育成年代で「普遍的な戦術」を教えなければ、新しい環境に順応できなくなる

2019年03月08日

育成を考える

スペインサッカーに精通し、「指導者の指導者」として活動している倉本和昌氏と坪井健太郎氏。12月の特集「サッカー選手に必要な『インテリジェンス』とは」で対談をしていただいた両氏には、前回に引き続き、坪井氏が主宰するオンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」で募集した質問に答えていただいた。今回は、「オフ・ザ・ボール」や「トランジション」をテーマにした質問から、日本とスペインの認識の違いについて話が及んだ。
 

構成・写真●ジュニサカ編集部、写真●佐藤博之


【前回】指導力をアップデートしていくには「議論」が必要。将棋の「感想戦」のように。


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何のために首を振るのか

Q.日本の選手とスペインの選手はオフ・ザ・ボール時の作業量に差があると思うのですが、どうですか?

倉本 インプットというか、キャッチする情報量は圧倒的に違うと思います。いつどこで何を見るか。ここに動いたらどこまでくるのかなとか、全体の中で相手を見ているので、(スペインの選手が)受け取る情報量は本当に多いですね。
 
木之下 特集で話した「インテリジェンス」の部分と関わってきます。あと言葉の解釈の仕方ですけど、作業量とは「動く」作業のことなのか「考える」作業なのか、言葉の受け取り方ひとつで大きく変わる問題でもあります。日本の多くの指導者は、動きの量=作業量と解釈するかもしれない。でも、坪井さんや倉本さんたちは「動き」だけでなく「頭の中」の作業も含めていると思うのですよね。その解釈に差があると感じます。
 
高橋 オフ・ザ・ボールの作業というと「首振り」が頭に浮かびます。指導者のコーチングがいつの間にか首を振ることが目的になってしまっている。
 
坪井 何のために首を振るのか。この「何のために」を突き詰めていくと、ヨーロッパではボールを受けるために何をしなければいけないのかというのが整理されていますね。その整理が日本は足りていないから、手段が目的に変わってしまうんだと思います。
 
倉本 見る基準の話もしたほうが良いですね。僕は、自分がボールを持ってないときに、まず見なければいけないのは3つしかないと考えています。それは、味方と相手とスペース。まずゴールは固定されていますね。その次に見なければいけないのは、何だと思いますか? ボールが自分のところに転がってきているときです。このときに見なければならないところは一つだけ。それ以上はキャパオーバーになることが多いです。答えは相手。相手さえ見ていればどこから来るかは分かるので、少なくともボールを取られるリスクは減ります。それ以外はボールが来る前に見ておかなければいけません。

 次に、ボールを持ったら何を見るか。ボールを持ったときに何を探しますか? 色々ありますが、ひとつ優先的に見るべきものはアドバンテージを持っている味方選手です。より優位な状況にいる人ですね。優位な人がいないとすれば、自分が優位ということになります。見る基準、判断基準を、僕はこう考えています。ということは、ボールを取られる原因は今の3つの局面で考えるとどこで認識できていなかったかが分かりやすくなります。わかりやすくなるということは修正しやすくなる。それを「全部見ろ!」だから分からないし、子どもは見ることができる範囲が狭いし、深くも見れない。他にも見なければならないものは当然ありますが、僕はこうやって整理するのが簡単だと考えています。
 
坪井 最近うちのチームでは「見ずにパスしろ」と言っています。なぜこれが成立するのかというと決まり事に近いからです。この状況ではここにサポートが入る、この状況ならここに蹴ろう、ということの共通理解があると、さっき倉本さんが言ってくれたように最後は相手だけ見ればオッケー。自分たちの決められた機能性の中で、相手がどう出てくるかによって自分の判断を変えていくということです。決まりごとがないと、すべてを見なければいけなくなってしまう。それはむずかしいですね。この状況のときはこう、と分かっていれば見なくても分かる。確認だけでいいんです。認知というよりも、本当にちらっと見て決まりごと通りに入っているのかを確認する。それでプレーを決める。それだけで済む。
 
高橋 イニエスタ(ヴィッセル神戸)なんかは予測だけで目をつぶっていても同じようにプレーできそうですよね(笑)。
 
坪井 イニエスタってちょっとプレーが変わったと思うんだけど、どう? 日本に来てから。全試合見ているわけではないからわからないけど、むずかしいプレーを“あえて”選択するようになったと思う。多分バルサにいる時はシンプルに味方に預けておきながら、自分が動いてというイメージ。でもヴィッセルだと、自分がやらなきゃいけない。自分で状況を崩さなきゃいけないことが多いから、ちょっとむずかしいプレーを選択しているな、と。
 
倉本 それは自分のシンクロ度に合うように周りが動いてくれないからってことだよね?
 
坪井 うん。それはでかいと思う。俺がやるしかない。自分でやるしかない。それを変えられるのは本当にすごい。何もなかったかのようにさらっと変えてしまう。適応力の塊なんだよね。
 
倉本 イニエスタの頭の中を日本は研究して分析してもらいたい(笑)。
 
 サッカーにおいて順応性ってすごく大事で「サッカーが上手くなる」ことは順応することなんですけど、新しい環境でもプレーできる、引き出しが増えるということで上手くなる。そこはまたインテリジェンスにもつながるんだと思います。

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