選手の起用方法を考える。少年サッカークラブは子どもたちに何を与えるところなのか?
2017年06月09日
コラム
選手が総入れ替えになるゆえの選手起用の難しさ
チーム全員が試合に臨めるチャンスがあることから連帯感もわいてチーム力も高まるが、その一方で、総入れ替え制ゆえの指導や選手起用の難しさもあると伊藤氏はこう教えてくれた。
「ただ、誰にでも出場機会があることで緊張感が緩むこともあります。何となく試合に出ているような表情でピッチに立っている子もいましたね。例えば第1ピリオドのうちに大量失点をしてしまうと次の選手たちは気持ちが入らず、チームの中がギクシャクしてしまうこともあるでしょう。また、最低でも16人のメンバーを揃えなければいけないので、チーム事情によっては、大会にエントリーするために下級生を合流させて対応するようになります。
選ばれた子どもからしたら喜ばしさがある反面、試合に出場するからには絶対に頑張らなければいけないとの思いがプレッシャーになりますから、もし出場した試合のレベルについていくことができなければ心が折れてしまうこともあるわけです。その子の伸びるタイミングは、これからいくらでもあるのというのに、背伸びをさせたことで、その前の段階でやる気を失ってしまうようなことにもつながりかねないわけです」(青森FC・伊藤豪氏)
北海道代表のエスピーダ旭川を指導する中川鉄平氏からも伊藤氏と同じような話しが聞けた。エスピーダ旭川は、前年度の『バーモントカップ第26回全日本少年フットサル大会』に初出場ながら準優勝に輝いたクラブだ。そのバーモントカップでは登録選手9名全員がすべての試合(決勝も含め7試合)に出場し、ゴレイロ(ゴールキーパー)も含めて全選手が得点を決めている。
「前年度のバーモントカップでは、登録している選手を2つのセットに分けることで全選手がピッチに立てるような考慮をしました。今年度のバーモントカップは、旭川市内の大会では登録した15人で3セットを組んで時間を決めてまわしていました。ですので、チビリンピックのように3ピリオド制で選手を総入れ替えにするのはいいことだと思いますが、出場機会があることによって頑張る選手もいますが、一方で別に頑張らなくても試合には出られるからと甘く考えてしまうデメリットもありますよね。
また、ひと学年に20人前後の子どもがいないと対応するのは難しくなってきます。うちのクラブでも、女子や5年生で技術やセンスに優れている選手を帯同させることはありますが、対戦相手の状態をみて明らかに体格などのフィジカル面で劣ると判断した時には、その試合には無理に出場させず、他の試合を経験させるようにしています」(エスピーダ旭川・中川氏)

選手の起用方法はルールに委ねるのではなく指導者が考えるべき
両氏の話しからは、選手総入れ替え制により、多くの子どもたちがやる気を引き出しているが、試合に出ることが当たり前だと感じてしまうと緊張感が緩んでくることも提起している。中川氏はこのように話しを続けてくれた。
「試合のことだけではありませんが、今の時代は何でも大人たちが先回りして、子どもたちが失敗しないように都合のよいセッティングをしている。子どもたちは不自由を知らないから打たれ弱いし、たくまししさが育っていないような感じがします」(エスピーダ旭川・中川氏)
そして、逆に試合に出場できる子どもの数が16人と多いことがネックになっているというのも皮肉な話しである。6年生が主体の大会に下級生を同行させるときに指導者が注意を払っているのが、子どもの状態とゲームの強度とのマッチングであることも伝わってくる。あえて下の学年の子どもを飛び級させてハイインテンシティの試合を体験させる指導もあるが、いずれにしろ指導者が各選手の状態を見極めたうえで判断するわけで、人数合わせのために仕方なく試合に出場させるのとでは訳が違ってくる。
さらに言うと、チビリンピックにしても、チーム構成と条件には、原則として「18名以下」と明記されている。決勝大会の出場チーム名簿を見ると、全10チームが18名の選手を登録している。選手総入れ替え制でも2名の控え(交代要員)選手はいるわけだ。選手登録を16名にできないのは、ジュニア年代であれば戦力としてではなく、事故・ケガなどで出場困難になる選手の発生を考慮してのことだろう。控え(交代要員)選手は試合のクオリティを保つためには欠かせない存在なのである。
ジュニア年代では、全国大会につながる試合やタイトルのかかった試合での出場メンバーの固定化が以前から問題視されているが、総入れ替えといえども、控えにまわる選手の起用方法だけはルールではなく指導者にかかっているわけだ。
そう考えると総入れ替え制の導入を推進するよりも、従来の8人制や11人制のルールの中に「選手は自由交代制とする」の一文が盛り込まれていた方が、指導者が選手一人ひとりの状況やチーム事情を鑑みながらフレキシブルに起用できる利点があるのではないだろうか。
指導者をコーチ(Coach)と呼ぶが、直訳すると馬車のことであり、転じて「乗っている人たちを目的地まで導く役割」を意味する。すなわち、それぞれの子どもに最適なゲームをセッティングし、目標に達することができるように導いてあげることは、まさに指導者の使命なのである。

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