「足だけに頼る動き」がケガを生む。スポーツ障害の最大の予防法は“楽な姿勢”にあり
2018年12月10日
コラムスポーツにおける「ケガ」といえば、どんなケガを思い浮かべるだろうか。打撲、捻挫といった外傷的なケガもあれば、オスグッドやシーバー病といった、いわゆる成長期の子どもたちが患う「スポーツ障害」と呼ばれるケガもある。スポーツ障害は、幼い頃からスポーツに取り組む子どもたちにとって、悩みの種になる。では、その悩みを軽減するにはどんな知識が必要なのだろうか。今回は、スペインや日本のプロクラブでトレーナーを務めた経験がある松井真弥氏に「スポーツ障害」について詳しく話を伺った。
・ケガをしにくい“体の使い方”とは? 体重移動ではなく「重心移動」
取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部
ジュニア期におこるスポーツ障害
――松井さんには過去2回、ジュニサカにはWEB(「足の負担を少なくする動き方」ってどんな動き方? 体全体を使った動き方を学ぶ)と雑誌(ケガをしにくい“体の使い方”とは? 体重移動ではなく「重心移動」)で登場してもらっています。現在も不定期で講習会を開かれ、最近では「親子で学ぶ子どもの体とケガ」というテーマでセミナーを開催されています。実際に、どんな内容の話をされているのでしょうか?
松井「育成期の子どもたちに起こりやすいケガとその種類について話をしています。例えば、ケガと言っても接触などの事故的なケガと痛みを抱え続ける慢性的なケガがあります。特に、私が伝えたいのが慢性的なケガです。いわゆる育成時期に起こりやすい『スポーツ障害』と呼ばれるケガ。膝が痛いとか、脛の前方が痛いとか。人体のことを知っていれば、『スポーツ障害かも』と早めに病院に行って治療することができます。
しかし、正しい知識がないと誤った対応になる場合があります。「疲労性で起こる痛み→どうせレントゲンを撮って終わりだろう→それなら少しの間だけ休ませよう」と休養を取らせる。でも、ずっと痛みが治らないから病院に行ってレントゲンをとってみると腫瘍があった。非常にレアなケースですが、実は病気であったり成長障害だったということもあるわけです。育成期に起こるケガや痛み、病気は正しい対処が必要です。だからこそ気になった場合は病院で検査を受けることをお勧めしています」
――やはりジュニサカとしても「スポーツ障害」で起こる痛みやケガについては正しい情報配信をしていきたいです。
松井「接触などで起こるケガは不注意が原因の場合も多々あります。その中で多いケガが骨折や突き指などです。得てして、集中力不足であったりしますので、私たちのようなトレーナーは治療という方法で選手と向き合うことになります。しかし、スポーツ障害は予防ができるものです。
■成長期の子どもに起きやすいスポーツ障害
・オスグッド
主な患部:ヒザ
ヒザの下にあるお皿が徐々に突出してきて、腫れや熱、痛みを伴う症状がみられるスポーツ障害。休養で痛みはなくなるが、運動をはじめると痛みが再発する。
・シーバー病
主な患部:かかと
かかとの後部に痛みを伴うスポーツ障害。10歳前後の男児に多く見られ、激しい運動の後に症状が出ることが多い。
・腰椎分離症・分離すべり症
主な患部:腰椎(こし)、臀部、太もも
腰椎の疲労骨折。以前は、中学生以降の年代の選手たちに多くみられたスポーツ障害だが、近年は小学生年代の選手にも多くみられる。回旋運動や前後傾を繰り返すことで疲労が蓄積して発症する。
・シンスプリント
主な患部:下脛(すねの内側)
サッカーだけでなく、陸上競技など“走る”ことが多い競技の選手に起きやすいスポーツ障害。疲労が蓄積したときに発症しやすく、スネの内側に痛みを伴う。
・グロインペイン症候群
主な患部:そけい部周り、下腹部
サッカー選手に多くみられるスポーツ障害。キックなどの動作で腹部に力を入れたときに痛みを伴う。
・疲労骨折
主な患部:中足骨、脛骨 他
通常の骨折とは違い、多くは外傷を伴わず起こる骨折。主に中足骨(足の甲)やスネに症状が表れ、原因は過度な練習によるものが多い。
・剥離骨折・裂離骨折
主な患部:骨盤、股関節など
腱や靭帯が付着している骨の一部分が剥がれて起きる骨折。頻度は高くないが、成長期に発症しやすいスポーツ障害でキックなどを繰り返すなど激しい動作などで上前腸骨棘や下前腸骨棘が引っ張られることで起こる。
例えば『股関節の剥離骨折』は小学6年生から中学1年生くらいのキック力があり、踏ん張る力の強い選手に起こりやすいケガです。
手術をせずに治していきますが、このケガもオスグッドと同じで疲労による原因が大きいです。もも前の筋肉が疲れ、足全体に負担がかかり、柔軟性が失われた状態で思い切り足を地面について踏ん張った。そういう状態で力いっぱいボールを蹴ってしまう、それが最後のひと押しとなって剥離骨折になってしまった。ただ、何が原因で痛みが出ているのはわからない場合がほとんどです」
――確かに、スポーツ障害は気づきにくい病気ですし、知識がなければわからない病気です。
松井「本来は痛みを感じたらすぐに病院で見てもらうなど対処することをおすすめします。しかし、子どものケガは本当にわかりにくいものです。例えば、レントゲンを撮っても100%原因を発見できるわけではありません。
こんな事例があります。地面に倒れてしまって手をついたとします。痛みがあるので、その直後に病院に通います。そこでレントゲンを撮ったけど、何にもなかった。ただ、その後に何日も痛みが引かない。もう一度、病院に行ってレントゲンを撮ると骨折していた。実は、子どもの骨は柔らかいのでケガをした直後にレントゲンを撮っても写らない場合があるのです。
こういったケースを鑑みると、一度レントゲンを撮って問題がない場合でも、痛みが引かない場合は、改めて病院に行きレントゲンを撮ってもらったほうが良いでしょう。
他にも、腰に起こる腰椎分離症は小学校高学年から中学校くらいの子に起こってしまうスポーツ障害の一つです。それもレントゲンに写らないケースが多々あります。
大まかな症状は、反ると痛い、捻ると痛い、左右どちらかの痛みといったことです。練習量が多くて、そういう症状がある場合は分離症の可能性があります。酷い痛みが出る場合は、症状がかなり進んでいる状態です。MRI検査をすると見つかる場合もあります」
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