選手の起用方法を考える。少年サッカークラブは子どもたちに何を与えるところなのか?
2017年06月09日
コラム勝利至上主義によるメンバーの固定。延々とベンチに座り続ける子どもたち。これは日本の少年サッカー界の大きな問題のひとつだ。日本サッカー界の課題として早急な改善が望まれるが、なかなかその気配は見えてこない。そもそも、なぜ子どもたちには出場機会を与えなければならないのか。ジュニア年代の指導者はこの問題とどう向き合わなければならないのか。改めて考えたい。
(取材・文●山本浩之 写真●佐藤博之、小林健志、ジュニサカ編集部)
選手の起用法と向き合う
ジュニア年代のサッカーは、子どもがサッカーを楽しみ、サッカーを好きになることが主眼にあり、子どもを育てる「育成」という側面を持つ。子どもたちが楽しみにしているのはゲーム(試合)であり、そこで成功や失敗を経験して成長していく。
だが、言うまでもなく、サッカーの試合は11人以下の競技者からなる2つのチームによって行われる。一度にピッチに立てるのは1チーム11人以下、少人数制では8人に減る。競技者以外は交代要員として登録されるか、あるいはベンチ外となる。ジュニア年代とて例外ではない。競技者の数よりチームの人数が多ければ、必ず控えのメンバーは存在するものだ。この子どもたちに試合を経験させるための起用方法については、指導者も頭を悩ませていることが多いのではないだろうか。
そんな選手の起用方法を考えると、思い浮かぶサッカー大会がチビリンピックである。正式名称は『JA全農杯チビリンピック小学生8人制サッカー大会』という。競技方法が独特で、3ピリオド制(プレー時間36分:12分×3ピリオド)で行われる。第1、第2ピリオドは選手を総入れ替えし、第3ピリオドのみ自由交代とするものだ。同じ選手の出場は最大でも2ピリオドまでに制限され全ピリオドには出場できない。この3ピリオド制であれば、1試合で最低でも16人が1ピリオド以上はピッチに立つことができるというわけだ。
2017年の今年は15回目となる全国決勝大会が神奈川県横浜市で開催され、全国9つの地区から予選を勝ち進んだ10チーム(関東は2チーム)が参加している。今回は、そのうちのいくつかのチームの指導者から話しを聞くことができた。実際に、多くの子どもたちがピッチに立てるチビリンピックに取り組んだからこそ感じた子どもたちの試合への出場機会のこと。そんなリアルな声をヒントに、今一度ジュニア年代の選手を育てる試合の起用方法を考えてみたい。
“選手総入れ替え制”の利点とは
チビリンピックの初日となった5月3日は日産フィールド小机が会場となった。横浜F・マリノスのトップチームが練習に使っている天然芝のピッチは管理が行き届き良好な状態が保たれている。小学生の子どもたちには気持ちのたかぶる試合環境である。2つのコートに分割されたフィールドでは4チームが試合に臨んでいて、それぞれのベンチに目をやると、選手たちは自分が出場するための準備に怠りがない。ウォーミングアップを始めている選手もいれば、戦況を見つめている選手もいる。どの選手も自分の出番を想定しながら集中して試合に取り組めている様子が伺えた。
今大会に東北代表として出場している青森FCも選手たちのモチベーションは高かった。3月には『ダノンネーションズカップ2017 in JAPAN』を経験し、すでに8月の『バーモントカップ第27回全日本少年フットサル大会』に青森県代表としての出場を決めている。OBには青森山田高校からジェフユナイテッド市原・千葉に今年加入した高橋壱晟選手がいる。監督の伊藤豪氏はチビリンピックに取り組んだチームの状態をこのように語る。
「3ピリオド制の選手総入れ替えのルールには、子どもたちの心を育てるという教育的な利点を感じました。1ピリオド目に失点をしてしまった場面でも、次に控えている8人が『あいつらのためにも!』と自分たちで取り返そうとする思いがわきやすいのでチーム力も上がります。今回の遠征に連れてきたメンバーは、サッカーの技術を重視したのではなくて、日頃の練習からチームのために頑張れる子たちです。
なかには普段の公式戦では控えに回るような選手もいましたが、その子はチビリンピックで負け試合を経験した後に、グッと表情が引き締まったんです。目つきが変わって、次の試合への意気込みを感じました。すごく頑張ってくれましたし、周りの選手も『あいつも頑張っているから、もっと自分も頑張らなくちゃ!』と触発されていました。本当に連れてきて良かったと嬉しく思いました」(青森FC・伊藤豪氏)
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