「1対1」にも戦術が必要。シュタルフ氏が考える個の育成の定義とは

2019年02月26日

戦術/スキル

ドイツではほとんどのクラブがメソッドを文章化している

――あとシュタルフさんはJリーグともお仕事をされていますよね。ベルギーのダブルパス社とのお話を伺っても良いですか? 2015年にスタートしたJFA/Jリーグ協働プロジェクトJJP、その取り組みの一環して導入された『フットパス (※ダブルパス社は『ダブルパスジャパン』と呼称)』。その監査役とコンサルタントを担っていたそうですね。

「そうですね。僕は最終的にはコンサルタントに落ち着きました。ダブルパスには大きく分けると3つの部署があり、1つは監査部、2つ目が教育部と3つ目がコンサルティング部です。つまり提供している商品はその3つです。そのうちJリーグはダブルパス社の『監査』という商品をまず初めに購入したことになります。
 
 J1・J2クラブのアカデミー40クラブ+JFAアカデミー、さらに年代別代表とか、トレセン制度とか、日本の育成を評価してレポート化することが、3年前のプロジェクトのスタートです。
 
 それが1年経ったときに、『評価するだけじゃ足りないよね』ということで、コンサルティング部からクラブコンサルティング、教育部からはマスタークラス、アカデミーダイレクターの指導者養成プログラムを取り入れました。
 
 僕は監査部から離れて、コンサルティング部の日本側のプロジェクトリーダーをやらせて頂いていました。去年度は10クラブ、今年度は7クラブを担当し、監査部の監査報告書を元に各クラブに最も必要な部分にフォーカスし、資料作成などアカデミーのフットボールフィロソフィーの構築に携わらせていただきました」

――その結果がでる…と。

「もう全クラブ、J3も加わって、54クラブの評価は終わっていて、マスタークラスも終わりました。コンサルティングは年3回訪問するのですがそれが昨年11月中旬に終わって、発表会があります。1年間してきたものを発表する場で、終了証を授与する式があるんですけど、それをもってダブルパスの3年プロジェクトは終わります。
 
 例えば、ドイツとかイングランドをみると監査は何回かやっています 。監査して成長してもらってという言い方はあれですけど、いいアカデミーになって、また監査して、どれだけ成長したかを計ります。日本もそうなるのか、3年で終わりなのか、わからないですけど何か聞いていますか?(笑)」
 
――いや聞いてないですね(笑)。 最初は『全部の評価を出します』というように記憶していたのですが、1年目発表があってそれ以来は特に。そのとき日本のスポーツメディアには『日本には個の育成が足りない!』という見出しが躍りました。
 
「グローバルなものだけ言われているんですね。極端に言えばランキングみたいなものが出ています。ただそれは守秘義務があるので、僕の口からは言えません。
 
 そういう格付けというものがあって、ブンデスリーガとかでいうと、ランキングに加えて、クラスタリングというカテゴリー付けもやっていて、例えば何%ポイントを取れたら星3つだよとか。

 それに今度はブンデスとDFB(ドイツサッカー協会)が連動していて、星3つのクラブにはより多くの分配金が落ちるようになっていて、育成を頑張っているところにはたくさんの育成資金が行くようになっています」

――ダブルパス社が入ってよく聞くようになったのは『日本の育成組織はメソッド化されていない』だとか『言語化されていない』ということだと思うのですが、メソッド化や言語化というのは欧州では当たり前のことなんでしょうか?

「今では当たり前のことです。このダブルパス社の商品がドイツで導入されたのは、12年前くらいだったと思います。その時は文書として自分たちのクラブのメソッドを残しているクラブは少なかったなかったんです。

『文書化するのって大事だよね!』と意識が向いた後に育成資金の話も絡んできて各クラブのモチベーションが上がり、文書化が加速したという背景も少なからずあります。おそらく、今はもうほとんどのクラブが自分たちのクラブのメソッドを文書化していると思って良いくらいです。これはプロのアカデミーの話です。

 その勢いはさらに加速して言語化・文書化にとどまらず、映像やアニメーション駆使してビデオライブラリのようなものをつくっています」


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