全少はあくまで通過点。「子どもたちをみんなで育てる」北海道コンサドーレ札幌が地域と協力して行う育成の取り組み/全少決勝大会レポート

2017年12月30日

コラム

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あらためて全体で考えるべきジュニアのサッカー環境

「考える力」はジュニア年代の普遍のテーマだ。

 今大会を通じて再認識したのだが、この時期に8人制サッカーの全国大会を開催する意義とは何なのだろうか? 子どもたちが目の前で繰り広げるサッカーを見て、日本サッカー協会がメリットとして取り上げる「ボールタッチ数や判断する機会の増加につながっているのか」をもっと一人ひとりが考えるべきである。

 3月のダノンネーションズカップ、8月の5人制フットサルのバーモントカップ、そして、この全日本少年サッカー大会と取材したが、カテゴリーや開催時期がマッチしているかと問われたら疑問だ。

 例えば、バーモントカップは4年生が対象でもいいのではないか。なぜなら体の大きさとピッチの広さがこの年代とは合っていないがゆえに、協会が言う狙いどおりのプレーは展開されていない。

 全日本少年サッカー大会についても同じことが言える。

 ボールが中盤を通ることなくDFラインからセンターフォワードにロングボールが蹴られ、本来は判断機会を増やすために8人制サッカーに切り替えたはずなのに展開されているサッカーはそうではない。よりスピードがある、パワーがあるフィジカルに長けた選手を中心に据え、勝ち上がるための8人制サッカー専用のサッカーがなされている。

 このことに浅沼監督も悩んでいた。

「私自身は今大会(全日本少年サッカー大会)に参加したのは7回目です。正直、8人制が考えることを難しくさせている。例えば、11人制だとスペースがないので、そこでどうするかを考えることが求められます。8人制になってから、その部分を発揮するのが環境としてどんどん難しくなっています。スペースがあるとフィジカル能力の高い子、スピードやパワーのある選手が目立つし、結果として何も考えなくてもプレーできてしまう状況に陥ります。私は、そういう流れを生んでいるのが8人制だと感じています。

 日本サッカー協会は、8人制サッカーを導入することで一人の選手のボールタッチ数が増えて判断する機会が増える。そういう考えのもと8人制に切り替え、現場に求めたと思います。しかし、実際に選手たちがそのようなプレーをしているかと問われたら、ほとんどないです。ということは、このオーガナイズが狙いと違う方向に進んでいるのではないかなと思います。

 11人制サッカーは『フィジカルが通用しない分、何をすべきか』と考えさせられる局面が多いです。私も指導者を16年やっていますが、昔の11人制の時代は確かに身体能力の高い子をそろえ、ボコボコとボールを蹴っていました。でも、少しずつ指導者の育成が浸透していくなかで、しっかりとボールを動かしながらゴールを狙うサッカーが少しずつできてきていました。

 ただ、そのタイミングで8人制に切り替わり、個の育成をテーマにボールタッチ数や判断の増加という狙いがあったはずでしたが、そこで何が起こったかといえば、より身体能力の高い子が目立つ環境を作り出してしまいました」

 8人制サッカーがもたらすメリットがあるのも事実だが、特に6年生のプレー環境は再考すべきだ。リーグ戦と単発のトーナメント戦を考えた年間スケジュールは選手たちの心身の負担という意味では、日本サッカー協会主導で改善すべき問題である。私もジュニア年代の地域クラブの取材を続けているが、本当に指導者と保護者のみなさんは子どものために努力している。

 そして、浅沼監督はこんなことも教えてくれた。

「札幌では、6年制の秋に11人制の大会を開いています。これは地域のクラブの方々と話し合い、次のジュニアユースを見据えて11人制サッカーの大会を開くことで、子どもたちに次のステップの入り口を作ってあげようと始めたものです。みんなが11人制への移行期間という捉え方で8人制の指導をすればいいのですが、実際は8人制用のサッカーをしてしまっています。現状は、11人制にうまくつながっていません。

 私たち指導者がみんなそういう考えが持てたらいいですが、難しいことの方がいっぱいあります。そうすると、日本サッカー協会を中心にそういう環境を作っていかないと、プレーする子どもが戸惑ってしまいます。北海道は広いですから、私たちが中心に道内を変えるのは難しいです。そこは日本サッカー協会が中心になってトップダウンが行わなければ変えられない。私たちができるのは活動拠点である札幌との協力でできる範囲だけですから」

 8人制サッカーは横パスを奪われると、一気にカウンターを食らってしまうという特徴がある。だから中盤をボールが通る機会だけを比較しても、6年生の間でも4月と12月ではまったく違う。育成は様々な環境が複雑に絡む。だから、地域の指導者だけが働きかけても変えられない環境があるが、札幌が全体で取り組む育成の環境づくりはすばらしい。

 小学生最後のイベントとしての大会なのか、子どもたちの成長としての大会なのか、今一度日本サッカー協会に問いたいところである。

005全少総括


 

【試合結果】第41回全日本少年サッカー大会 特設ページ【取材日記】

 


 

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