育成現場のプロが語る成長期のカラダ対策「ケガに強くなるポイント、教えます」【後編】
2014年02月03日
コラム自己管理のできるたくましい子どもに
ジュニア年代で最も多い外傷は捻挫。傷害だと小学校低学年が踵骨骨端症(セバー病)、12~13歳はオスグット、中学生後半になると腰椎分離症が多い。年代によって多い傷害が異なり、それぞれの対処方法も違ってくる。こうした特徴を指導者が熟知し、指導現場で伝えていくことで、子ども自身のセルフケアを促すことにつながるのだ。
「自分自身でケアができる選手が一番強いんです。トレセンでも『テープ巻いてください』と言う子どもがいますが、必要なら自分で巻けるようにならないと。睡眠、食事、休養にしてもそう。自己管理のできる子が将来残っていくはずです」と中堀さんは指摘する。
加藤ドクターも診察室で子どもの目を見て話をするよう試みているというが、自分で受け答えのきっちりできる子は、やはりケガへの意識が高いそうだ。
セルフケアの能力を養うためにも、強いメンタリティづくりに努めるべきだ。ケガをしやすい子は心と体のバランスがとれていないケースが多い。股関節の硬さや体幹の強さと同じくらいメンタルは重要なのだ。
「前向きになることは体にもつながる。くよくよしていたら治りも遅いし。よくケガをする子は『痛い』と聞いても『痛い』としか言いません。痛みがあること自体ストレスになるからだと思いますね。
親御さんが心配しすぎるのも逆効果になりがちです。トレーニングをすれば足が張ったり、多少の疲労が出たりするのは当たり前のこと。子どもは発育途中なんで筋肉が疲れてもそこから回復することで強くなっていくし、機能も上がる。試合会場では子どもたちの足を大人がマッサージしていたりするのを見かけることもありますが、親や周囲の心配が子どもに痛みを感じさせることもあり、ナーバスになりすぎるのはよくないですね」と中堀さんは話す。
加藤ドクターも「一度練習が始まったら、外傷の場合は重症でない限り、練習終了まで練習をやらせて様子を見ることも大事です。練習だから少しのケガでも大事をとって休み、試合のときは多少のケガでもがんばるという選手と、練習のときから試合と同様に全力でがんばる選手とでは、さまざまな面で差がつくのではないでしょうか。もちろん、練習が終わったら、しっかりケガを診断してもらい、ケアをすることは大切です。このような経験を積み重ねることで、どのくらいのケガならプレーしてOKか、選手自身でわかるようになります。何でも痛いから休むという姿勢では、ケガに強い選手にはなれないでしょう」と強調していた。
たくましい心と体がケガに強い選手をつくる。そのことを指導者も保護者も忘れずに、日々努力していくことが肝要といえる。
プロフィール
中堀千香子
(なかほり ちかこ)
JFAメディカルセンターアスレティックトレーナー
ジェフユナイテッド市原・千葉のユース・ジュニアユース、東海大学サッカー部などでトレーナーを務め2005年より、なでしこジャパンをはじめとした各種年代の日本女子代表にトレーナーとして帯同。2007年よりJFAアカデミー福島開校とともに女子担当トレーナーに就任し育成年代の選手育成に携わる。
加藤晴康
(かとう はるやす)
立教大学コミュニティ福祉学部 スポーツウエルネス学科准教授 医学博士・医師。JFAスポーツ医学委員会委員。JFAのドクターとしては、1995年のナショナルトレセン活動がスタート。その後はU-16~23の各年代代表のチームドクターを務める。2008年の北京オリンピックではU-23日本代表(男子)のチームドクターとして帯同した。現在は大学での授業のほかにJFAメディカルセンターのドクターとして活動している。
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