が重要であり、冷静さばかりを子どもに求めても実力を発揮することにブレーキをかけかねないのだ。感情をコントロールすることはもちろん大切だが、時に爆発させることも必要だ。例えば、特にシュートは日本が抱える大きな問題だ。「どうすればいいのか」と頭で考えるほど焦りしか生まない。決断はハートが大きく作用するのであれば、子どもたちの『パッション』のままにプレーさせるべきだ。指導者ができることは、決断の前に状況を認知させ、ヒントになる材料を集めさせる方法を教えるべきであろう。

【連載】ミゲル・ロドリゴが教えてくれた「才能を引き出す」11の魔法

企画・取材・文●木之下潤 写真●村井詩都、佐藤博之


ミゲル・ロドリゴ

感情が決断を導く

 たまに、自信のない子どもには大声で叫ばせたりします。

 例えば、プレッシャーに弱い子に「次はボールをとられない!」と言わせるなど。子どもって、まだ完成されていませんよね? 世界中、どの国の子たちも「まだ心のホワイトボードは真っさら」なのです。特にジュニア年代の子どもは、大人よりも強く人間としての感情が大きく左右します。なので、感情を表に出させます。

 神経系の新たな研究によると、「人間の判断を一番左右するのは感情だ」という結果が出たらしいのです。人間が判断、決断をするときに使う脳の部分を調べたら、感情が作用する部分が光るのだそうです。人間は物事を決めるときに「ハートで決めるのか?」、それとも「頭で決めるのか?」と、ずっと議論されてきましたが、これまでは「頭でしょう!」と多くの人が答えていました。しかし最近の研究結果では、実は「感情で決める」ということがわかってきたそうなのです。これは今世紀最大の発見と言われています。

 つまり、「感情が決断を導く」のです。

 そうたとえると、「フットボールは判断が重要だ」と強くうたっていますから、子どもがいいプレーをするには「いかに強い感情を抱けるのか」にかかっています。もちろん感情はアップダウンを繰り返すものだから、それを上手にコントロールすることが大切です。ただ、それができればサッカーもうまくなるのです。だから、指導者はまず子どもたちの『パッション』、つまりは『サッカーへの情熱』を出させることが上達に大きくつながります。(決断と感情に関する内容は「魔法7」に同じ)

 私の目からみると、日本の子どもたちは『喜怒哀楽』を素直に出さずにいます。しかし、サッカーがうまくなるには「ハートが必要」なのです。うまくハートを引き出すためには、言葉遊びが大切になります。

 例えば、日本人選手が不得手なフィニッシュです。

 シュートを打つには、素早いプレーが求められます。だから、決断を素早く下さなければならず、特にフィニッシュには「パッションが大きく絡む」ということです。それなのに、日本の指導者たちは「どうして今シュートを打ったの?」と問い詰めるように言葉を投げかけます。ジュニア年代の子どもは「そうじゃない!」と否定されると、「どういうこと?」と迷いが生じて素早いプレーなんて望めません。

 大切なことはハートだ、とわかっているなら声のかけ方が変わってくるはずです。

「この場面はこう動き、ここでゴールをねらう」
「GKがここに立ち、どのコースが空いているのがわかる?」
「そう、そのコース」
「シュートはハートを込めて打て!」

 まず、シュートの直前状況を頭の中で把握させ、シュートコースを発見させてしっかりとイメージを持たせます。そうすれば、もっとフィニッシュに対して大胆かつスピーディなプレーができるように変わっていくかもしれません。1つずつ段階を追って説明すれば、ジュニア年代の子どもたちも「どのように頭の中を整理し、ハートを持ってシュートを打つのか」が理解できるでしょう。

 最初はあまりに単純過ぎる指導法であるがゆえに、抵抗があって恥ずかしいかもしれません。しかし少しずつ取り組めば必ず良い方向に進みます。大人なら「え?」と思うかもしれませんが、子どもたちは素直に真剣にとらえてくれます。私は、ピノキオで例えることがあります。

「ピノキオは嘘をついたから鼻が伸びただろう? でも、サッカーでは嘘をつかないといけない」

 そして、「どう嘘をつくのか」をわかりやすく紹介します。

「ボールを持ったらDFが寄せてくるよな? そうしたら相手の逆をとらないといけない。そのとき、相手に嘘をつかないと相手の考えの逆のプレーはできないよね。だから、今日からピノキオだ!」

  練習中、「ピノキオ」と叫び、嘘をつくプレーを意識させることもあります。時には、それがカメレオンの場合もあります。普通にしていたら周囲の動きは見えませんが、カメレオンのように目を動かせば把握することができます。だから「カメレオン」という言葉を発したら、「いま見えているところにパスを出すのではなく、見えてないところにパスを出しなさい」と教えています。

 感情を表に出しやすいよう、言葉遊びによって子どもの感情を高める工夫をしています。

 いまも『ピノキオ』や『カメレオン』はよく使う手段です。各地にサッカークリニックに回りましたが、ポジティブなスキンシップをはかってジョークを飛ばしながら指導したら、ジュニア年代の子どもたちはどんどん感情を表に出すことに抵抗がなくなります。どんどんハートが表に出せるようになっていきます。どんな子どももそういうものです。

 これは決して日本文化に反しているわけでありません。まだまっさらな状態である子どものうちに、新しいものを開拓して方向性を見出せば、彼らにとってはそれが常識です。ピッチの中に入れば、私は選手も指導者も日本文化とは関係のない世界を創造できると思っています。もちろんピッチ外では、日本文化の中で言葉を発信し、行動すべきです。

 ヨーロッパの選手たちはピッチ内外でのオンオフがうまいですが、日本人は常にオンの状態でいるから切り替えが少し不得手のようです。グラウンドの中でも外でも常に真面目だし、ハートを出せずに練習している子どもたちをたくさん見かけます。サッカーをプレーする上では、頭の切り替えが必要です。そして、日本の監督やコーチは「ハートを表に出す」ことが、子どもが持っているすべてを出し切る(※魔法8参照)ことにつながることを理解しなければならないでしょう。

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【連載】ミゲル・ロドリゴが教えてくれた「才能を引き出す」11の魔法


<プロフィール>
ミゲル・ロドリゴ

1970年生まれ。スペイン・ヴァレンシア出身。イタリアのルパレンセ・パドヴァやロシアのディナモ・モスクワ、スペインのカハ・セゴビアなどで指揮を執った経歴を持つ。2009年6月〜2016年2月までフットサル日本代表監督を務め、その後、フットサルタイ代表監督に就任し、現在はフットサルベトナム代表監督として手腕を振るう。FIFAインストラクター、スペインサッカー協会フットサル指導者資格を保持。

 

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