なくならない「指導」という名の暴力――。いい加減、スポーツの現場は変わらなければならない
2018年11月15日
コラムなくならない「指導」という名の暴力――。今年の5月にアメリカンフットボールの「悪質タックル問題」が話題となったが、また今、元プロの高校野球部監督が部員に対して殴る、蹴るなどの暴力を振るったことが騒動になっている。残念ながら、少年サッカーの現場も他人事ではない。今回は、2017年の10月に発売した『ジュニアサッカー応援しよう!Vol.46』から「その指導、子どものためになっていますか? 怒鳴る指導が子どもの積極性を奪う」の記事を転載して紹介する。改めて指導の本質を見つめなおしてほしい。
『ジュニアサッカー応援しよう!Vol.46』より一部転載
取材・文●鈴木康浩 写真●ジュニサカ編集部

ここに一冊の本がある。『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(カンゼン)。ライターの加部究氏が高校サッカーの悪しき実態をまとめた一冊だ。
冒頭の一部を次に抜粋する。
『ある選手は、最後のホイッスルを聞きながら、父とともに悔し涙を押し殺した。理不尽を強要し続けた監督の表情など見るのも嫌だった。
「高校の実態が、こんなに酷いものだとは知らなかった…。これから高校でサッカーをする人たちに、是非この実態を知って欲しい。もうこれ以上、犠牲者が出て欲しくない」
卒業したばかりの高校生を持つ父に、僕は強く訴えかけられた。
「ウチの子の学校だけじゃない。A高校の監督など自分は椅子に腰かけて罵声を飛ばし、選手を殴っているだけです。選手は、ずっと走らされていますよ。走らせておけば監督は楽です。何も考えなくていいし、動かなくて済むわけだから。明らかに不勉強なんですよ。それでも日本を代表するような選手たちが、どんどん育って来たんです」
優れた素材は、どんな指導でも芽を出すのかもしれない。しかしそれで開花を阻まれた芽もあれば、もっと綺麗に咲けた花もある。』
本書は2013年に刊行されたものだが、この状況は今もさほど変わらぬままだろう。そしてこの状況は何も高校年代に限ったことではない。
選手に罵声を飛ばし、殴り、ずっと走らせる。自分は何も考えず、動かず、不勉強 ―。そんなタイプの指導者は、ジュニアサッカーの現場にも少なからずいる。
指導者が怒鳴れば、子どもは委縮する。
この弊害について、組織運営手法の一つであるボトムアップ理論の提唱者として知られる畑喜美夫氏(広島県立安芸南高校) はこう話す。
「暴言を吐かれ、選手が何かを言われて動く。これは外的な動機付けで動いているので、何かを言われないと動けない指示待ち人間になる可能性が高くなります。自分で考えて工夫するからこそ創造性が生まれる。 それがサッカーの面白いところです。しかし、指導者に怒鳴られることで恐怖心が入るので、恐怖のために物事をやろうとしてしまう」
「人間はリラックスしているときに最高のパフォーマンスが出ます。逆に委縮するとどうなるか。たとえば、真っ暗な道を歩くときに人は不安になる。不安になると体が縮こまり歩くスピードが遅くなる。つまり、人を不安やストレスで委縮させると、サッカーのプレーのスピードは遅くなります。まず指導者がそういった人間の心理をしっかりと理解することが大事です」
どれだけの指導者が、このような理解のもとで子どもと接しているだろうか。
日本サッカー協会はプレイヤーズファーストを掲げ、子どものプレー環境の改善に努めているが、サッカーメディアで働く者として、現場の指導者たちへの意識の浸透が進んでいる実感は多少なりともある。が、ふと、町中でジュニアサッカーの現場を覗くと、怒鳴っている指導者の姿を目の当たりにすることは未だにある。
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