チームをどうオーガナイズするのか。指導者が考えるべき「環境設定」/指導者座談会3【9月特集】
2018年09月26日
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【アーセナルサッカースクール市川U-10・12の南里雅也監督】
チームとしての戦い方を個人とグループにどう落とし込んでいくか?
南里「オランダで活躍されている白井裕之さんの『サッカーアナリティックス』を受講しているので、それを取り入れています。アーセナル市川はジュニア、ジュニアユース、ユース、女子というカテゴリーがあり、統一したプレーモデルがあります。
全体のプレーモデルについては、昨年、元日本代表GKコーチのリカルド・ロペス氏が示して残してくれたものがあります。まずは各カテゴリーによって子どもの発育・発達が違いますから、それによってフィールドを三つにわけた中でビルドアップとか、ボールを取った後とか、奪われた後とかというような形をカテゴリーごとの監督がそれぞれのコンセプトを持っていて、その内容をトレーニングとして年間計画化して一つずつ積み重ねていくという流れになります。
週末のトレーニングマッチの相手が分かっていればスカウティングしたり、映像があれば分析したりして一週間のトレーニングが組まれています。今日は自分たちのプレーモデルの中で攻撃の部分を行うのでアタッキングサードのところを重点的にやって、金曜日はセットプレーと相手に対する戦術的な守備の仕方などを再現性が高く出せるような形、そして変更ができるような形を構築してトレーニングをしている感じです」
高橋「今の日本では理想形ですね」
南里「多角的に取り組むために映像を撮ったり、それを分析して編集したり、アーセナルはそういう環境面の向上スピードも速いので、非常にチームにも再現性が出てくるようになりました。もちろん、全てに再現性が高いわけではありません。
しかし、同じチームであったり、同じシステムで戦う相手だったりした場合に高い再現性は出せるようになってきました。子どもたちが試合の中で判断できる要素が増えてきたことが要因だと考えています。それは視覚的に映像を見せている部分も多いからだと思います。
どちらかと言うとトレーニングの量をやるより、サッカーの知識が増えてロジカルにプレーができるようになったことが再現性の高さにつながっています。ジュニア年代から相手との戦術と戦略的な駆け引きにトライしていかないと、どうしてもスペインをはじめとするヨーロッパには勝てる気がしません。
日本は『自分たちのサッカーで負けたらそれも仕方ない』という美学だし、できなかったら『気合いが足りなかった』等と口にしがちです。でも、そうじゃない!相手がいる中で、うまくいかない時はやり方を変えたり、選手を変えたりしながらアクセントを加えつつ主体的にサッカーを展開するようにつなげていかないと前に進めないと感じています。それは日頃から相手を想定してトレーニングをやっていかないと成長ができませんから。うちはそこに対してU-7から取り組んでいるというところです」
高橋「他の方はアーセナルのような環境が現実的に整わないと思いますが、いかがですか?」
小嶋「外向けにいろいろと発信できるほどのものはありませんが、うちなりのプレーモデルというか、プレースタイルは出来上がってきているので、だいたい3年生くらいからはそういう方向にハマっていくように流れはできてきています。
それは、うちのチームらしくなっていくという意味で。ただ、グループ戦術やチーム戦術をやりすぎてしまうと個人戦術のところが疎かになってしまうので、そこは試合をしながら『個人戦術が足らないな』と思ったら立ち返り、試合が近くなったらまたグループ戦術やチーム戦術に戻ることを繰り返しています。現実的には、相手チームの対策とかそういうところまでは時間が割けるわけではありません」
末本「私たちは、南里さんと近い指導です。低学年から個人コンセプト、集団コンセプト、少人数制から人数を徐々に増やし、個人戦術を身につけていきます。高学年では3つのゾーンと4つのモーメントにおけるコンセプト、目的と原則をもとに戦術的なアプローチと教育的なコンセプトの習得をバランスよく行うように意識しています。
クラブとしての基準、分析するものがないと指導者の好みによって「あれがいい、これがいい」と観るべきポイントがズレてくるので、そこは明確にしました。そうすると、攻撃の場面で、例えばゾーン3で3人目の崩しができていないとかが見つけやすくなります。
もし、そこができていないのであれば理由を突き詰め、それをトレーニングに落とし込んでいきます。練習では、どのゾーンのどのモーメントの何をするのかを選手たちと共有してトレーニングするようにしています。選手たちと言葉の定義の共通理解があると非常に理解自体も早くなります。
対戦相手に関しては、自前情報がなく、初めて対戦するチームも多いので相手を分析するようなことまでは落とし込みできていません。次にどういう相手かというのもその時々で全然違うので、ぶっつけ本番が多いです。リーグ戦は時間が経てば相手がどんなサッカーをするのかがわかるし、情報も出てくるので『次は長いボールを蹴ってくるダイレクト攻撃が中心のチームだからこうしよう』と子どもたちとも話をします。
ただ、この年代では相手対策の割合はわずかで、様々な相手に対応、順応できるように教育的コンセプトの習得を大切にしています。その習得なくして、戦術的な柔軟性というのは生まれません。
小嶋さんがグループ戦術ばかりにフォーカスすると個人が疎かになると話されましたが、大豆戸FCではその対策としてフットサルをしているので、個人戦術の習熟度はそこでチェックするようにしています。例えば、最近では8人制でFCパーシモンさんと接戦でした。
でも、フットサルだと10対0くらいの大差で負けてしまうんです。8人制で誤魔化していたものが、5人制のフットサルをやると如実に出てしまいます。私自身が猛省する場になったのですが、そういう意味では、すごく忙しくはなりますが、フットサルという環境がすごく役立っています。フットサルのリーグ戦に参加するようになった頃からは、これまで以上にその先で活躍する選手が増えてきたのは間違いありません」
【選手に話をするFC大泉学園代表・小嶋快氏】
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