「自分を客観視する機会」が成長につながる。子どもに「気づき」を与える指導者のアプローチとは【3月特集】
2019年03月27日
コラム
視覚を活用して気づきを与える
——そのために戦術ボードがあるわけです。何も指導者がやりたいように子どもを動かすために活用するものではありません。
藤代「視覚を活用して気づく機会はメンタル的にもすごく重要です。言葉だけのやりとりは感情的になる可能性も潜んでいます。そもそも感情的になっていること自体に気づけていないことが原因です。アンガーマネージメントにも5秒待つと怒りが収まるとありますが、結局は意識的に自分を俯瞰するための時間を取ることが目的だと考えています。感情的になっている人に『怒っているじゃないですか?』と伝えると、本人もそれに気がついていないから『怒ってません』と余計に怒り出してしまいます」
——火がつきますよね。
藤代「自分が怒っていることに気づくと感情から解放され、5秒経つと『もういいや』となる。それはトレーニングする必要があります。『今、自分はどんな感情なのかな?』と感情面もそうですし、『どんな自分になりたいのかな?』と一歩引いて見られている状況を観察すると姿勢も変わります」
——指導者が理解した上で、あえて「自分を取り戻す時間を作る」ために戦術ボードを使うのも一つの手段かもしれません。そうすると冷静に質問できたりするかもしれません。
藤代「教育的にもメタ認知能力は重要なことです。自分の考え方や価値観は潜在意識下にあるほど気づきにくくなります。顕在化された課題は解決しやすいですが、本質的な課題は表面化させるために浮き彫りにしないといけません。なので、時間を作らないといけないですが、そのために一歩引くことが必要です。私も嫌いですが、自分の映像を見返します。『えー』ばっかり言っているなとか粗ばかりが目につきます。例えば、自分を映像に残してみるのも一つの方法です。ベンチにいてどんなことを言っているか、どんな立ち振る舞いをしているかは外から見てみないとわかりません。例えば、たまに『テレビの取材が入っていたら同じ姿勢を取っているかな』などと想像すると自分を客観視しやすいでしょう」
——私は取材した後は反省ばかりです。あの場面でこういう質問をしたら別の展開になったかなとか。でも、そういうことの繰り返しでしか成長しないですし、私たちライターは結果的に音声を文字起こしで聞き直すので、あらためて「ああ違うわ」と自分のダメな部分ばかりを見つめ続けています。
藤代「でも、まさに振り返りと客観視ですね。疑う力じゃないですか。木之下さんと話をして思うのは一つひとつの言葉を『どうかな?』と考えて使っています。それってすごくエネルギーを使うことですし、『インタビューを受ける側にとってこの言葉はどうかな?』とずっと考え続けることは大変な作業です」
——私たちは話を聞く側なので、取材対象者にとっての言葉の定義を読み取り、自分のものと照らし合わせてインタビューしています。だから、終わった後はグッタリです。第2回(質問のメリットは「無意識の意識化」。誘導されている問いかけでは「考える力」が育たない)で話をされた、体験には3つの種類があるという事例はわかりやすかったです。その体験が3種類あると認識するだけで、子どもたちの反応が許せるかどうかが判断しやすいです。この子にとって、今はこのタイミングだと。
藤代「それこそ海外遠征で全日程に試合を入れるチームがありますが、どこに振り返るタイミングを作っているのかなと疑問に思います。試合をするだけだと次につながらないですし、日々成長するためには『終わった試合はどうだったか』を冷静に見つめ直す時間も必要です。このことはそんなに簡単ではないですし、どんな質問するかで思考の振り返り方が違います。
例えば、『どんな失敗があった?』と聞けばネガティブな経験にフォーカスしますし、『どんな成功があった?』と聞けばポジティブな経験にフォーカスします。そのことも指導者側は意識して問いかけないと、ネガティブなことばかりを聞いても、ポジティブなことばかりを聞いても、子どもの成長やタイミングに合わないことはたくさんあります。そこは意図して質問しないと効果的な学びにはつながっていきません。
遠征に行って学んで欲しいことは何か。
それを指導者が持っておくことが必要だと考えていますし、最初に質問しておかないとせっかくのスペイン遠征で『何かに気づいて帰れよ』と言っても難しいですよね。そこは質問でサポートできるところですよね。もちろん質問しても気づかない子も、そのタイミングでは気づけない子もいます。もしかしたら10年後に気づくかもしれません。でも、キッカケは私たち指導者から作りたいと思っています」
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