「1対1」にも戦術が必要。シュタルフ氏が考える個の育成の定義とは
2019年02月26日
戦術/スキルJリーグ最年少監督として今季からY.S.C.C.横浜の監督を務めるシュタルフ悠紀リヒャルト氏は、14歳のときから、指導者になるという明確なビジョンを持っていたという。前回(「技術的なエラー」だけで選手を評価してはいけない。“再交代”を有益に使うひと工夫)まではジュニア年代におけるシュタルフ氏の育成に対する考え方を伺った。今回は、シュタルフ氏のキャリアを聞くとともに、欧州と日本における『個』の捉え方の違いをテーマに、話を聞いた。
取材・文●高橋大地(ジュニサカ編集部)写真●Getty Images
【第2回】「技術的なエラー」だけで選手を評価してはいけない。“再交代”を有益に使うひと工夫
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局面では全部1対1の戦い
――前回までは主にジュニアサッカーにおけるシュタルフさんの考え方を伺いました。少し話の方向性を変えます。今回は『シュタルフ悠紀』のルーツから話を聞いていっても良いでしょうか?
「日本に来たのは僕が5歳のときです。父親がドイツ人なのですが、親の仕事関係で引っ越してきて、16歳まではずっと日本に住んでいました。高校一年生のときに今度はドイツにサッカー留学という形で戻りました。その留学が僕の人生においてターニングポイントになりました。
日本では、自分自身そこそこいい選手だと思っていたので、ドイツに行ったときは自信もあったし中3までは100%の確率でプロになれると思っていました。実際にドイツでも名門チームに入ることができたんですが、入ってからすぐ壁にぶつかりました。
リーグ戦では年間を通じて1試合出たかどうか。でも最初は試合に出られない理由が分からず、周りの選手よりも自分のほうが『絶対に上手い!』という自信だけは折れなくて。他の選手と比べても自分の方が走れるし、技術もあるし、戦術も理解している。でも試合に出られない。なんで…、と思っていました。
今になって良かったと思うのは、そのときの自分に『こいつら分かってないな』という気持ちと『もしかしたら俺が分かってないのかもしれない』という気持ちが両方あったことです。そして最終的に『俺が分かってないんだろな』っていう気持ちが勝ってくれた。
『こいつら分かってないな』という気持ちが勝っていたら成長はなかった。でも冷静に考えれば、ドイツはW杯で3回優勝(当時)していて、ブンデスリーガは世界最高峰のリーグ。ドイツでは『何か自分にはない部分が評価されているはずだ』と分析したところ、自分には1対1の強さが欠けていたことがわかったんです。
――なるほど。
日本では1タッチ、2タッチでプレーすることばかりで教えられましたし、1対1が強くなるようなトレーニングがなかった。元日本代表監督のハリルホジッチさんが『デュエル』と言いはじめて少しフォーカスされましたが、それはごく最近のことです。
そう気づいてからは1対1ばかり練習しました。これまで僕が学んできたものをベースに、1対1の強さが加わったことで、いつの間にか『1対1の強さ』が僕のキャッチフレーズなっていました」
――1対1の強さというのは指導者になってからも大切にしていますか?
「一番大事だと考えています。サッカーは11対11のスポーツだけど、局面では全部1対1、個人の戦いだと考えています。そこが一番の基本なのかなと」

【ボール際の攻防ではげしさをみせるシュタルフ氏。(写真提供●シュタルフ悠紀)】
――ドイツのサッカー専門誌には1対1の局面に特化した評価があると聞きます。
「あります。データもでます。たしかキッカー(ドイツのサッカー専門誌)では1対1の強さが定義されていて、両方の選手がボールをさわれる局面でどちらが最後にボールを方向付けできるかで勝ち負けが決まります。ボールがルーズになっても、スライディングでコースを変えたら自分のプラスになるなど、重要視されています」
――高校生のときに自らのルーツがあるドイツへ戻ったことで自分のことを客観的に見られたわけですね。その後はどういったキャリアで?
「日本に帰ってきてからは、現在J3に所属しているY.S.C.C.横浜のユースチームに入りました。(今年Jリーグ最年少監督としてクラブに戻ることに)
ただドイツ留学を経た1年間で僕は変わり過ぎていて、今度は逆に日本のサッカーになじめなくなっていました。
そこから高校を卒業したらすぐに海外にいくという明確なビジョンを持ち、色々な方とのつながりや運もあり、卒業と同時にスイスの古豪FCチューリッヒのU-21チームに入団することができ、プロキャリアがスタートしました。ただこれは本当に運が良かっただけ。選手になってからはずっと移籍の繰り返し。4年前に選手を引退しました」

【シュタルフ氏は10代のときから、プレーの傍ら育成年代の指導にも携わっていた(写真提供●シュタルフ悠紀)】
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