なぜドイツでは点取り屋が生まれるのか? 育成現場から探る、決定力不足解消のヒント
2014年06月27日
コラムゴールを奪い合う練習を取り入れ、成功と失敗を多く体験させること
具体的に一つの局面を指せば、攻撃3人、守備2人の局面でどう崩すか、どうプレッシャーをかけるかということです。絶えず変わり続ける状況に応じて適切なプレーやポジションニングを連続して実行できるのがプロであり、その精度の高さが一流の証でもある。
Jリーグで見かけるのが、カウンターを仕掛けて3対2の有利な状況だったのにシュートまで持ち込めないとか、ファーストタッチで2対2の状況に追い込まれていたりする。とにかくシュートに持ち込むうえで大切なスキルを練習で身につけなければ世界で戦っていけません。
人数が多くなればより複雑で難易度が上がるから、最初は2対1からスタートすればいい。
ここで重要なのは、どうやってGKとの1対1の状況を作り出すのかということです。ボール保持者はどうDFを引きつけてパスを出すのか、サポート役はどうDFの意識を自分に向かせて味方にシュートを打たせるのかを状況ごとに考える。
一番ダメなのは、2対1を始めたはずなのに、気がつくとボール保持者がDFとの1対1の練習になっていることです。
練習は簡単なことから難しいことへと段階を踏むのが大事です。その順序立てた段階の引き出しの数が多いほど選手の選択肢を増やすことにつながるし、それが指導者の適応度の高さだとも言えます。
子どもは毎回テンションが違うし、1分1秒ごとに変化する繊細な心の持ち主です。だから、その状況に応じてどういった練習が子どもにとって効果的なのかを見極め、条件や設定を変えられることがクリエイティブな指導者なのではないでしょうか。
『ゴールを決められる選手になる』ために必要なのは、シュートを打って失敗してもチャレンジしたことをほめる心の広さとゴールを決めた喜びを実感できる練習、そして、その練習が試合と同様にプレッシャーがあり、かつ判断力を必要とするものであるかどうかです。
人間だからうまくいかない練習を考案することもあります。そんなときは子どもに素直な感想を聞いてもいいと思います。本来、サッカーはゴールを奪い合うシンプルなスポーツ。
そのゴールという本質を楽しむために練習することを常に頭に置いて1日のメニューを考え、それを積み重ねることが上達の早道です。
プロフィール
中野 吉之伴
(なかの・きちのすけ)
1977年、秋田県生まれ。武蔵大学卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年に日本人では数少ないドイツサッカー協会公認A級コーチライセンス(UEFA Aレベル)を所得。SCフライブルクでの研修を経て、現在はU19-3部リーグのFCアウゲンでヘッドコーチを務める
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