へき地に住んでいる子がプロになる可能性は?

2012年05月15日

コラム

池上正さんが子どもに対する悩みや、保護者・コーチの子どもを取り巻く大人に関する疑問や悩みに答えるこのコーナー。今回のお悩みは「へき地に住んでいる子がプロになる可能性は?」です。

◎自宅(ピッチ外での子育ての悩み)

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(質問者:小学2年生の保護者)

私たち家族は今、へき地(島)に住んでいます。父親(かなりのサッカー通)の影響で小さいころから子どもとサッカーを楽しんでおり、小学生になると地元のサッカー少年団に入りました。今は2年生。しかし、部員は1年生から6年生までわずか10人程度。父親もコーチとして、そのサッカーに携わって熱心に指導しているようです。そんなある日、子どもから「僕は将来プロになりたいけど、こんなところでもサッカーをやっていてチャンスはある?」と聞かれました。父親は苦し紛れにも「おぅ、大丈夫だよ」と言ったみたいです。親ばかなのかもしれませんが、もし数年後かに子どもがすごく才能あって、また同じことを聞いてきたらなんと答えてよいのか。こんな質問ですが、アドバイスをもらえるとうれしいです。

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小学生時の環境は未来を左右しません
高校入学がひとつの分岐点

 ご安心ください。小学生時代のサッカー環境が将来を左右することはありえません。ブラジルなどはアマゾンの密林地域にほど近い郊外からもプロ選手は生まれています。
  親御さんがひとつ考えなくてはならないことがあるとすれば「真剣にサッカーを続けることを考える時期がいつか」という問題です。

 私が考えるひとつの目安は、高校入学のタイミングです。例えば、居住地から通えない学校で越境入学になるけれど、より高いレベル、よき指導者のもとでサッカーをできる環境がある。そのとき、お子さんにそこで試合に出られそうな技術があり、本人もそれを望み、家庭もそれを支援できる状況であればトライしてもよいでしょう。そこの分岐点で、初めて具体的に「プロになる」という夢がスタートするわけです。

 もしお子さんが小学校を卒業する際に、地元でない中学でサッカーをやりたいと言い出したら、どうでしょうか? 私が親なら「焦らなくても大丈夫だよ」と言って聞かせます。中学で親元を離れるのは基本的に反対です。12、13歳からは思春期に入り、心身のバランスを崩しやすくなります。加えて「クラムジー」と呼ばれる成長期によくみられる体のバランスを崩す時期にも差し掛かります。そのようにさまざまなリスクを背負う時期に、親元を離れてストレスがかかる状態でサッカーをするのは、子どもにもよりますが、非常に難しいものです。

 義務教育になる中学校は、親元の落ち着いた環境で過ごさせてあげたいもの。本人に焦る様子があっても「ここ(地元)でも、サッカーで君にできることはたくさんあるよ。成長できるよ」と話してあげてください。
  といっても、まだ4年もありますね。ゆったりとお子さんの成長を見守ってあげてください。

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