「どうサッカーを捉え、指導に落とし込むか」。湘南ベルマーレが体現する“ボールを奪う意識”【短期連載】
2018年03月07日
コラム昨年、サッカーサービス社が『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2017』の分析講習会を行った。その中では、日本の指導に対する課題がいくつも挙げられた。実際に大会を振り返っても、FCバルセロナを相手に、日本のチームは何もやれなかった印象しかない。子どもたちがFCバルセロナと戦い、普段どおりにプレーしていたかと問われたら「Yes」とは言えない。だが、自分たちのスタイルをそのままぶつけて真っ向勝負を挑み、「日本のチームもこれだけやれるんだ」という力を見せることができた唯一のチームがあった。それは「湘南ベルマーレスクール選抜」だ。そこで、湘南ベルマーレのアカデミーダイレクターを務める浮嶋敏氏に、同クラブの育成について話を伺った。第1回目のテーマは「どうサッカーを捉え、指導に落とし込んでいるのか」。全4回の短期連載としてお届けするので、Jクラブの育成に関する取り組みをぜひご一読ください。
取材・文●木之下潤 写真●ジュニサカ編集部、工藤明日香
湘南ベルマーレのサッカーの特徴と大会戦績をチェック!
まず、事前情報として『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2017』を戦った湘南ベルマーレ(以下、湘南)の戦績とサッカーについて説明しておきたい。また参考のため、FCバルセロナの戦績についても紹介しておく。
【グループリーグ(湘南)】
※チーム名の後は(勝点/得点/失点/得失点差)
1位 湘南ベルマーレスクール選抜 9/7/1/6
2位 東京都U-12 6/14/1/13
3位 バディサッカークラブ 3/5/11/6
4位 ダニーデンテクニカル(ニュージーランド) 0/1/14/-13
<第1節>湘南ベルマーレスクール選抜 4-0 バディサッカークラブ
<第2節>湘南ベルマーレスクール選抜 2ー1 ダニーデンテクニカル
<第3節>湘南ベルマーレスクール選抜 1ー0 東京都U-12
【グループリーグ(FCバルセロナ)】
※チーム名の後は(勝点/得点/失点/得失点差)
1位 FCバルセロナ(スペイン) 9/12/1/11
2位 サガン鳥栖U-12 3/6/5/1
3位 清水エスパルスU-12 3/4/7/-3
4位 ワールドチャレンジ街クラブ選抜 3/2/9/-7
<第1節>FCバルセロナ 5-1 清水エスパルスU-12
<第2節>FCバルセロナ 2-0 サガン鳥栖U-12
<第3節>FCバルセロナ 5-0 ワールドチャレンジ街クラブ選抜
【決勝トーナメント】
<準々決勝>
FCバルセロナ 2-0 湘南ベルマーレスクール選抜
<準決勝>
FCバルセロナ 5-0 名古屋グランパス
<決勝>
FCバルセロナ 2ー1 東京都U-12
湘南は得点7の失点1でグループリーグを全勝して1位で通過し、決勝トーナメントに進んだ。グループリーグを見ていても、個々の足下のスキルがしっかりしていてボールを持てば一人ひとりがルックアップをし、状況に応じた判断を伴うプレーをしていた。きちんとDFラインからボールをつなぎながらフリーの味方にパスを回し、スペースをうまく使ったサッカーができていた。
何より他チームに勝っていたものは「ボールを奪う」意識の高さと、相手に隙があれば「ボールを前へと運べる」判断とプレーができていたことだ。実は、この点がFCバルセロナとガチンコ勝負ができた要因だろう。他の日本のチームは守ることはできるが、ボールを奪うことができない。その点に関係すること(後々のインタビューでふれている)だが、奪ったボールを前進させられるのに横パスやバックパス、ひどい場合は大きく前に蹴り出してしまうことがたくさんあった。
FCバルセロナの監督を務めたダビド・サンチェス・ドメネに取材したときも日本人選手の課題として同じことを言っていた。
「日本人選手の良いところは選手にスピードがあること、そして、ディフェンスのオーガナイズがしっかりできていることだと思います。
一方、ボールを扱う技術の質は非常に高いものがあるのですが、試合の中でボールを前進させる判断の部分で、前に進めることができるであろう状況においてもボールを後ろに下げたりしていました。日本人選手たちは前に進められる状況の理解の範囲が狭いように感じます。明らかに前に行ける状況でしか前進しないというか、積極的になれないようです。
あとはフィフティ・フィフティのボール、ぶつかって戦わなければいけない場面で少し怯えるというか、そこを強く出られないというところがあったように思います」
この分析講習会は「ボランチの動き」がテーマだったのだが、分析を担当したサッカーサービス社のスペイン人指導者アルベルト・ペレスは講習会の冒頭にこんなことを述べた。
「今回、守備については映像があまりなかった。それは日本チームがバルサに対して攻める時間が短く、分析の対象としてボランチが守備をしている場面を切り出すのが難しかった」
そして、バルサの守備に関する映像で多く登場したのが「湘南ベルマーレスクール選抜」との試合だった。スペイン人指導者の目から見ても、サッカーをプレーする上での基礎ができていたと映ったのだろう。
そこを含め、湘南ベルマーレのアカデミーダイレクターを務める浮嶋敏氏に話を聞いた。
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