質問のメリットは「無意識の意識化」。誘導されている問いかけでは「考える力」が育たない【3月特集】
2019年03月22日
コラム3月の特集テーマ「問いかけ力は考える力を培う」の第1回では、しつもんメンタルトレーニング代表の藤代圭一氏から「好き」「楽しい」といった内発的な動機づけがプレーの背景となることの重要性をうかがった。第2回となる今回は、相手に安心・安全を与える信頼関係の築き方、どのようにして自分の体験を意識的に積み上げていくのか、子どもの反応は問いかけ方によって変わるといったことをテーマにお届けします。
【3月特集】「問いかけ力」は「考える力」を培う
文●木之下潤 写真●佐藤博之、ジュニサカ編集部
相手のガードを下げることからスタート
——親が子どもに対する気持ちをゼロにして話をするのは無理です。ただ、ある程度のコントロールができない親御さんであるほど、子どもが悩む原因になっていたりもします。藤代さんは自分の意見を子どもに押し付けるようなタイプの親御さんに対してどうアプローチされるんですか?
藤代「最初は、親御さんが喜ぶことを徹底的に探します(子どもに対しても同様)。何をすれば喜んでもらえるのか、を。一番ダメなのは批判・否定してしまうことです。そうしてしまうと、余計に精神的な殻に閉じこもってしまうので、まずそれを緩めないと前に進みません。『人はどういうときに怒るのか』というと、焦ったりして、心の余裕がない時に怒るわけです。ということは、心の余裕を作ればいい。私たちは『自分の心を満たす時間』と表現しているのですが、彼らがどうしたら喜んでもらえるかをリサーチして考えていきます。だから、いきなり問題点には触れません」
——やはり、いきなりはハードルが高いですか?
藤代「切り出す場合もあります。でも、日本人の特性もあると思うのですが、いきなり問題点に触れられると『自分を否定された』と感じる方が多いんです。『それを言ったあなたが悪い』というニュアンスを含んでいるように感じるので、すごく危険です。なので、できる限り避けています。もちろん限度がありますし、チームのコンセプトから明らかに外れている場合は伝えるべきだと思います。でも、長い目で見て変わっていかなければならない場合は、まず彼らに喜んでもらえることを探します」
——それって根本的に信頼関係を築くことですよね? つまり、藤代さんが安心・安全な存在だと感じさせることです。
藤代「『この人、なんかしそう』と自分がコントロールされそうだと思うと、大人も子どもも本当の気持ちを教えてくれません。だから、『この人、大丈夫そう』とガードを下げてもらうところからスタートします。たとえば、男性同士だと一緒にお風呂に入るなど、いろんなコミュニケーションが図れるので信頼関係を築くのも早かったりしますが、男性と女性だと違ったアプローチをしなければなりません。例えば、環境の力を借りるかもしれません。お茶をしたり、食事をしたり……。とにかく徹底的に話に耳を傾けます。一度すべてを吐き出してもらわないと、私たちの話を聞いてもらえるスペースが空きませんから。聞く時間はとても重要だと思います。でも、溜まっているほどすごく時間はかかります。
これって家庭内でも同じことが起きていたりします。仕事から帰ってきてすぐに妻が『聞いてよ』と言っても、旦那は疲れていて真剣に話を聞いてくれないから、その相手を他に探すしかない。それが子どもだったりします。話を聞いてくれる人、つまり否定せずに最後まで聞いてくれる人は、『しつもんメンタルトレーニング』でも仕組みとして意識的に取り入れていることです。チームで講習会を開く場合も、親御さんにはできるだけ参加してもらいます。質問して答えてもらって、グループで伝え合って最後は拍手するのがルールです。そうすると、『こんなに話を聞いてもらったことがなかった』と満足されるんです。私が話しすぎると、意外にクレームが多かったりします(苦笑)。もっとシェアする時間が欲しいみたいな。単純なことなんですが、そこに本質的なところがあるなと感じています」
——子どもたちにも当てはまりますよね。指導者が答えを言ったり、言わせようとしたりしても選手一人一人に満足感はありません。やはり能動的な関わり方がやる気のスイッチになるので、問いかける指導もそこがポイントになるように思います。
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