天才・風間八宏が日本サッカーの常識を斬る
2012年09月14日
サッカーエンタメ最前線現在、川崎フロンターレの監督を務める天才・風間八宏氏と気鋭のライター木崎伸也氏がタッグを組んで作った書籍が9月7日(金)に発売された。タイトルは『革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする』(カンゼン刊)。本作は、「すぽると!」のサッカー解説者でおなじみの風間氏が日本サッカーの常識に切り込んで解説したり、天才の育成方法などを語っている。
サッカーエンタメ最前線では2週にわたり本書をピックアップ。1回目の今回は、日本サッカーの常識だと思い込んでいる「誤解」を風間氏が1つひとつ取り上げている箇所を一部紹介する。
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日本サッカーが解くべき8つの「誤解」
何気ない言葉の中に、日本サッカーの本質を見抜くヒントが隠されていることがある。2010年南アフリカ・ワールドカップに向けたスカパーの特番で、イビチャ・オシムが投げかけた言葉もそのひとつだった。
「毎週Jリーグと欧州リーグを見ている人が、これが同じスポーツか? という疑問を持ったときに、サッカーの解説者には答える責任があると思います。なぜ違うように見えるのか、ちゃんと説明しなければいけません。そしてなぜ日本人選手が同じようにプレーすることができないのか、説明できるだけの知識と責任感を備えていなくてはいけません」
オシムはきっと、こう言いたかったのだろう。Jリーグと欧州のトップリーグには、同じスポーツとは思えないと感じさせるほど重大な差がある。その差を明確に言語化できない限り、日本サッカーが次のステージに行くことはない――と。
ワールドカップを取材するために南アフリカを訪れてからも、筆者の頭の片隅にはずっとこのオシムの言葉がひっかかっていた。
なぜ別のスポーツに見えてしまうのか。
世界トップとの差はどこにあるのか。
もしかしたら、完全に見落としている欠点があるのではないか……。
そんな自問自答を繰り返していたとき、ワールドカップのメディアセンターで、解説者の風間八宏さんと「日本サッカーの可能性」について話す機会があった。
風間は18歳のときに日本代表に選ばれ、筑波大学卒業後に数々の実業団チームからの誘いを断ってドイツに飛び、計6年間ドイツでプレーした”欧州組”の先駆者のひとりだ。清水商業時代の恩師である大滝雅良監督が「教えることは何もなかった。逆に自分が彼から多くのことを学んだ」と回想するように、幼い頃から飛びぬけた発想力を持つ”天才”だ。
サンフレッチェ広島時代には、キャプテンとしてJリーグの前期優勝(94年)に貢献しており、間違いなく日本サッカー界で世界のトップとの距離感を最もよく知るひとりである。中田英寿氏は現役時代、風間の見識と洞察力に共感を覚え、nakata.net.TVの進行役を任せていたほどだ。
この稀有な”サッカーの目”を持つ男は、南アフリカにおける日本代表をどう見たのだろう?
風間は選手たちの頑張りに称賛を送る一方で、日本がチームとして消極的なやり方を選択したことに、物足りなさを感じていた。
「今回の日本は、攻撃のための守備ではなく、守備のための守備になってしまう時間が多かった。日本人選手のテクニックを考えれば、もっと自分たちの良さを出すサッカーができたはず。もちろんベスト16という結果は、日本サッカー界にとって大きな意味があったが、あらためて何を大切にしてサッカーをするのか、考えなければいけないと思う」
ただし、これは日本だけの課題ではない。風間は南アフリカ・ワールドカップでは、多くのチームの質が「低かった」と感じていた。
「今大会では、多くのチームがサイドにボールを運んで、中央に向かってクロスをどんどん入れるというサッカーをしていた。こういうサッカーは、スペースを消されると途端に行き詰まってしまう。昔のサッカーに戻ってしまった感じです」
その代表例が、イングランドだ。
「せっかくルーニーが相手のDFを外して、いくらでもパスをもらえる状況を作っているのに、まわりの選手たちがその動きに気づいていなかった。ボールが来るのは、味方がドカーンと蹴ったときだけ。あれで点を取れというのは酷。ルーニーがイライラするのも仕方がありません」
ルーニーは無得点のまま、決勝トーナメント1回戦でドイツに敗れ、南アフリカを去ることになる。同じく期待外れに終わったイタリアも、サイドからばかり攻める時代遅れのチームだった。
今サッカー界では、イングランドやイタリアのようなサッカー大国でも苦しんでいるのだから、まだプロリーグができて約20年しか経っていない日本に、「スペインのような攻撃的なサッカーをしてほしい」と願うのは酷な話なのかもしれない。今大会を見る限り、日本がスペインに追いつくには20、30年単位の年月が必要に思えてしまう。
ところが、風間はまったく逆のことを考えていた。
「日本の選手には、言われたことを認識して、プレーを変える能力が高い。だからこそ南アフリカ・ワールドカップでは、大会直前にやり方が変わっても対応できた。技術的にもかなり高いものがある。あとは発想の問題なんです。少し発想を切り替えれば、もっと日本のサッカーは楽しくなるし、必ず強くなる」
日本人選手はすでに技術があり、新しいことを吸収しようとする意欲もある。
あとは “発想の転換”――。これさえできれば、日本サッカーは驚くほどの進化を遂げられると、風間氏考えているのだ。
では、いったいどうすれば発想を変えられるのか?
それを実行するには、日本サッカー界が常識だと思い込んでいる「誤解」を、一つひとつ解きほぐしていく作業が必要になってくるだろう。スペインがワールドカップ初優勝を決めた約1ヶ月後、あらためて風間に時間を取ってもらい、筑波大学でインタビューを行った。
すると、8つの「日本サッカーの誤解」が浮き上がってきた。
①サイド攻撃は本当に効果的なのか?
②攻撃にスペースは必要なのか?
③足元へのパスはダメなのか?
④日本式ドリブルの間違い
⑤首を振っていても、大切なものが見えているとは限らない
⑥マグネット式布陣論の落とし穴
⑦本当の組織力とは何か?
⑧簡単な答えをほしがってはいけない
思い込みや先入観を打ち砕き、非常識を新たな常識に変え、日本サッカーの次なる扉を開けることに挑戦したい。
※『革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする』P014-049より一部抜粋
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「なぜ人はサッカーすらも思い込みにとらわれてしまうのか? すべての常識を疑い見えているものを劇的に変え天才の視点を手に入れる」という言葉が、表紙の1枚めくった袖に記されている。思い込みや先入観を取り払えば、サッカーの本質が見えてくる。『革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする』では、天才を育て、読者も天才の視点を持てるサッカー理論が散りばめている。
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