体が硬くなる冬はケガが起こりやすい!? 「腱」「靭帯」「筋肉」を強化する食事法とは

2019年01月22日

フィジカル/メディカル
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気温が低い1月は、ケガが心配です。それは寒さで筋肉や血管が縮こまって硬くなり、弾力性を失っているからです。練習前にジョギングやストレッチをしっかり行うことはもちろん、体の中からのケガ予防も大切です!そこで1月の食育連載は「ケガ予防」をテーマに、管理栄養士の川上えり先生に食事からのサポートの心得を語ってもらいました。

構成●宇野美貴子 写真●ジュニサカ編集部


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サッカー少年少女に多く起こる「オスグッド」

 ジュニサカ世代の子どもたちに多いのが「オスグッド・シュラッター病」。普段は「オスグッド」と呼ばれる膝の痛みです。よく成長痛と勘違いされてしまうこともあり、どんな原因があるのか、どうすれば予防できるのかを以前お医者さんに聞いてみたことがあります。

 日々、子どもたちは骨が伸びています。しかし、靭帯や腱などは成長しないため、伸びる骨によってどんどん引っ張られて緊張していき、成長期は体が硬くなる時期でもあるそうです。そういう柔軟性がない時期に、キックやダッシュ、ジャンプなどを繰り返すために、膝にある脛骨結節部が強く引っ張られて、その部分が剥がれたり、炎症を起こしてしまうのだとか。

 また、この時期に伸びている骨は、硬くなる前の軟骨だったりします。強い力を繰り返し加えることで、太ももの筋肉(大腿四頭筋など)が軟骨を引っ張り続けることもオスグッドの原因になりえます。しかも、冬は気温が低いので筋肉や腱、靭帯などの柔軟性がより失われており、練習や試合の後半になって疲れがピークを越えると「オスグッド」になりやすい条件が重なってしまいます。

 これによる痛みが出たら練習を休むしかありません。

 日本の子どもは、他の国の子どもよりも「オスグッド」になる数が多いとも言われています。それは練習時間がダントツに長いのが要因だという話です。成長期を過ぎれば症状は緩和しますが、その後も運動で強い力が加わると「オスグッド後遺症」という症状が出ることがあります。

 また、成長期で靭帯が緊張している上、寒い中で無理をしていると、相手と接触したり転んだりすることで、膝や足首の靭帯を損傷したりすることにもつながります。(対策すべき障害・症状「オスグッド」

 それらの一番の予防法や改善策は、腱や靭帯を強化することです。それには、タンパク質とビタミンCを一緒にとることをお勧めします。なぜならタンパク質は腱や靭帯の材料ですし、ビタミンCはその吸収率をアップするからです。また、ビタミンCは細胞と細胞をつなげる接着剤となるコラーゲンの材料にもなるので効果が絶大です。

 タンパク質を多く含む食材は、牛肉・豚肉・鶏肉・魚介類・卵・大豆製品・牛乳などです。ビタミンCを多く含むのは、ピーマン、芽キャベツ、ブロッコリー、菜の花、キウイフルーツ、イチゴ、レモン、オレンジ、ジャガイモなどですが、特に旬の食材にたくさん詰まっているので、意識的に利用しましょう。

 そこで気をつけたいのが調理法です。

 ビタミンCは洗ったり切ったりするだけでも流れ出てしまいますし、加熱すると壊れてしまうことが多いため、切ってそのまま食べられる果物の方が多めに摂取できます。だから、加熱する場合は短時間で仕上げる工夫をしましょう。

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【管理栄養士の川上えり先生】

冷えている時に起こりやすい「肉離れ」予防

 ストレッチをせずに筋肉を酷使すると起こりやすいのが「肉離れ」です。ジュニサカ世代でも筋肉が柔らかいうちは起こりにくいものの、成長のスピードが速い子は骨と一緒に筋肉も伸びるので、硬くなっている筋肉は寒い日の練習や試合で傷つき、「肉離れ」になることがあるそうです。

 これを予防するためには、筋肉の材料であるタンパク質をとることが大切ですが、タンパク質は10万種類以上もあり、それぞれのタンパク質は、20種類ほどのアミノ酸が様々な形で組み合わさってできています。1つのタンパク質を構成している20種類ほどのアミノ酸には、種類、数、結合の順番が決まっていて、1つでも違いが出れば、筋肉や血液、ホルモンなどの合成に影響が出る可能性があります。

