東京Vの知将が語る日本人選手の特徴。スペイン人選手よりも優れている点とは?
2018年05月13日
インタビュー2017シーズンから東京ヴェルディで指揮を執るミゲル・アンヘル・ロティーナ。昨シーズンはクラブをJ1昇格プレーオフに導くなど、着実な進歩を証明した。豊富な指導経験を有する指揮官が語る日本がスペインよりも優れている点とは。
取材・文●小澤一郎 写真●Getty Images
常に「相手を見て自分で判断しなさい」と伝えています
――あなたの場合、東京ヴェルディでどのようにして選手のリスペクトを勝ち得たのですか?
一般的に選手が監督をリスペクトする上で一番効果的な方法は監督が指導した結果、選手が向上し、それを選手が実感することです。選手というのは自分やチームを向上してくれる監督を好みます。もちろん、今まで指導してもらっていなかったこと、新たな学びを選手に与えることも大切です。それから結果とは別に、サッカーをプレーさせてくれる監督が一般的には選手からリスペクトされます。
――日本では監督が選手に何かを要求すると、選手は監督の要求に応えようとそれだけに縛られる傾向にあります。そこはどうマネージメントしていますか?
このテーマについては日本に来る前に、日本での指揮経験があるレシャック、アスカルゴルタから聞いていました。彼らも日本で指導する上での問題の一つだと話していました。
スペインでは逆のことが起こります。私が選手に「こういうプレーをしなさい」と言ってもピッチ上で選手が別のオプションを見つけ出せば私が指示した以外のプレーをします。日本では私が「このセットプレーをするぞ」と準備すると試合のシチュエーションにかかわらず私が言ったことを実践しようとします。
ですので、私は常に選手たちに「しっかりと試合のシチュエーション、相手を見て自分で判断しなさい」と伝えています。サッカーにおいて選手がイニシアチブを持ってプレーすることが何より重要です。
だから、私はトレーニングにおいて一つの解決策を選手に与えるのではなく、3つくらいの戦術バリエーションをシミュレートできる状況を提示し、選手が自分で各状況における最適解を選べるよう指導しています。それが特に日本で監督として働く上では鍵になると考えています。それでもまだ選手のイニシアチブという面では物足りなさを感じています。
――選手が各シチュエーションでイニシアチブを持ってプレーを選択できるようになるためにも、育成年代からの戦術指導が重要だと考えますか?
育成年代からのトレーニングが問題なのかどうかはわかりません。なぜなら、おそらく日本人の気質や文化といったもっと大きなことが影響していると思うからです。スペインでは全ての価値観の中でも個人やイニシアチブというものに重きが置かれますので、小さな子どもであっても自分が選んで何か行動を起こした時には褒められます。特に他の子どもと異なる行動を自分の子どもがした時に親は喜びます。逆に日本ではそういうものにそこまで価値を置いていないように見えますし、それはサッカーにも違いとして出てきます。
――そういう意味で、日本での指揮において選手から表現を引き出すことに苦労していると想像します。
ピッチ内外であまり話をしない選手がいることも事実です。コミュニケーションはサッカーにおいて重要なテーマですし、選手にはトレーニングから表現していくことを求めています。まずは選手がピッチ上で話をする習慣を植え付け、その次のステップとしていつ、どんな話をするのかを指導します。
ただ、日本はスペインのように肌と肌の直接的な触れ合いが少ない文化ですので、言葉を通じたコミュニケーションとは別のノンバーバル(非言語)・コミュニケーション についてはスペインとは違ったやり方を採用する必要があります。
ただ、今のところサッカーにおいてはそれほど大きく変える必要もないと感じています。私が日本語を話せないので、例えば試合前に選手を送り出す時に先発選手一人ひとりの胸や背中を叩く、抱擁するといったノンバーバル・コミュニケーションをとることは、ここ日本の選手にも受け入れられているように感じます。
カテゴリ別新着記事
ニュース
フットボール最新ニュース
-
近江高校の躍進を支えた7つの班。「こんなに細かく仕事がある」部員も驚くその内容2024.04.24
-
「三笘薫ガンバレ」状態。なぜサッカー日本代表は個を活かせないのか?2024.04.24
-
【遠藤航・分析コラム】リバプールは何が変わったか。遠藤を輝かせる得意の形2024.04.24
-
リバプールがプレミア制覇に一歩リード?「タイトル争いは間違いなく波乱万丈」2024.04.24
-
前回王者マンC、絶対的司令塔の今季CL初出場・初ゴールで勝利。レアルも先勝2024.04.24
大会情報
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 大阪大会】大会結果2025.03.07
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】フォトギャラリー2025.03.03
-
【卒業記念サッカー大会第18回MUFGカップ 東京大会】F.Cボノスが逆転勝利で優勝を果たす!<決勝レポート>2025.03.01
-
【卒業記念サッカー大会 第18回MUFGカップ 愛知大会】大会結果2025.02.25
お知らせ
人気記事ランキング
- 『JFAフットボールフューチャープログラム トレセン研修会U-12』2017年度の参加メンバー768名を発表【変更あり】
- ポジションが変わらない息子
- 山口育成担当技術委員長に聞く! リーグ戦の推進は四種年代のサッカーをどう変えるか?
- 【高円宮杯第26回全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会】決勝レポート「FC東京U-15深川が逆転で日本一、6年ぶり2度目の優勝」
- 【ジュニアユース 体験練習会】VERDY S.S. AJUNT(東京都)
- 柏レイソルが後半の逆転劇で2年ぶりに全国行きの切符を獲得!!/第41回全日本少年サッカー大会 千葉県大会
- 反復練習に時間を費やす必要はない。 戦術理解を養う「止める・蹴る」の指導法とは
- 夕食は18時が理想的。それができない場合は? 「睡眠の質」を高める栄養素
- 「JFAエリートプログラムU-14日韓交流戦」参加メンバー発表!
- 子どもの”強い心”を育むために親が「できること」「してはいけないこと」