「1対1」にも戦術が必要。シュタルフ氏が考える個の育成の定義とは
2019年02月26日
戦術/スキル日本と欧州が考える『個』の違い
――日本が苦労しながら文書をつくっているうちに、欧州はさらに先に進んでいる、と。少し話が変わるのですが、JJP関連の話で、定期的にメディアも入れる報告会が開催されています。
2017年度報告会で中村亮太氏(モンテディオ山形)、酒井良氏(FC町田ゼルビア)、坪倉進弥氏(横浜F・マリノス)がそれぞれ1年間ヨーロッパ(中村氏→フォルトゥナ・デュッセルドルフ<ドイツ>、酒井氏→FKヴォイヴォディナ<セルビア>、坪倉氏→アンデルレヒト<ベルギー>)に研修に行った際のお話をされていたのですが、そのときに印象的だったのが「基本的にヨーロッパのクラブの練習というのは、グループ練習の中でもフォーカスしているのは『個人』に対してなんです」と、みなさんおっしゃっていたことなんですが、そのあたりについてシュタルフさんはどうお考えですか?
「みなさんが研修されたチームで担当していた年代がわからないので、正確なことは言えないですが、日本のアカデミーは小さな年代から、チームの練習、チームとしての完成度をあげていくという傾向はあります。
ヨーロッパでそういったことはありません。チームの完成度をあげても、どこかで移籍してしまったり最終的にバラバラになっていくものなので。また、チームを育てても子ども自身が必ずしも伸びているわけではないので。
人間の成長に合わせて大きく分けると、13歳頃までに個人の能力を高めて、16歳頃までにグループのところを高める。そして、18歳頃にチームとしての戦い方を学んでいくような形ですね。個人、グループ、チームのように3段階に分けて指導していく傾向はあります」
――この話になると日本では『個の育成だ!』となって、別の方向に話がどんどん進んでいってしまう気がしているのですが、シュタルフさんにとって、日本で言われている『個の育成』とは何のことだと考えていますか?
「日本で僕が見ている『個の育成』は『個人技の育成』です。基礎技術の育成、個人のボールを止める、蹴る、シュートを打つ、走るなど。でもヨーロッパの『個の育成』というのは『個性の育成』と『個人戦術の育成』なんですよ。
選手の能力を見極めて、その子の能力を伸ばしてあげたり、その子が能力を発揮するうえで邪魔している弱点を見つけ出し、引き上げてあげるというアプローチ。
それに関連した話だと、個人戦術も日本ではあまり指導されていない部分のひとつです。小さい年代からチームにフォーカスすることによって、個人戦術というのを学ばずに大人になっていく。
さっき僕のキャリアのターニングポイントで話をした『1対1の戦い方』も戦術なんですよ。おそらくですが、お相撲さんにも戦術がありますよね。どこで引くとか、どこを待つとか。それをいっぱい持っている人の方が強いんです。
僕が指導を受けてきたものを否定するわけではありませんが、ドイツのクラブに留学したときに『1対1の世界』での戦術を理解していなく苦労しました。僕は14歳から指導をはじめていましたが、18歳でスイスのチームをクビになったときはじめてドイツのC級ライセンスを取得したんです。ドイツのC級がちょうど個人戦術なんです。もう目から鱗でした。『俺はこんなものも知らないでサッカーやっていたんだ』と。ドイツの子どもだったら10歳で習っていることを僕は18歳で学び、選手としてのクオリティーが初めてあがりました」

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<プロフィール>
シュタルフ悠紀リヒャルト(しゅたるふ ゆうき りひゃると)
1984年8月4日生まれ、ドイツ・ボーフム出身。14歳で地元のサッカースクールでコーチのアルバイトを始めたことをきっかけに、プレーの傍ら、主に育成年代で20年間指導。現役引退後は、自身が代表を務める会社が運営するレコスリーグの選抜チームであるレコスユナイテッドや、ドイツのSVヴェルダー・ブレーメンと育成提携している日独フットボール・アカデミーで指導。2016年には世界各国の育成専門家が集うベルギーの育成コンサルティング企業「ダブルパス」と業務提携を結び、3年がかりで日本チームのリーダーとしてJリーグ全54クラブの監査とコンサルティング業務を担当。ドイツ・サッカー協会公認A級(UEFA A級)ライセンス、日本サッカー協会公認S級ライセンスを取得。2019年にはY.S.C.C.横浜(J3)トップチーム監督に就任し、日独フットボール・アカデミーでは育成ダイレクターを務める。
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