サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典「友達に聞いてみたら?」「引っ張る」
2016年12月16日
コラム<池上さんのことば辞典>
引っ張る
【動詞】
サッカーでは主にファウルをする際
によく見られる動作。ドリブルで抜
かれそうになるとユニフォームを引
っ張る。CKの際、ゴール前の競り
合いで相手の腕を引っ張るなど。
「それはマリーシアの一種だから」
などと、引っ張ることを奨励する大
人こそ、子どもの足を「引っ張って
いる」ことをお忘れなく。
■池上さん解説■
何年生から引っ張っていいの?
少年の試合を観ていたら、CKの守備のときに相手の腕を引っ張るよう、ベンチが指示していました。よくないねという話をしたら、コーチはこう言いました。
「それじゃあ、何年生から教えたらいいんですか?」
実際にあった笑い話ですが、ジュニア時代にファウルをして守ることを体で覚えてしまうと、もうその子には進歩はありません。小さいときに覚えたことは、いいことも、悪いことも、しっかり身についてしまいます。だから、育成が重要なのです。大事なのは、ユニフォームを引っ張ることではなく、予測してポジショニングすることを教えることです。
欧州の子どもは、相手と接触して転んだ際に審判にファウルを取られなかったとしても、サッサと起き上がります。その態度は、まるで「時間がもったいないよ。サッサとサッカーしよう」と言わんばかりです。日本の子どものように、いちいち両手を上げてファウルを要求したりしません。
「でも、プロ選手がユニフォームを引っ張るから、子どもがやるんじゃないですか?まずはそこをどうにかしてください」
ベテランの指導者にそう言われたことがあります。言葉には出しませんでしたが、言いたかったです。
「その選手を育てたのは、みなさんですよ」
【商品名】サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典
【監修】池上正
【著者】島沢優子
A5判/240ページ
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