なぜ「レギュラー」と「控え」ができるのか? ”子どもたちの幸せを生む”育成環境を考える【5月特集】
2018年05月30日
コラムサッカーの育成に適切なヒエラルキーを持ち込むこと
――確かに日本のトップリーグであるJがリーグ戦で実力を競い合っているのに、育成年代がリーグ戦を行っていないのは理解に苦しみます。本当の意味で『育成』に力を入れたいのであれば、U-10あたりからトップと同じ環境下でサッカーをプレーすべきです。U-12でもリーグ戦が導入された形にはなっていますが、全日本少年サッカー大会に紐付ける形で歪なリーグ戦が全国各地で開催されています。私も町クラブに携わっていますが、『何のためのリーグ戦なのか』については疑問を投げかけています。そもそも、なぜ3年前にU-11でリーグ戦を広めようとしたのですか?
幸野「木之下さんのおっしゃる通り、現在U-12に導入されているリーグ戦は育成という観点からは不完全なものになっています。私たちは一つ下の世代で試合環境が整っていないことに目を向け、世界的に実施されているリーグ戦を導入することで一つのモデルを作り、サッカーに関わる全国のみなさんに見て欲しかったのです。そこで関東を中心に、まずは都県のトップ10に呼びかけてスケジュールを合わせて2回対戦する方式でリーグ戦を実現化しました」
――なるほど。U-11はエアポケットだったわけですね。
幸野「ええ。JFAも手が回っていませんでしたし、何よりリーグ戦を根付かせたかった。最初は16チームでブロックを組めたらよかったのですが、さすがにハードルが高くてプレミアリーグに加入するチームも限りがありました。どうしても市町村大会を含めて地域の大会が多く、クラブにとってはそちらが公式戦ですから。だから、現場の中では10チームで18試合をホーム&アウェイで戦い、4〜5カ月の期間で実施するのが限界でした。それ以上は公式戦に影響を与えることになるので、運営サイドとしても何も言えません。
でも、まだ結論は出ていませんが、4シーズン目に入って大分、熊本、愛知、大阪が加わり、2部まで含めると19都県25リーグにまで拡大しました。参加しているクラブの方々も『プレミアリーグの経験が一番の成長になっている』と実感されていますし、それが私たちの本音です。現在は1ブロック10チームなので18試合を経験しますが、毎週同じレベルの相手と1試合に集中した環境下で『M-T-M』を繰り返しているので選手たちが大きく成長しています。
理由は明らからです。それは力が拮抗した相手と緊迫した試合を行っているからです。うちのリーグ戦では5点差以上の点差はつきません。昨年、千葉県で行われたU-12前期リーグ戦の全1215試合を調べたのですが、30%以上が5点差以上ついているんです。
なぜ、調べたのか?
それは仮説を立てたんです。おそらく全国で行なわれているトーナメントは上中下と力差によってブロックごとにその上中下のチームを振り分けて決めていると思います。そうすると、千葉県で約30%が5点差以上ついていれば、全国でもそうではないか、と。
実際に全国で行なわれているトーナメントを無作為に10個ほど調べてみたのですが、大体3試合に1試合が5点差以上ついていたんです。つまり、全国で週末に開かれている試合の3割は選手たちの成長にあまりつながっていないことになるんです。なぜなら力が拮抗した試合を経験していないから。
そういうことを続けていたら強いか弱いか、上手か下手かでだけでチームや選手が評価されることにもなります。そもそも試合に出場していない選手たちがいるから、公式戦がサッカーを好きになる、成長できる場所にならないのです。レベルに応じたリーグ戦を行えば、どの子にもサッカーをプレーする場が作れます。
私はヒエラルキーを適切に作ることこそ、子どもたちの幸せにつながると考えています。うちの子どもが小さい頃に「◯◯が砂遊びをしていて、一生懸命にサッカーをしてくれない」と言ってきました。私もそのサッカー指導に関わっていたので、その子に「お砂遊びは楽しいよね?」と聞くと「そうだよ。サッカーより楽しいよ」と答えました。
彼ら二人は全く悪くなくて、私は二人を一緒にサッカーさせている環境が悪いのだと感じるのです。プロを目指したい子もいれば、サッカーを楽しみたい子もいるし、友達と一緒にいたいだけの子もいる。子どもによって目的は様々です。同じ志の子どもが一緒にサッカーをできれば、それが一番の幸せにつながるはずなんです。
ヒエラルキーというと上手か下手かだけで判断されがちですが、そうではありません。レベル、志、チャレンジ精神、楽しむ、いろいろある中で選手が選べばいいだけだし、そこがダメだったまた違うところに行けばいいのです。そういう環境づくりが世界中で行なわれているのがリーグ戦の意味なんです」
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