日本が世界で勝つために…。育成年代から変えていきたい「良いサッカー」の定義
2016年07月12日
コラム近年の日本代表を振り返ると、進歩が見られる一方で、変わらない課題も存在している。一朝一夕に解決できない部分もあるとはいえ、しっかりした設計図を描かなければ、W杯仕様の日本代表は永遠に完成しない。そこで、7月6日に発売となった『フットボール批評issue12』から育成年代から変えていくべき「良いサッカー」の定義を一部抜粋して紹介する。
(文●西部謙司 写真●Getty Images、ジュニサカ編集部)

「間受け」の世界基準
守備を固めている相手への攻略にはいくつかの定石があるが、日本の場合は「間受け」が絶対的な条件といっていい。とくに相手DFとMFの間、いわゆるバイタルエリアでの間受けを成立させなければならない。日本の育成はここにかなり力を入れているし、現在でもそれができる人材はいる。だが、W杯のレベルを考えると香川でもぎりぎりかもしれない。清武弘嗣、宇佐美貴史など、そのタイプの選手はたくさんいるのだが、トップレベルで通用すると確信が持てるほどではない。
Jリーグについていえば、その傾向はさらに顕著だ。バイタルエリアでの間受けからのコンビネーションを武器にしている浦和レッズですら、肝心の間受けでボールを失う頻度が高すぎる。狭いスペースで速いパスを収めて前向きに仕掛けられる選手が少ないのだ。そもそも最初のコントロールで失敗しているケースが少なくない。ここで収めて、パスだけでなく、1人かわして決定的な状況へ持っていける選手がいるかいないかでサッカーの質は大きく変わる。浦和はこの点でJのトップクラスであり、アジアでも高い水準にあるのは確かだがACLを勝ち抜けていない。もちろんこれだけが敗因ではないけれども、仮に間受けのできる世界トップクラスの選手がいたとしたら、もっと得点はとれていたし勝ち抜けていたと思う。そこまでのお膳立てができているだけに惜しい。
日本代表も同じで、縦パスを入れる前段階まではほぼ何の問題もなくできている。この点は強豪国にも見劣りしない。運ぶ力はあるわけだ。だが、そこから崩すとなると人材は限られているし、その先にはフィニッシュという別の問題もある。
プレッシャーの少ない状態ならば、日本選手の技術は世界のトップクラス並といっていい。しかし、プレッシャーの厳しい状況でのテクニックは全く同等とはいえない。間受けが成立するかどうは攻撃側のポイントであると同時に、守備側の死活問題でもあるので全力で潰しにかかる。それをかいくぐれるだけの技術に関してはまだまだ足りない。ビルドアップはできるのでポゼッションはとれる。しかし、その先へ進めていない。
ただし、これについては育成方針を変えれば必ず改善できると思う。
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