「1対1」にも戦術が必要。シュタルフ氏が考える個の育成の定義とは
2019年02月26日
戦術/スキル
【24歳のときのシュタルフ氏。アメリカのハリスバーク・シティーアイランダーズで指導していた(写真提供●シュタルフ悠紀)】
日本人選手を伸ばすにはまず『日本人』を知ること
――4年前に引退して指導者になった経緯は?
「子どもの頃から指導者になると決めていました。子どもというのは、明確には13、14歳ぐらいの頃です。選手の後は指導者になるという明確なビジョンがありました。コーチングキャリアがスタートしたのは14歳のときです。アルバイトでした。地元のスクールのアシスタントコーチとして。当時はマーカー置いたり、声を出したりするところから始めて。
選手は10年ちょっとやりましたけど、どこのクラブでも契約時にアカデミーコーチと兼務させてもらう形を盛り込んでいました。だから14歳から指導をしていない年はほぼありません。
チューリッヒ時代は右も左もわからなかったためできませんでしたが、それ以外のクラブではU-10〜U-13を必ず指導してきたので。だから引退して指導者になったというよりも、サッカーのプレーがなくなっただけです」
――じゃあ指導者としてのキャリアは20年ぐらいになりますね。日本の選手で14歳の頃から明確に指導者を目指す人はなかなかいないと思うのですが、シュタルフさんの動機は?
「3兄弟の長男として育ったので、昔から教えることが好きだったんです。それに子どもも好きだったので、育成カテゴリーの指導者になろうと思っていました。そして日本もドイツに負けないくらいサッカー大国になってほしいと子どもの頃から願っていたんです。
自分の人生プランにあった選手としての成功が全く叶いませんでした。だから、いずれは育成だけじゃなくて、プロの監督も、と考えています。当時はそこまで具体的ではありませんでしたが、やっぱり教えることが好きなんだと思います 。自分の学んできたことを伝えたい、と。
自分は選手として本当に才能が無くて、プロになれたこと自体が奇跡に近いことだったんです。指導者になったからこそそれがよくわかる。
僕の場合は本当に奇跡に近いんですけど、サッカーの本質を理解する能力を才能がある選手に授けたい。そうしたら日本を代表するような選手になってくれるんじゃないのかなと。そういう意味で指導は面白いですね」
――シュタルフさんは2018年度に日本サッカー協会のS級ライセンスを取得し、2019年からY.S.C.C.のトップチームの監督になることになりましたが、今後はどんなプランを描いているのでしょうか?
「僕は何でも明確なプランを持ち、そこから逆算して動くタイプの人間です。僕のプランの一つに2030年までに日本代表監督になるという目標があります。選手のときは2010年の南アフリカW杯ワールドカップを目指して動いていました。しかし出場することはできず、目標をクラブW杯に軌道修正しました。しかし、メンバー入りは果たすもサッカー以外の理由で出場は叶いませんでした。
2020年までにプロライセンスを取るという一つの目標があり、A級まではドイツで取得しました。はじめはプロライセンスもドイツで取得しようと考えていたのですが、日本で仕事をしていると、受講するのが難しくて。せっかく日本にも住んでいるし、日本代表の監督を目指しているので、より日本を知っておいたほうが良いと思い日本でプロライセンス(S級)を取得しました」
――実際に講習に参加してみてどうでしたか?
「すごく勉強になっています。やはりドイツと日本の違いはたくさんありますから。ただ日本人選手を伸ばそうと思うと、まず『日本人』を知らないとダメなので。なぜ日本の選手はこの場面でこういうプレーを選択するのか、そうか、こういう指導を受けたからこうなんだ、と知る必要があります。それを全体像を見ながら学ばせてもらっています。あとはサッカー選手として素晴らしいキャリアを歩んできた方々と一緒に受けているので経験談とかも面白いですし、自分はほとんど日本でプレーをしてこなかったので、S級ライセンスを通じて日本にもサッカー仲間が増えて、ここで得たつながりが今の私にとっては宝であり、とても貴重な財産になっています。」
【パプアニューギニアでプレーしていたときのシュタルフ氏。(写真提供●シュタルフ悠紀)】
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