「足だけに頼る動き」がケガを生む。スポーツ障害の最大の予防法は“楽な姿勢”にあり

2018年12月10日

コラム

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【スペインのRCDエスパニョールやベガルタ仙台でトレーナーを務めた経験を持つ松井真弥氏】

「正しい姿勢」は慢性的な痛みを治す

――今回の取材で一番話したいテーマですが、なぜ慢性的な痛みが起こるのでしょうか?

松井「大きな要因に“体の使い方”があるのだと思います。一番考えなければならないのは「姿勢」です。例えば、『かかとが痛い』と感じて来院した時、まずは膝やかかとを確認していきます。

 オスグッドの場合、膝の付着部に痛みを感じる時にはそこにつながる大腿四頭筋が硬くなり、柔軟性がなくなってきて、筋肉が硬くなって収縮性がなくなり、膝の付着部を引っ張るのです。子どもの場合、筋肉と骨だったらまだ骨の方が柔らかい。だから、骨に付着している部分を引っ張って剥離していくのです。

 その証拠に、子どもの頃には肉離れや捻挫は以外と少ないのです。筋肉が疲れて固くなると、骨を引っ張ってしまってそういう症状が現れます。付着部が少しずつ剥がれていき、ボコッと出てしまうのがオスグッドです。かかとに起こるシーバー病も同じです。筋肉は膝の裏からふくらはぎを通ってアキレス腱にかかり、かかとの骨に付いているわけですが、シーバー病はかかとに付着部している骨に負担がかかっている状態です。

 では、なぜ付着部に負担がかかるのでしょうか。

 それが「姿勢」に関わる部分です。骨盤が後傾した状態で、前傾姿勢のまま動いたり走ったりすると太ももの前部分とふくらはぎに過度の負担がかかります。つまり、負担をかけている部位が足に集中しているからです。だから、お尻を出して少し体を起こすと膝が伸びてきます。この姿勢を作って動くだけでも、太ももの裏、お尻に加え“背中”の筋肉を使うようになります。つまり、オスグッドやシーバー病になる原因にもなっていた太ももの前部分やふくらはぎに集中していた負担が分散することになります。

 直接的な原因は、膝やかかとの患部ではなく、姿勢に隠れていたのです。 骨盤が後傾した状態で動くと、力学的に足が疲れるようなメカニズムの動作になってしまうのです。もっと突っ込んだ言い方をすれば、足だけで踏ん張る動きになってしまった。だから、骨盤を起こした良い姿勢を作ることによってこれまで参加していなかった太ももの裏側、お尻、背中も機能するようになったわけです。そうすると、足の負担が少なく動けるようになります。

 スポーツ障害が起こる場所はほとんどが足(下半身)です。姿勢が悪い状態のまま、小学校中学年から高学年くらいになると徐々に足に筋力がついてきて、それが余計に足だけに頼ってしまう動きにつながっていきます。特にサッカーは練習や試合などの活動時間が多いため、痛いと感じていてもプレーを続けてしまいます。サッカーをやりたい欲求が勝ってしまうけど、練習や試合が終わったら痛みを覚えたままです」

――痛みを隠してプレーする子も多いです。

松井「私はスペインに行っていましたが、帰国して思うのは『日本の子どもはケガが多い』ということです。原因は何なのか?真っ先に考えつくのは活動時間が多いことです。向こうでは育成期のスポーツ障害をあまり見かけません。スペインの練習量は少ないですし、週末の試合も1試合がほとんどです。

 また、スペインの活動で感じたのは、スペイン人の場合、骨盤そのものが立っているような体の作りをしていること。一方の日本人は、骨盤が後傾気味です。

 例えば、地面に落ちている物を拾う場合、日本人は背中を丸めて骨盤が倒れた状態で物を拾おうとします。でも、欧米の人たちは背中が丸まることはありません。骨盤が立った状態を保ち、物を拾います」

――骨盤が立つ体のつくりをしていないのなら、余計に姿勢は意識したほうがいいです。

松井「サッカーは動きながらプレーするスポーツです。重心を上手く使い動けつ事にこした事はありません。私が思うスポーツ障害の最大の予防は姿勢を良くしつつ、足だけで踏ん張らずに動く方法を身につけることが一番です。簡単ではありませんが、いかに子どもたちに楽な姿勢で動く方法を教えるのかは重要なことです。ケアを必要としたり疲れたりするような動き方をしていたら選手として損するし、ケガの原因にもなります」

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