優秀な『ストライカー』の定義とは。日本の指導に足りない「勝負へのこだわり」
2017年06月27日
コラム
【抜群のキープ力を武器に日本代表でも欠かせない存在になりつつある大迫選手】
優秀なストライカーのメンタリティとは
――日本人ストライカーの中にもいい選手がいっぱいいます。城さんにいくつかタイプを挙げてもらってもいいですか?
まずは大迫選手です。体の使い方が抜群にうまいからボールがキープできて攻撃の起点になれます。自分の足下にしっかりボールを収め、そこから一瞬の反転力や体のキレでシュートに持ち込めるのが彼の凄さです。相手を少しだけずらしてゴールを狙えるうまさ、ヘディングのうまさも持っています。海外で経験を積み、体の使い方がさらに洗練されてシュートを打つことが格段にレベルアップしました。
――海外での経験は重要ですか?
日本でプレーしていると激しさの中でプレーすることは海外の半分以下です。海外リーグのパワーや激しさは日本で経験することはできません。海外の選手のパワーや当たりの激しさを利用する方法というか、体を使いながらのプレーの引き出しを増やせるのは間違いないと思います。ジュニアユースまでは日本人選手も技術の高さで海外のチームに対抗できますが、ユース以上になるとパワーや激しさの中で磨かれるスキルの差が顕著に現れます。
――そういう意味では、久保裕也選手は最近ぐんぐん実力を発揮しています。
久保選手はまずスピリットが素晴らしい。気持ちが強い上に相手をドリブルで抜けるし、ワンタッチで交わせて両足でシュートが打てるんです。何より大迫選手との違いはボールの受け方です。彼はパスをもらう時、一瞬のスピードやワンタッチコントロールでDFを出し抜いています。 最近はシュートまでどう持ち込もうかというイメージを持って相手と駆け引きしているので、その準備段階がすごく良くなりました。シュートを含めてビジョンがはっきりしているのでゴールをたくさん決められるようになったのだと見ています。

【欧州のリーグでもゴールを量産する久保選手。城氏いわく「スピリットが素晴らしい」】
――他にストライカーはいますか?
鹿島の鈴木優磨選手も期待しています。スルーパスに反応できる裏への動き“プルアウェイ”や、敵と敵との間でボールを受けるのが非常にうまいです。クロスに対する入り方が良く、ヘディングでも足でもゴールが取れます。大迫や久保とは異なり、攻撃の起点になるというよりフィニッシュの部分で勝負するタイプです。今後ボールを足下に収めるスキルを高めたら、そこか らボールを展開してさらにもう一度自分の得意なパターンに持ち込めるし、今以上に点が取れるようになるはずです。
――興梠慎三選手はまた違うタイプかと。
興梠選手は周りを生かしながら自分も生きるタイプです。決して身体的に秀でた 長所があるわけではなく、連携の中でゴールが取れる選手です。ポストプレーやパス ワークに入るタイミングが絶妙にいい。そこには確かな足下の技術が必要ですが、日本人選手の中ではピカイチです。
その技術を生かし、中盤とのパスワークに溶け込みつつフィニッシュのイメージを作り上げています。プルアウェイでボールを受けたり、ワンタッチでDFの裏に抜け出したり…状 況に応じて味方に合わせたり、自分を出したりする能力が高いから 30歳を超えた今もコンスタントに点を取っているんです。
――お話を聞いていると、現代サッカーでは足下にボールを収める技術は大切です。
現代サッカーはコンパクトフィールドになって20〜30mの中に20人の選手がひしめき、ハイプレッシャーでもボールを収め なければなりません。どの戦術も幅を使いますが、一度中にボールを入れないとサイドだけで勝負するのは難しい。
大迫選手や 岡崎選手のように足下にボールを収められる技術を身につけさせ、さらに特徴を持った選手を育てないと世界で通用できるスト ライカーは出てこないかなと思います。
――岡崎慎司選手はどうでしょうか?
彼はハイプレッシャーの中で技術を発揮できる選手です。相手からガッと寄せら れた時のボールキープなどの技術は日本人FWの中では群を抜いています。実は、これが重要なことなんです。サッカーは、特に現代サッカーにおけるFWはハイプレッシャーにさらされています。
岡崎選手は欧州で『どうしたら?』と常に考えながら体も強くなり体の使い方を覚えました。何よりもゴールへの執着心が強い。ここがプレミアでも通用するFWになれた一番の理由です。本人にも直接言いますが、どんなボールにも飛び込める勇気はすごいです。
――ストライカーには気持ちの強さが必要不可欠なんですね。
久保選手のスピリットを褒めましたがFWは他のポジションよりも結果の世界で生きています。最近は勝ち負けにこだわらない指導をうたう方もたくさんいますが、悔しいと思うから『なぜ負けたか?』を考えるし、さらに練習をするのだと思います。
ラモスさんやドゥンガ、ストイコビッチなどはどんなに細かい勝負にもこだわっていました。JFAの意向には反する意見かもしれませんが、勝負にこだわっても楽しむことはできます。小さい頃からそこにこだわる環境を作るのがストライカー育成には 必要だと思います。その中では形を教える のではなく、指導はサポートすること。何か行き詰まった時にヒントを与えたり、子もたちがアイディアを出すための環境を作ってあげることが大事なんです。決して答えを教えるのではありません。
――答えを示してしまうのは子どもたちの可能性を潰しているのと同義語です。
S級ライセンスを取得する前に、韓国のFCソウルとFC仁川に勉強に行きましたが、育成では日本と同じ悩みを抱えていました。ユースの選手に『こういう場合はこうだろ』と言って指導者のイメージする答えを例として示しました。でも、試合では違う状況なのに同じプレーをしようとして失敗をするんです。
監督は『何をやっているんだ』と言うけど、選手は『監督が言ったからだ』と。つまり、答えを教えられた選手は世界中そうなってしまうのが今の時代なのです。その指導者と話をしましたが、最近の選手は一つ以上のことはやらないし発想しないそうです。これは日本にも当てはまることではないでしょうか。

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【発行】株式会社カンゼン
2017年6月6日発売
A5判/並製/176ページ
◆特集1 ジュニア期(U12)だからできるカラダづくり
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◆【付録DVD】
FC東京 中島翔哉選手のドリブルテクニック術 他
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