技術だけを切り取った練習は成立しない。ドリブルの本質を理解するために必要な戦術的意図
2018年01月25日
コラム「フィジカル」「技術」「戦術」の要素を2つ以上組み合わせる
―――木村さんの言われているトレーニングがスペインやドイツなどヨーロッパでは一般的だと思います。ただ日本では1対1の状況を作る概念がなく、そこが抜けているから2人の選手を向かい合わせ、いきなり1対1をやらせる指導者が多いです。
木村 スペインでは技術だけを切り取った練習は成立しません。ボールを使って「フィジカル」「技術」「戦術」の要素を2つ以上は組み合わせることが普通ですから。
・フィジカル&戦術
・フィジカル&技術
・戦術&技術
・フィジカル&戦術&技術
これらの組み合わせでボールを使った練習メニューを考えますし、1日のプランを立てます。私は1999年にこっちでライセンスを取得しましたが、その頃もすでに日本のドリブル練習のようなエクササイズ的な練習は見かけなくなりました。素走りするようなウォーミングアップですらそうです。きっと、スペインにとってはボールを使ったドリル的な練習は「ドリブルが向上するものではない。負荷をかけたコンディションを上げるだけの練習だ」とみなしているからではないでしょうか。
―――ライセンスを取得するのも時間を要すると聞きました。日本でも少しずつ整備がされているようですが、きっとクオリティがスペインとは違うと思います。
木村 私が取得した頃は1998年10月に開講して翌年の6月に卒業でした。2月ぐらいまでは座学、5月までは実技、6月に試験という流れです。授業は1日2コマが週2回で、1コマが1時間半でした。受講料は日本円にすると当時9万円ぐらいでしたから、現在は12万円ほどではないかと。当時からすでにライセンスがない指導者が監督を務めることはほとんどなかったと思います。コーチはいたと思いますが。今はライセンスがないと指導できません。それでもこの地域でいえば、セジージャやベティスといったプロクラブの指導者は少しは給料をもらっているでしょうが、他はほぼ無償です。もちろんスクールは会費があるので給料はありますが、微々たるものです。そのような事情でもサッカーを指導することはステイタスだからみんな真剣です。競争が激しいから勉強熱心ですし、意欲も高い。U8からリーグ戦があり、毎週試合があるから選手も指導者も、保護者を含めてチームは全体で戦っています。監督も結果が出なければクビになりますから。
―――まだ日本はそこまでの環境に至っていませんし、そうなるかもわかりません。お話を聞いていると、今回の「ドリブル」というテーマも日本だから必要な企画です。
木村 1試合で「レガテ」の状況が何度あるのか。メッシやネイマールなどの選手は別ですが、それ以外の選手は数回しか機会は訪れないでしょう。レガテはプレーの中のほんの一部にしか過ぎません。1対1が前提だし、現代サッカーではその状況を作ること自体が大変な作業です。サッカーではレガテをしてはいけない状況があるし、その方がはるかに多いのです。監督はチームをどう動かすか、子どもをどう動かすかを考えて指導します。毎週の試合の中でチームと子どもを育てるから、練習がゲーム形式で敵と味方が存在する形になるのは自然のことです。レガテよりも「マークを外す」「できたスペースを利用する」などのトレーニングの方が大事ですから。サッカーはチームスポーツなのです。もし練習メニューを組むにしても数的優位でレガテするのはナンセンスだし、数的不利になるのもありえません。その前に1対1の状況を作るトレーニングをしておかなければ「レガテ」は生きないと思います。
―――では最後に、トレーニングを一つ提示して、その解説をお願いできますか?
木村 1対1の状況を作るために右サイドで3対1のパス交換をさせます(トレーニング2参照)。それは守備を寄せるためです。そして、5本パスが通ったらサイドチェンジをして左サイドに張っている選手にパスを送ります。パス回しの背後でカバーしていたDFはボールが出た段階でレガテする選手に対応します。その距離は10mほどです。その程度なら最初にカバーに入っている位置から左サイドも見られます。サイドチェンジが出るまでは左サイドの選手は警戒段階だからパス回しのカバーの比重が重い。そこは守備戦術として指導すべきところです。中に絞ってGKを背負う形でカバーに入ります。レガテする選手は1対1の状況です。体は半身の状態でワンタッチコントロールをして前進することがポイントです。当然GKには最後のDFが抜かれたり飛び出すよう指示します。戦術として守備は絞る、攻撃は広く使うが原則だから、このトレーニングはゴール前の状況でないと成立しないメニューです。
■トレーニング2:3対1のパス交換からの「レガテ」トレーニング
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