すべての面で圧倒的なクオリティを見せたバルセロナ。指揮官の言葉から学ぶ「選手自身が判断するプレー」の本質とは何か?

2016年08月30日

コラム

少人数制サッカーと11人制サッカーは別のスポーツ

――日本のサッカーはまだ発展途上の段階です。現状では、今指摘してもらった点を含め、戦術的な部分で遅れをとっていると思っています。セルジ・ミラ監督の目から見ていかがでしょうか?

 私は昨年からチームを率いていて、今大会に参加するのは2度目です。だから、深いところまで言えるかわかりませんが、日本の選手たちは監督から伝えられたことをしっかりとやれているように思います。秩序をもってサッカーをしていますが、おそらく言われていること以外のプレーがおざなりになっているというか、監督から伝えられていない、自分たちで考えなければならないところの判断がなかなかできていないのかなと感じています。

 監督から指示されたことは100%やっています。しかし、それ以外の状況が起きたとき、複雑な判断が求められると少しその判断が遅れてしまっています。戸惑い、スムーズに決められなくなっているように思います。それも一つ一つのプレーの遅さにつながっている要因です。(監督に)言われたこと以外の判断ができていないところがあるのではないかと思います。

――そういう部分に対してアプローチするには、どうしたらいいでしょうか。少しだけアドバイスをもらえませんか?

 監督と選手の関係については、一つ文化的なところがあると思います。私たちの練習はボールを使って、試合の状況に近づけたトレーニングを重ね、しかも毎回テーマを持ってやっています。当然、一つ一つの練習メニューにはテーマに即した状況が生まれ、選手が的確に判断できるよう、早く判断できるようにしてトレーニングを積み重ねています。

 それは、各々が自分たちで判断できるようになるためです。監督やコーチはそのために、より早く判断できるようになるために助言するように努めています。例えば、こっちからあっち、あっちからこっちというような対面パスはトレーニングしないので、『選手たちに自由さを与える』という意味では、『考えるトレーニングを積極的に取り入れる』とまた良い方向に変わっていくのではないかと思います。

――開幕前のトレーニングを拝見しました。ビルドアップをテーマにトレーニングをしていました。アップ後、最初の練習で「DFラインから前線への展開」に主眼を置いたトレーニングをしていた際、DFラインと前線の間にいる選手はDFに落とすか、自分でターンして前線にパスを回すかがプレーする選手に委ねられていました。選手自身に自由に選ばせるというか、そういうところから選手に自由に判断させてプレーさせるということでしょうか?

 私たちバルサは自分たちで判断するということを前提に練習しています。(あの練習メニューでいえば)最初のトレーニングだからより簡単なものから練習に入るのが基本です。私自身、今大会に参加するのは2回目なので、日本サッカーの詳しい事情はわかりません。

 ただ、どんなトレーニングも彼らがどんな判断を下し、どんなプレーをするのかは彼らに任せています。指導者が、その中で選手たちが間違った方向に進まないように見ているというのが大きいと思います。

――最後に、7人制から11人制サッカーに切り替わるとき、戦術面でどんな準備をするのでしょうか。そのために、どんなトレーニングをするのかを日本の指導者に教えてください。

 私たちは選手が18歳になった時点で、バルサのサッカーができるようになるために、6歳から18歳までの育成をプランニングしています。だから、基本的には11人制サッカーに切り替わってもバルサのサッカーをやるというコンセプトで練習しているので、日本のクラブほど11人制サッカーへの移行に苦戦していません。
 
 確かに、7人制と11人制の差は大きいです。ほとんど違うスポーツといっても過言ではありません。グラウンドが大きくなり、プレーする人数も増えますから、より複雑になります。しかし、その一方で選手たちはより多くの解決方法を得ることになります。

 トレーニング内容の変化でいえば、人数を増やした練習メニューをやっています。ボールを持つ選手たちとそれに関わる選手たちの選択肢を増やすため、11人制サッカーになると人数をかけたトレーニングを積極的に行っています。

 開幕前にした練習は、インファンティル Bの最初頃のトレーニングになります。例えば、7人制だと3対3+フリーマン2人だったのが、11人制だと8対8+フリーマン3人とか、人数を増やしたトレーニングが私たちバルサのやっていることです。

バルサ002

 

大会情報

U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2016

 

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