 そして、この20種類のアミノ酸は、「非必須アミノ酸」と「必須アミノ酸」とに分けられます。「非必須アミノ酸」は人間の体内で合成できますが、「必須アミノ酸」は体内で合成できないため、食事から摂取しなければなりません。

【タンパク質を構成する20種類のアミノ酸】

<必須アミノ酸>  
トリプトファン
リジン
メチオニン
フェニルアラニン
トレオニン
バリン
ロイシン
イソロイシン
ヒスチジン

<非必須アミノ酸>
アスパラギン
アスパラギン酸
アラニン
アルギニン
グリシン
グルタミン
グルタミン酸
システイン
チロシン
セリン
プロリン

 20種類のアミノ酸がバランス良く含まれているかどうかを知るために、そのそれぞれのタンパク質の栄養価を示す「アミノ酸スコア」という指標があります。タンパク質ごとに、含まれるアミノ酸量が数値化されているのです。

 例えば、「小麦粉」では9種類ある必須アミノ酸のうちフェニルアラニンとメチオニンだけがMAXの100に達していますが、残りの7種類は100以下でバラバラです。これを樽だと仮定すると、この中に入るタンパク質は、必須アミノ酸である最も樽の上限(高さ)が低いリジンの量ということになります。つまり、タンパク質としてのスコア(樽の体積に換算すると、リジンは高さが最も低いため、体積が最小になる)は低いのです。

【アミノ酸スコアが100の食材】
鶏肉/豚肉/鶏レバー/卵/アジ/鮭/カツオ/イワシ/牛乳/ヨーグルト

 それに比べて「卵」は必須アミノ酸がすべてMAX 100の高さなので、卵を食べればバランスよく必須アミノ酸がとれる=良質なタンパク質ということになります。このように、スコア100の食品は「動物性タンパク質」に多く含まれています。

 これらアミノ酸スコアの高い食材を多くとることで、筋肉を作るだけでなく、腱や靭帯を強くすることもできます。

 質の良いタンパク質をしっかりとっていると、柔軟性のある強い筋肉を作ってケガを防ぐだけでなく、血流も良くなり、成長を助け、体温も上昇します。体温が上昇すれば、免疫力がついて、風邪などに負けにくくなります。

 だからといって、タンパク質だけとっていてもダメです。様々な食材を使ってバランスの良い食事を心がけてこそ、ケガに強い体が作られます。タンパク質という材料だけあっても、体を作る工場は動きません。エンジンやブレーキ、ガソリン、オイルなどと同じように、たくさんの栄養を体の中にとり込むことで、体という工場が動いています。どれかが欠けただけでも故障したり、サビたりしてしまうのです。

練習や試合の後にとりたいリカバリー食

 練習や試合の後、すぐに食べて欲しいのは、糖質とタンパク質が入っているエナジーゼリーです。エナジーゼリーと同じような働きをするものとして鮭入りのおにぎり、肉まんでもOKです。これらは使い切ってしまったエネルギーの元を補充するという意味で摂取します。糖質とタンパク質の量が「3:1」の割合でとるのが良いとされています。

 また、疲れを取るために、酸っぱいものを食べさせてください。

 お酢、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、梅干しなどには「クエン酸」が含まれていますが、これは一緒にとったミネラル分を吸収しやすくして、疲労物質を分解してくれます。

「酸っぱいものは苦手」というお子さんなら、イワシを梅干しで煮たり、サラダをマヨネーズではなくドレッシングで食べるようにして、少量ずつ慣れさせていくといいでしょう。

 また、柑橘系の果物を砂糖で煮て、レモン汁を加えてマーマレードやジャムにすれば、美味しくクエン酸をとることができます。これらは体の疲れをリカバリーするための食べ物としてお勧めですし、ケガ予防のためにも大切なことです。ぜひ試してみてください。


<プロフィール>
川上えり(管理栄養士)

海外プロサッカー選手の栄養アドバイスや、FCジュニオールの栄養アドバイザー。海外・国内遠征・合宿帯同や、アスリート向けレシピ制作、子育てママ向けのコラム執筆などで活動中。


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