指導力をアップデートしていくには「議論」が必要。将棋の「感想戦」のように。

2019年03月01日

育成を考える

スペインサッカーに精通し、「指導者の指導者」として活動している倉本和昌氏と坪井健太郎氏には、12月の特集「サッカー選手に必要な『インテリジェンス』とは」で対談をしていただいた。今回は、坪井氏が主宰するオンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」にて、両氏への質問を募集。「戦術メモリー」「クラブ哲学」「日本の部活動」に関する指導者からの質問に答えていただいた。
 

構成・写真●ジュニサカ編集部


Q.リーグ戦環境主体のスペインとトーナメント主体の日本では身につく戦術メモリーの違いはありますか?

坪井 監督の戦術メモリーの度合いは大きく変わってきますね。第4回(3点差以上での敗戦。それは指導者の戦略ミスである)で話したようにどういう負け方をするのかを含めて。
 
倉本 長丁場になるとリーグ終盤に絶対チームの疲労が溜まってくるから、そういうときに選手たちをいかにフレッシュな状態に保たせるかは重要ですね。
 
坪井 フィジカルしかり、選手起用しかり、リーグ終盤になって伸びてくる選手もいるもんね。あと、サブ選手の状態にも気を使いながら戦わなければならない。
 
木之下 日本のジュニア年代にはそういうところが足りません。そもそも目標設定が『優勝』という単純なものになっていて、選手起用や試合の戦い方にこだわりもない。
 
 多くのチームがレギュラー組とサブ組でどう大会を乗り切っていくかとなっていて、戦術が蓄積しない。それはトーナメントだろうがリーグ戦であろうが、チームとしてどう戦うか、指導者目線の目標設定がきちんとあれば積み上げられるものだと思うのですが…。
 
坪井 スペインだと小学生年代は『4ピリオド制』でやっていて、小学6年生であれば15分×4本で各選手が最低でも2本は出場しなきゃいけないとルール設定されています。例えば途中交代は3ピリオドまでなしとか。というように、各地域の協会がルールによって選手のプレー時間が確保できるようにしています。相手チームは、何本目にベストの布陣を組んでくるかとか、システムの噛み合わせはどうかなど、事前分析をもとに駆け引きが生まれる環境をつくってますね。日本はどうですか? 
 
高橋 今日本の4種では、チビリンピックが3ピリオド制を採用しています。あと、トレセンの大会も3ピリオド制ですね。日本サッカー協会も3ピリオド制には興味を示していて、全少(全日本U-12サッカー選手権)などにも採用を検討しているかもしれません。(編注:就任から1年――。JFA田嶋幸三会長が語るジュニア育成の“これまで”と“これから”。「多くの選手たちのレベルを上げていくためには…」
 
坪井 3ピリオド制が主体となったら、指導者としての実力は伸びるかもしれません。全員出場させることがルール化すれば、チーム内の能力の劣る子をいかにマネジメントするかに頭を使うことが必要になりますよね。スペインでは上のカテゴリーに行くほど、選手はみんなできる子。7人制であればそのうち13、4人はレギュラー組と遜色なくプレーできます。だから指導者は考え込まなくていい。ただ、下のカテゴリーに行けばそうはいかないので指導者としての力はつきますよね。
 
木之下 日本では何かしらのルールや外的プレッシャーによって、指導者が引き出しを増やせるように仕向けないと、指導者側が考えるようにならないかもしれません。指導者が自主的にインテリジェンスを発揮するような方向に向かうことは難しい場合が多いと思います。
 
倉本 日本のようなトーナメントでも、振り返りができるような大会は必要かもしれません。大会を総括するような存在がいて、中立的な立場で両チームを分析する。分析が終わったら両チームの監督を呼んで分析したことを話します。話の最中に監督もしゃべっていい。将棋の感想戦のように。JFA管轄じゃなくても招待大会などプライベート大会であればできる。第3者にチームを客観的に分析してもらう機会を増やせば、指導者個々のレベルアップできると思います。
 
木之下 やはり指導者も自分の考えを外に晒す機会が必要だと感じます。坪井さんや倉本さんのように日頃からサッカーについて議論をされている方たちは、自分の考えがあり、つねにアップデートしていると思います。日本でも大きな大会だと技術委員会の採点などが入っているようですが、実際に指導者サイドにどうフィードバックされているんですかね?
 
高橋 トレセンの大会などでは閉会式で見ることがありますね。印象としては、スキル寄りの評価が多いのかなと感じています。
 
木之下 それも大会全体としての感想はありますが、個々のチームの評価ではないですよね。指導者に対してどうチーム作りを進めていくかのアドバイスは見たことがありません。スペインではフィードバックをもらう機会はあるんでしょうか?
 
倉本 スペインのクラブでは基本的にアシスタントコーチがいる。必ず横にいるから、監督一人じゃない。町クラブでも最低2人はいて、必ず言い合いをしている。日本では試合中にコーチ間でディスカッションすることが少ない。Jクラブでもアシスタントはいるんだろうけど、黙っている人もいる。それじゃあ変わらない。日本特有の上下関係のようなものでなかなか消えないのかもしれませんが。スペイン人には上下関係ないから。なにも言われなくなったら、そのコーチはやめて行きます。客観的な目が隣にあるのは大きい。
 
木之下 日本にもアシスタントコーチはいますが、スペインのように機能してないかもしれません。
 
高橋 ウォーミングアップのアシスタントかゴールキーパーコーチが多いのかな。
 
倉本 サッカー的会話をフラットな状態ではできないですよね。監督が20歳年上でも、ガンガン言えるかどうかは人による。あと監督の方も聞こうとしているかどうか。
 
坪井 そういう人たちは進化していかない。アップデートされないから。いずれ成績は落ちて行くけど、日本の問題は成績が悪くても大御所の指導者であれば消えていかない仕組みになっている。バッサリいけないから。
 
木之下 トーナメントばかりだと、成績に対する捉え方も曖昧ですからね。その時はたまたま悪かっただけと言い訳できるので。

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【左から倉本和昌氏、坪井健太郎氏、特集を担当したライターの木之下潤氏】

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