「重心を落とせ」ではなく「重心を上げろ」。サッカーにおける“骨盤”の重要性
2018年12月17日
コラムサッカーの守備の局面で「重心を落とせ!」と言われたことはないだろうか? だが、トレーナーの松井真弥氏は「重心を落とすと、骨盤を上げて走り出すから1テンポ動作が多くなり、その分パワー(体力)を必要とします」と話す。体をスムーズに移動させるためには体をどう使うことが大切になってくるのだろうか? スペインのRCDエスパニョールやベガルタ仙台でトレーナー経験を持つ松井氏に教えてもらった。今回のインタビュー第2弾は前回(「足だけに頼る動き」がケガを生む。スポーツ障害の最大の予防法は“楽な姿勢”にあり)の続きからとなる。
取材・文●木之下潤 写真●佐藤博之、GettyImages
【第1回】「足だけに頼る動き」がケガを生む。スポーツ障害の最大の予防法は“楽な姿勢”にあり の続き
骨端線と成長痛との関係
――育成期に骨折した場合、時間差でレントゲンに写るというのは初耳でした。
松井「育成時期には、骨折直後にすぐ反応が出ないこともあります。例えば肉離れの場合、3日くらい経ってようやくMRIに写ることもあります。もちろん明らかに症状が酷い場合はケガの直後に現れますが、レントゲンやMRIも写す角度や撮り方も影響があるので難しいところです。
子どもの場合、足首の捻挫は靭帯そのものに痛みがあるというよりは、骨の付着部分に出ることもあります。繰り返しになりますが、子どもの頃は骨が軟らかいため、骨が引っ張られて出っ張ることがあるからです」
――膝の出っ張りであれば、それがオスグッドです。その痛みは長引くものですか?
松井「長引く子は長引きます。でも、付着部分が剥がれているわけではありませんから、固定の度合いにもよりますが、少し強めのサポーターで固定して安静にしていれば徐々に戻ります。子どもの頃の骨はまだ柔らかいので、しっかりと元に戻っていきます。やはり、子どもの間は『(骨が)元に戻ろう』とする力が強いですから」
――時間差で症状が現れることは一般的には知られていません。講習会などでの保護者の反応はいかがですか?
松井「納得される方が多いです。『レントゲンを撮った反応がすべてではないんだな』と。子どもの骨には骨端線、通称『成長線』というものがあります。子どもの骨はそこから伸びていくわけですが、女性は中学2〜3年生くらいになると、その線が閉じる傾向にあります。つまり、骨が成長しないから身長も止まるわけです。男性は高校2〜3年生くらいまでは線が開いたまま、稀に二十歳くらいまで開いたままで身長が伸びる子もいます。成長線があれば身長は伸びますが、それはケガの観点から見れば体が“不安定な状態”なわけです。だから、ケガが起こりやすいのです」
――成長線(骨端線)がスポーツ障害につながっているんですか?
松井「骨は腱や筋肉とつながり、体全体が連動して動くものです。だから、骨端線がある間は骨が伸びようとするわけですから、様々な部位と引っ張り合いをしている状態のため、過度なトレーニングをすると痛みが発症することが多々あります」
――病院に来る親子、講習会に参加する親子の悩みは成長期に起こりやすいスポーツ障害が多いのでしょうか?
松井「スポーツ障害に関連する悩みが多いです。『オスグッド』、脛(すね)の骨の部分の痛み『シンスプリント』、かかとの部分痛み『シーバー病』が多いです。少し年齢が上がると『腰椎分離症』もあります。特にすべての種目に言えますが、腰椎分離症と診断されると2ヶ月くらいはコルセットをつけて固定し、一切トレーニングができません。シンスプリントはサッカーに限らず、陸上競技をしている子にもたくさんいます。
これも日本人は母子球(足の裏の親指の付け根にあるふくらみ)で踏ん張って走っていることが多いからだと、私は考えています。本来、母子球は体を止めるために使う場所です。だから、親指付近だけでなく、小指まで足先全体を使えるようにすれば驚くほど足の内側への負担が減ります。
そこに姿勢の悪さが加わり、膝やかかとへの負担がとても大きくなるわけです。安定感という話をすれば、母子球ばかりを使っていると足の外側を使わなくなるので不安定な状態になります。
例えば、痛みが出たタイミングで病院に行くします。すると『休め』、『ストレッチしろ』、『アイシングしろ』、『電気治療しろ』、『筋力を鍛えろ』と言われ、痛みが引くケースがあります。体を休めれば症状は軽くなっていきます。しかし、それだけでは同じ痛みを再発するケースも少なくありません。
姿勢や体の使い方、動きの原理を学ばずに、痛みを発症する前のままでスポーツをするから体に負担をかけているからです。
私は育成期にこそ姿勢や体の使い方、動きの原理などを学ぶ環境が大事だと考えています。だから保護者向けの講習会やセミナーでそういったことを中心に話しています。
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