1人のコーチで「2、3人を見ている」。“監督の概念がない”ビジャレアルの育成方針

2017年06月30日

コラム

VILLARREAL, SPAIN - APRIL 22:  A general view of the Estadio de la Ceramica during the La Liga match between Villarreal CF and CD Leganes at Estadio de la Ceramica on April 22, 2017 in Villarreal, Spain.  (Photo by fotopress/Getty Images)
【ビジャレアルのホームスタジアム、エスタディオ・デ・ラ・セラミカ(2017年1月に名称変更)は約25000人収容】

「彼らのとった選択に対し、どれだけいい方向に導けるか」

 育成システムが変わったことで、上述の通りビジャレアルの練習方法はゲーム形式が中心となった。4対4や5対5といったゲーム形式が多く、さらに人数を増やす場合は他のカテゴリーの選手を呼んだり、コーチが参加したりすることもあるという。そんなトレーニングのなかで、個々の力を最大限に伸ばすためにチームとして取り入れているものがある。それは映像を使った分析だ。

「試合で自分の力を出すには、本当にいろいろな“経験”をすることが大切です。だからこそ、選手たちには練習のなかで“経験”を積ませないといけません。そこで私たちはゲーム形式の練習を行った後に自分で映像を見て、分析をさせています。そうすることで同じシュチエーションになったときに、自分で答えをすぐに見つけやすくなるんです。それと同時に、選手とスタッフの対話がとても重要だと思っているので、コーチと選手が意見を交換する上でも(映像を使った分析は)必要なことだと思っています」(ホセ・マタイクスコーチ)

 選手たちとの対話の重要性は万国共通だ。ビジャレアルのコーチたちにも対話のなかで気をつけているアプローチの仕方があるという。

ビジャレアル001

「選手たちにアプローチするときに、やってはいけないのは選手たちの『成長を止めてしまう』ことです。

 もちろん人間なのでプレーのなかで間違ってしまうことはあるでしょう。ただ、問題はそこがどうだったかという話よりも、選手がとった選択肢に対して僕たちが何を言えるかだと思っています。それを第一に考えることが必要です。

 例えば、感情的に怒るとしても監督がしっかりと見ていたかは大事な要素で、僕らが間違っていれば、正しいことをしたのに子どもたちは修正をしないといけなくなります。そういうことを僕たちはしてはいけません。

 彼らのとった選択に対して、私たちがどれだけいい方向に導いてあげられるか。そこを意識してやっていく必要があります」。

 スペイン・バレンシアにあるホームタウンの人口は約5万人。スペインでも中小クラブにあたるビジャレアルは、レアル・マドリーやバルセロナといったビッグクラブとは違い、いろいろな場所から選手が集まってくるわけではない。

 だからこそ、「どんどん良い選手を地元から輩出していかないといけない」とダビ・ペレスコーチは説いている。ビジャレアルが選手たちに求める基準。その育成理念を教えてくれた。

「私たちは基本的にはポリバレントな選手を育てたいと思っています。そして自立心を持ち、インテリジェンスを備えた選手ですね。どんな状況でも解決ができる選手を育てていこうと思っています。試合を理解すること、この状況では何をして何をしないといけないのか。そういう判断ができるような選手を我々は育てようとしています」

(関連リンク)
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