ジュニア年代では“何人制”でもいい。重要なのは選手たちが様々な経験をすること/ヴァンフォーレ甲府 西川陽介氏 編【短期連載】

2017年03月31日

インタビュー

「指導者は選手にとって心の支え」

――それには指導者にも“感度”が必要になりますね。選手が育つことは待つことでもあります。

「3月卒業のチームには典型的なストライカーがいました。そういうチームにはプラスもあるけど、頼ってしまうというマイナスの面もある。マイナスに働けば、魅力的なサッカーはできません。では、魅力的なサッカーって何なのか? それは“アイディアでどう相手を崩してゴールを入れるか”だと思います。

 対戦チームによってはボールを放り込まれることもたくさんありますが、相手に同調しないで自分たちを貫くことが大事です。ピッチにホワイトボードを置いておけば、選手たちがそれを使ってああだこうだと戦い方に関する話を自然発生的にやるのがいいチームなんだと思う。3月卒業のチームはそれをやっていて、『オレは必要ないな』と感じる時もありました。

 指導者は選手にとって心の支えであり、モチベーターしての役割も大きい。個人的な意見ですが、日本はもっと選手が主体になるとサッカー界全体が変わっていくのではないかと感じています。そこには最低条件があり、私たち指導者が学ぶことを怠ったり指導コンセプトが持たずにやったらそれは単に選手に責任を押し付けただけになります。選手に主体性を持たせることは指導者にとってパワーがいるし、成功よりも失敗のほうが多い。でも、その方が選手も指導者も絶対に成長していけるはずなんです」

――それはダノンネーションズカップの世界大会で感じたことですか?

「そうですね。選手の主体性と指導者のあり方と両面で気づいたことがありました。世界大会って国を背負っての勝負だから選手だけでなく、監督やコーチも戦っているんです。オランダでは、監督はボス。だから、監督のテンションが選手にそのまま伝播するんですね。オランダに限らず大会中は相手ベンチが大声で選手に指示しているから、私も選手にいつも以上に言葉を投げかけました。

 ただ、それが育成にとって本当に正しいことなのかはずっと悩み続けました。でも勝つことで選手が学べることもあるんです。だからオランダを始めとする対戦国の指導者が檄を飛ばす気持ちもわかるんです。でも、大事なのは選手が主体性を持つべき。未だに葛藤はずっとあります」

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