チームをどうオーガナイズするのか。指導者が考えるべき「環境設定」/指導者座談会3【9月特集】

2018年09月26日

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指導者と選手の間で戦術的なやり取りができるようになるには?

木之下「私はある町クラブと4月から契約し、指導者養成というところにアプローチしています。毎月、全体ミーティングを行ってサッカーの知識を得てもらいながらファシリテーターとして『クラブとしてどういうサッカーをしていこうか』という部分からクラブに見合った現実的な構築をさせてもらっています。

 現状でいうと、指導者のトレーニングもピッチの三つのゾーンを認識し、例えばゾーン1のところからどういうプレーをしていけるように子どもに指導していくかを共に考えながらトレーニングを構築している段階です。もちろん今いる御三方のクラブのようにレベルの高い選手がいるわけではありません。

 ただ、半年間経過した現在は判断の伴ったプレーが少しずつ見られるようになりました。まず、ボールから目をそらさないように体の向きを当たり前に作れるようなところから、足下にボールを置いたその先のプレーイメージが見られるような状況はちょっとずつ整ってきました。

 常に実行できるわけではありませんが、『このエリアでは』とか、『このゾーンでは』とか、地域の町クラブであってもクラブとしてコンセプトを明確に打ち出して『こんな選択があるよね』『うちのサッカーではこのプレーがいいんだ』ということを丁寧に伝えながら指導すれば、少しずつ形を成していけるようになります。そのことはこの半年の経験からもはっきりと言えることです」

南里「少年団であっても、そういうことはできますよね。結局、これまでの日本はプレーモデルがないまま指導者の感覚だけでプレーをやらせていました。でも、やらせておいて『それは違うだろ』と平気で言ってきた現状もあったわけです。サッカーはエリアごとの目的と原則があって初めて選手は判断することができる。だから、選択と実行があるわけです。そういうことがあまりにも整理されない状態で時間だけが進んできたのが現状です。

 オランダの白井さんの分析からの落とし込みなんかは、サッカーにおいて絶対に必要不可欠なものです。それによってミスした時にその原因が実行の部分だったのか、選択の部分だったのかを知ることができるわけです。それを子どもたちにしっかりと問いかけられるから、彼らも明確に自分のミスを理解できて、指導者もそれを共有できるのです。

『うちはそんなの関係ないんだ』と言っている限りは、その指導者に教えられている子どもたちもチャレンジしたけど、なぜミスしたのかがわからないままです。子どもたちからすると、コーチの頭は覗けないし、どうしていいかがわからない…これが最悪のパターンですよね。

 私たちが運営する『U-11プレミアリーグ』には、サッカーへのアプローチを明確にしたチームが集まってリーグ戦を行っています。子どもたちはミスがあってもそれを修正する手応えがあれば、次につながると思います。うちの練習は75分しかありません。

 だから、U-12ではトレーニング前に必ず『今日はこういうトレーニングをする』というのを貼っておきます。それを子どもたちは先に確認して、何をするのかを予測するわけです。これは習慣ですから『今日はこういうメニューだね』ということを繰り返すうちに頭の準備ができるようになります。そのためにはサッカーの知識がないと、75分のトレーニングを成り立たせることができません。

 フィードバックは映像分析をして見せていますし、それをトレーニングの中で落とし込んでいます。私たちは、子どもたちがしっかり理解できるようなアプローチをしています。何が目的で、何をテーマにしているのか。結局、それがないとプレー中に判断ができません。ちゃんと理解して、その精度を高めるためにはサッカーの知識がないと表現できないので、アーセナルはそれをできる取り組みをしています。

 私は練習を効率よくやりたい部分もあるから。その日のうちにトレーニングの映像を保護者のみなさんにも流せるようにしているし、選手が自分の映像も見られるようなシステム作りは行っています」

木之下「私は、フィールドを横六つ縦五つにマスわけしたオリジナルの戦術ボードを手作りしてクラブに渡しました。それをもとに『今日はどのエリア、どんなテーマで練習をするのか』を考えてもらっています。

 4年生以下にはその戦術ボードを使い、『どこのスペースが空いていたのか』『誰がどのポジションを取ればよかったのか』を見た目にわかるように説明しています。ただサッカーのことを深く考えたことのない指導者ばかりなので、そのマスわけしたピッチをもとにどんなトレーニングをしたらいいかまでは深く考えられません。

 だから、私が伝えているのはヨーロッパやJリーグの試合を見て、『どのゾーンの、どのエリアだとどういうプレーが頻繁に見られるかを自分なりに分析し、それを子どもたちに教えてください』と言っています。どういう傾向でボールが流れていることが多いのか、その中でどういうプレーが多いのかが自分なりに発見できればそれはプロがやっているプレーだから、子どもたちにもそれを学ばせた方がいいですよね、というふうに伝えています。

『世界のサッカーってこういうものだから』と唐突に言い出しても指導者は想像が追いつきません。『なるべくそういう指導者にもわかるように』と、どう噛み砕けばいいのかを常に意識しながら私は指導者たちと接しています。子どもたちもマスわけされた戦術ボードを見ると明らかに自分がこのポジションにいた時にどのポジションを開けてしまったかがわかるわけです。

 逆に、相手にとって嫌な場所がどこなのかも見た目に発見できます。私は視覚化する形で、指導者と子どもとが話せるような状況づくりから始めました。今はそういうやりとりをずっと繰り返している状況です。私はマスわけして数値化し、戦術ボードとして合わせて可視化する形で指導者たちと話し合いをしています。理由は、指導者もそれがあると子どもたちに明確な説明ができるからです。これは独自の方法ですが、こうすることで地域の町クラブであってもスムーズに指導が進むことが増えているのは事実です」

南里「現状、三つのゾーンやそこからのエリアを意識して指導しているクラブはほぼないと思います。わかっていてもプレーモデルが作れていません。四つの局面で考えたトレーニングをしている指導者もほぼいないでしょう」

末本「これだけ情報社会になってきて、どこからでも情報を自分なりのものに落とし込める時代なのにもったいないことですね」

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※写真はイメージです。選手及びチームは記事の内容と関係ありません。

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